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第一章 星の素晴らしさ

 しかし、そこには丸っこい字で書かれていた『ハネムーン当日』と。

「あーあ、下の紙にも写ってるじゃないか……」

 気になって一枚めくってみれば次の月にも世界の終焉が訪れることを記していた。

 透はそれを見なかったことにし、そっと戻すと、次に目が行ったのは真っ赤な日を5つ進んだ先、綺麗に整った字で『清瑞女学・日曜参観!』と書かれている。

「冬観のか、確か男子禁制の女子中学校だっけ?」

 私立清瑞女子学園――最近立てられた学校で、最新の物を多く取り入れスタイリッシュなイメージが強い、制服もかわいらしいと評判だ。確かに両越しに添えられた小さなリボンなんて存在意義が謎なパンツのリボンを連想させる。

 そこまで思考すると本能のままにあくびをする、ちらっと時計を見れば11時を指していて良い子は寝る時間よ、と頭のブレーカーが落ちかかっていた。

「あ、お兄ちゃん、それ見た?」

 しかし、透を呼ぶ声に反応すると、ブレーカーを力任せにオンに切り替える。

「ん? 冬観か、どっから湧いた?」

 声のする方を向けば、少女が立っていた。左右対称に結ばれた髪、まだ幼さが残り、しかしどこか女性っぽさが見え隠れする整った顔立ち、真っ直ぐ向けられた瞳は見つめていればどこか別世界へ飛ばされそうな不思議な引力を感じる。

 まあ、血の繋がりは無いのだが。

「トイ、……どこでもいいじゃない、それより、ほら、日曜参観」

 冬観は少し赤面しつつカレンダーを指さし、勢いで舞った髪で透の鼻をくすぐった。

「4月28日入学して初めての日曜参観か、でも母さんは明日オーストラリアだし無理だろ?」

「そうなのよね、だから代わりにお兄ちゃんが来てくれれば良いじゃん?」

「良いじゃん? じゃない、女子中学校はさすがに入る勇気が……」

「お兄ちゃん女々しいし女装でもする?」

「無理に決まってるだろ! あと、女々しくねえ」

「あ、そうか、かつらもあるけど」

「そこが問題じゃねえよ!」

 けらけらと会話を楽しむ冬観だが、俺はちっとも面白くない、元々目立つことは嫌いだからな、それを女子中学校にお邪魔するなんて……考えただけでも地獄絵図だ、ストレスで死ぬぞ。

「お兄ちゃんなら来てくれるって信じてるけどなー」

「俺の妹ならお兄ちゃんを苛めないって信じてるぞ」

「えー私本当の妹じゃないしー」

「あのな……」

早くも頭痛が再発する、父さん母さんといい、冬観まで俺を苦しめる、うさぎやハムスターのような小動物並みの精神なら俺はとっくにストレスで死に至っていそうだ。


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