表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

題名のない話

育成ゲーム

作者: 椎名 倫

 十数年前発売され、未だその人気は衰えることを知らない。『モンスター・ポケット』は、子供から大人まで、幅広い年齢層に爆発的な人気を博した。

 『モンポケ』は、その年の流行語大賞の筆頭候補として疑わず、学校などでも『モンポケ』の話題で占領されている。


 B少年も、当然のことながらこの『モンポケ』に夢中になっいる子供の一人だ。朝から晩まで『モンポケ』のことを考えているし、寝ている時だって夢に出てくるほどの熱中ぶりだ。消費した電池は数知れない。


 たまらないのは、B少年の母親だ。学校から帰ってきてもすぐにゲーム機に向かってしまい、そのまま寝るまで黙々とカチャカチャやられたのでは、満足に会話もできない。可愛い一人息子をゲームなどに奪われて、母親としては面白くない。大した反応は返ってこないとわかりつつも、ついつい話しかけてしまう。


 「ねぇ、それってそんなに面白いの?」


 
我ながらつまらない質問だ、と言ってしまった後に思った。

 案の定、B少年は当たり前だろう、というような顔で、



 「うん。」


 
とだけ言った。その間も画面から目を離そうともしない。


 「なにがそんなに面白いわけ?モンスターを集めるだけなんでしょ?」

 

 
まったく相手にされないのに腹を立てたのか、イヤミな口調になってしまう。



 「それだけじゃないよ。育てたモンスターを友達のヤツと戦わせたり、交換したりするんだよ。何度も戦わないと手に入らないレアなモンスターとかもいるからね」

 

 
B少年がめずらしく一言返事ではなく答えた。


 「それが面白いわけ?」


 
また同じような質問になってしまったと思いつつも、呆れた声で言った。


 
「そうだよ。」

 一言返事に戻る。


 B少年の母はいま一つ息子の言う面白さがわからなかった。大体彼ぐらいの年のころは、外で元気に遊んでこいと言いたい。なぜ最近の子供たちは外で力一杯遊ぼうとせずに、家の中でゲームのモンスターを戦わせることに夢中になるのだろうか。たまりかねて、母はB少年にたずねた。


「ねえ、あんたたちはゲームのモンスターを育てて、戦わせて、なんでそんなのが、楽しいわけ?それで勝つとなんかいいことあるの?自分が特訓したわけでも、戦うわけでもないのに?」


 
つい、強い口調になってしまったと、母は思った。しかし、B少年はきわめてさめた視線で窓の外の光景を指さした。


 窓の外の向かいの道路では、なにやらずいぶん派手な格好をした奥様が二人、頭にキンキン響く声でお話ししている。行き来する通行人や車のことなどお構いなしに、道に君臨している。

 

 「まぁっ! お宅のお嬢さん、外美中須加高校に合格なさったんですか。まぁ~、うらやましいですこと! 宅の息子など、成金来来高校が精一杯でしたのよ!」


 「なに言ってらっしゃいますの! こちらこそうらやましいですわ! お宅の息子さん、よくおできになるから。」

 

 「いえいえ、いつも言ってるんですよ! お宅のお嬢さんを見習えって。まったく、お宅のお嬢さんがお嫁にきてくれると、安心なんですけどねぇ。」


 「あらっ!それは名案ですわね。お宅の息子さんなら、こちらこそお願いしたいぐらいですわ!」

 

 『オーッホホホホホホ……!!』




子は親の鏡。親は子の窓。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ