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五歳の私が、お姉様の代わりに婚約者になりました~わたし、けっこうすごいんです!~

作者: 春樹凜
掲載日:2026/10/13



 わたしはネビアン家の次女、フローラ。

 五さいです。


 おとうさまもおかあさまも、おやしきではたらく人たちも、みんなわたしのことを、


「可愛い、可愛い」


 といっぱいほめてくれます。


 だから、わたしは知っています。

 わたしは、けっこうすごい子どもなのです。


 でも、そんなわたしにも、かいけつできないことが起きました。


 ある夜のことです。

 目が覚めてしまったわたしは、うさぎのぬいぐるみをだきしめて、大好きなアデラインおねえさまのお部屋へ向かいました。

 おねえさまは十五さいで、とってもやさしくて、ふわふわの金色のかみがきれいな、じまんのおねえさまです。


 そっとドアを開けると、お部屋は暗いままでした。

 でも、まどからさしこむ月の光の下で、おねえさまがベッドに座って、一人でぽろぽろと涙をこぼしていたのです。


「おねえさまっ、どこかいたいの!?」


 わたしがびっくりしてかけよると、おねえさまはあわてて涙をぬぐいました。


「フローラ……ううん、違うのよ。ごめんなさいね」

「おねえさまが泣いてるから、フローラ、びっくりしました。だれかにいじわるされたんですか?」


 おねえさまはまだ泣いています。

 だからわたしは、うさぎさんごと、おねえさまをぎゅっと抱きしめました。


「だいじょうぶです、おねえさま、フローラがいます。なんでも話してください」

「っ、フローラ……」


 そうしたら、おねえさまはぽつりぽつりと教えてくれました。


 おとうさまから、「公爵家のユリアン様と婚約しなさい」と言われたこと。

 でもおねえさまには、ずっと前から想い合っている、はくしゃく家のお兄さんがいること。


 わたしは首をかしげました。


「じゃあ、その好きな人と、けっこんできないんですか?」


 だって、好きな人といっしょにいるのが、いちばん幸せです。

 おかあさまとおとうさまだってそうです。

 けれど、おねえさまは悲しそうに言いました。


「大人には、いろいろあるのよ。ネビアン侯爵家とロナード公爵家が手を結ぶためには、私がユリアン様と婚約しなければならないの」


 大人には、いろいろある。

 五さいのわたしには、その『いろいろ』が何なのかはよく分かりません。


 でも、一つだけ分かりました。

 ユリアンさまにひつようなのは、『ネビアン家のおよめさん』です。

 そして、わたしもネビアン家のむすめです。


 わたしは、うーんとしばらく考えました。

 そして……ポンッと手をたたきました。


「じゃあ、わたしがユリアンさまとこんやくすればいいのでは?」

「…………え?」


 おねえさまが目をまん丸にしています。

 わたしのすばらしい考えに、感動しているみたいです。

 そうすれば、おねえさまは好きな人とけっこんできます。

 ぜんぶ、かいけつです!


 わたしってば、やっぱりすごく頭がいいかもしれません!


 次の日、わたしはじぶんのお部屋のソファにすわって、前におとうさまから聞いていた『じこぶんせき』というものを、しんけんにしていました。

 たぶん、自分のすごいところをかんがえることです。


 もんだいは、わたしが『ユリアンさまのおよめさん』になれるかどうかです。


 わたしは指を一つずつおりながら、自分のすごいところを数えてみました。


 一つ。


「ええと、まず、ごあいさつはちゃんとできます」


 二つ。


「お茶も、ほとんどこぼしません。この前は、ちょっとだけこぼしたけど、あれはカップが重かったからです」


 三つ。


「にんじんはきらいだけど、がんばったら食べられます。……少しだけなら」


 四つ。


「あと、おきゃくさまには、いつも『可愛らしいですね』って言われます!」


 考えれば考えるほど、じしんがわいてきます。

 これなら、きっとこんやくしゃになれるはずです。


 ただ、一つだけ分からないことがありました。

 わたしはお部屋をおそうじしていたメイドのマリーのスカートを、ちょいちょいと引っ張りました。


「マリー。およめさんって、なにをする人なの?」


 マリーは目をパチクリさせました。


「お嫁さん、でございますか? そうですねえ……旦那様をお支えしたり、お屋敷を守ったり、お茶会を開いたり……いろいろでございますね」

「いろいろ……!」


 また『いろいろ』が出ました。

 大人のせかいは、『いろいろ』でいっぱいです。

 でも、わたしはへこたれません。


「じゃあ、おべんきょうすればできます!」


 知らないことは、もっとたくさんおべんきょうすればいいのです。

 よし、これでもう、何のもんだいもありません!


 おねえさまを助けるため、わたしはさっそく、あるものをよういすることにしました。


 お部屋の机に向かって、とっておきのきれいな便せんを広げます。

 それから、まちがえないように、いっしょうけんめい、ゆっくりと字を書きました。




『ロナード家 ユリアンさまへ


おねえさまと、こんやくしないでください。

おねえさまには、好きな人がいます。

かわりに、わたしがこんやくします。

わたしはまだ五さいですが、けっこうすごいんです。

お話を聞いてください。


ネビアン家 次女フローラより』




 ふう、と息を吐いてペンを置きました。

 われながら、とてもよく書けました。

 それを封とうに入れて、わたしはお部屋を飛び出しました。


 ろうかを歩いていると、しつじのセバスチャンがおとうさまと話しているのが聞こえてきました。


「この手紙は、至急ロナード家へお届けするように」

「はい、承知いたしました」


 ロナード家!

 ちょうどいいです!


 セバスチャンが使いの者を呼びに行っているすきに、わたしはそーっと近づき、その束に自分の手紙をすべり込ませました。

 これでよし!

 あとはおへんじが届くのを待つだけです。


 それから何日かたったころ。

 なんと、ロナード家から『しょうたいじょう』が届きました。


 おとうさまはおてがみを持ったまま、石のように固まっていました。


「……『ユリアン本人が、是非一度フローラ嬢のお話を伺いたいと申しております』……だと?」

「まあ! あなた、ロナード家への親書にフローラのことなんて書いたんですか?」

「書くわけがないだろう! 格上の公爵家へ宛てた重要な親書だぞ。なぜ突然フローラの名前が……!?」


 頭を抱えてこんらんするおとうさまと、目をぱちぱちさせるおかあさまの横で、わたしはえっへんと胸を張りました。


「それは、わたしの手紙が、とってもよかったからです!」

「「……手紙?」」


 おとうさまとおかあさまの声がきれいに重なりました。


「はい! この前、ロナード家にいく手紙の中に、こっそり入れておきました!」

「えっ……!?」

「公爵家への親書に勝手に手紙を混ぜるなど……無礼だと思われたらどうするんだ……!」


 二人とも、ロナード家の人たちが怒っていると思っているみたいです。

 だけどユリアンさまがぜひ、と言っているので、怒っているはずがありません。

 ぜったいにだいじょうぶです!




◆




 それからしばらくして、ユリアンさまに会いに行く日がやってきました。


 その日、わたしは人生で一番おめかしをしました。

 水色のふわふわのドレスを着て、頭には白いリボン。

 くつもピカピカです。


 やってきたロナード家は、うちのお屋敷よりもずっと大きくてりっぱでした。

 お部屋で待っていると、とびらが開いて、おねえさまと同い年くらいの男の人が入ってきました。


 背が高くて、青がちょっとだけまじった銀のかみがさらさらで、とてもきれいな顔をしています。

 この人が、ユリアンさまだそうです。


 ユリアンさまは、おとうさまやおかあさまにあいさつをした後、ソファにすわるわたしをじっと見下ろしました。

 その手には、見覚えのある封とうがにぎられています。


「……君が、この手紙を僕に送ってくれたフローラ嬢だね?」

「はい!」


 わたしもソファからぴょんと降りて、ドレスのすそをつまんで、習ったとおりにぺこりと頭を下げます。


「フローラ・ネビアンです。五さいです。きょうはおまねきありがとうございます!」


 にこにことわたしを見ていたユリアンさまは、手紙をパラリと開きました。


「ここには『おねえさまには、好きな人がいます』と書いてあったけれど……それは本当かな?」

「フローラ!!」


 横でおとうさまが大声を上げました。

 でも、本当のことなのだから仕方ありません。

 わたしはこくりとうなずきました。


 ユリアンさまは少しだけ目を丸くしましたが、怒ってはいませんでした。

 むしろ、しんけんな顔で、じっと見つめてきました。


「僕は将来、この家を継ぐ立場にある。だから僕の婚約者になるなら、いつか公爵夫人としてたくさんの仕事をしなければならない」

「はい!」

「僕に直接話をしようとした勇気はすごいと思うけれど……君自身は、一体何ができるのかな?」


 きました!

 ユリアンさまにわたしのすごさをアピールするチャンスです!


「だいじょうぶです! まず、一人でおきがえができます! ボタンもちゃんととめられます!」

「……それはすごいね」

「ころんでも、あまり泣きません! すこしだけしか、泣きません!」

「うん。強いね」

「にんじんもがんばったら食べられます! それから……おばけも、お昼ならぜんぜんこわくありません!」

「……っ、夜は怖いんだね」


 ユリアンさまは口に手を当てて、少し下を向きました。

 なぜか、肩がふるえています。

 だけどわたしはそのまま続けます。


「およめさんのおしごとが『いろいろ』あるのは知っています。今のわたしには、まだ難しいことばかりです。だけど、分からないことは、これからいっぱいおべんきょうして、かならずできるようになります」


 さいごにわたしは、きゅっと両手をにぎりしめました。


「それから! だれかがつらかったり、悲しかったりしたときは、ぎゅーってすると、みんなちょっと元気になるんです。だから、ユリアンさまの元気がないときは、わたしがいっぱいぎゅーってします!」


 お部屋の中が、しいんとしずまり返りました。

 おとうさまもおかあさまも、息をのんでユリアンさまを見ています。


「だから、わたしではだめですか?」


 ユリアンさまはゆっくりと顔を上げます。

 なんだか、びっくりしたようなお顔でした。


 そして、ふわりとやさしく、とてもきれいなえがおを見せて言いました。


「……負けたよ」


 だけどお部屋の中の大人たちはみんな、お口をぽかんと開けていました。

 ユリアンさまのおとうさま――じつは、さっきからずっとお部屋のすみで話を聞いていました――も、うちのおとうさまも、おめめがまん丸です。


 ユリアンさまはわたしから目をはなすと、こうしゃくさまのほうを向きました。


「父上。今回必要なのは、ネビアン侯爵家との結びつきですね」

「う、うむ。そうだが……」

「それなら、フローラ嬢との婚約でも目的は果たせます」

「理屈の上ではそうだが……」


 こうしゃくさまは、なんとも言いにくそうなお顔をしました。


「お前より九歳も年下の娘と婚約したとなれば……妙な趣味でもあるのではないかと、いらぬ噂を立てられるかもしれんぞ」

「そういう趣味はありませんよ」


 『そういう趣味』のいみは分からないですが、ユリアンさまは、あっさりと言いました。


「でも、それで僕への余計な縁談が減るなら、むしろ助かります。勉強や仕事に集中できますから」


 ユリアンさまは、にっこりと笑いました。

 えがおのユリアンさまを見て、こうしゃくさまはなぜか少しだけ遠い目をしています。


 どうやらわたしとこんやくすると、ユリアンさまにもいいことがあるみたいです。

 やっぱり、このこんやくは、とってもいいお話です!


「それに」


 ユリアンさまは、今度はわたしのおとうさまとおかあさまのほうへ顔を向けました。


「フローラ嬢を都合よく利用するつもりはありません。婚約者として迎える以上、きちんと大切にします。もちろん、今の彼女に婚約者らしい振る舞いを求めるつもりもありません。今まで通り、子どもらしく過ごしてもらえれば十分です」


 そしてユリアンさまはしんけんなお顔で続けます。


「ただし、フローラ嬢が成人した時、改めて本人の意思を確認すること。これが条件です」


 ユリアンさまは、わたしの目線に合わせるように、少し身をかがめました。

 そしてまた、ふわりと笑いました。


「君は今、五歳だから、お姉さんのために一生懸命なんだよね。でもフローラ嬢。今の君はまだ子どもだ。婚約は家同士の約束として受けるけれど、将来、君が大人になってから改めてどうするか決めよう」


 わたしは首をぶんぶんと横に振りました。


「いやじゃないです! 大人になっても、だいじょうぶです!」

「……ありがとう。でも、それは『今』の君の答えだ」


 ユリアンさまはやさしく、わたしの頭をなでてくれました。

 大きくて、とてもあたたかい手です。


「そうだね、君が十八歳になった頃、もう一度聞くよ」

「……分かりました」


 こうして、何はともあれ、わたしのさくせんはみごとに大せいこうで終わったのです!


 おうちに帰ると、おねえさまが玄関で待っていました。


 どうやら、わたしたちがロナード家へ出かけたあとで、マリーからお話を聞いたらしいです。


「フローラ!」


 わたしを見るなり、おねえさまが駆け寄ってきます。


「大丈夫だった!? 公爵家の方に怒られなかった!? どうしてあんな手紙を勝手に……」

「だいじょうぶです! ユリアンさまは、とってもやさしかったです」

「え?」


 そこへ、おとうさまがなんとも言えないお顔で馬車からおりてきました。


 おとうさまから、


「ユリアン様とフローラの婚約が整った。うん、整ってしまったんだ……」


 と聞いたおねえさまは、へなへなとその場にすわり込んでしまいました。


「フローラ……どうして本当に、婚約者になって帰ってくるの……?」


 わたしはこしに両手を当てて、にっこり笑いました。


「ちゃんと、こうしょうしたからです! わたし、けっこうすごかったんですよ!」


 おねえさまは、ぽかんとした後、ふふっと笑って、それからポロポロと泣き出しました。


「おねえさま、また泣いてるの?」


 わたしがぎゅってして背中をぽんぽんすると、おねえさまはわたしをぎゅっと強く抱きしめました。


「あなたの人生なのよ。私のために、そんなふうに決めなくてもよかったのに……」

「くるしいです、おねえさま」

「ご、ごめんなさい」


 少しだけうでの力がゆるみました。

 でも、おねえさまはまだ泣いています。


「だけど、だめよ。やっぱり、あなたにこんなことを背負わせるわけにはいかないわ。今からでも、おとうさまにお願いして、婚約をなかったことにしていただきましょう。代わりに私が――」

「だいじょうぶです!」


 わたしは、おねえさまのことばを元気よくさえぎりました。


「ユリアンさまは、大人になったわたしが『いやです』って思ったら、その時はやめていいって言ってくれました。だから、本当にいやになったらちゃんと言います! それに、ユリアンさまは、すごくすてきなかたでした。わたし、ユリアンさまとなかよくできそうです」


 わたしは、おねえさまのお顔を両手ではさみました。


「だから、おねえさま。泣いてばっかりじゃなくて笑ってください。フローラは、おねえさまに笑ってほしくて、いっぱいがんばったんです!」


 そう言ったら、おねえさまが、泣きながら笑いました。


「ありがとう、フローラ。本当にありがとう。でも、もし少しでも嫌になったら、絶対に私に言ってね」

「はい!」

「約束よ?」

「やくそくです!」


 まだまだ涙は止まらないけど、おねえさまの泣き顔は、夜にお部屋で見た悲しいお顔じゃなくて、とてもうれしそうでした。

 だから、わたしもうれしくなって、おねえさまの背中をぎゅーっと抱きしめ返しました。


「おねえさまが笑ってるから、よかったです!」


 その後、おねえさまは好きだったはくしゃく家のお兄さんと、こんやくすることが決まりました。


 おやしきのみんなもニコニコしています。

 わたしは、


「やっぱりわたしって、すごい!」


 と大まんぞくなのでした。




◆




 ユリアンさまとこんやくしゃになってから、わたしはおかあさまから「こんやくしゃは、定期的にお手紙を書くものです」と教わり、毎週ユリアンさまにお手紙を書いています。




『ユリアンさまへ


きょう、ちょうちょを見ました。

とってもひらひらしてきれいでした。

羽に、ユリアンさまのかみの毛みたいな青っぽい銀色のキラキラがついていました。

ユリアンさまにも見せたかったです。

あと、にんじんをいつもよりもがんばってたくさん食べました


フローラより』




 わたしが書くのはこんなことばかりですが、ユリアンさまはいつも、きちんとお返事をくれます。




『フローラへ


お手紙をありがとう。

青っぽい銀色のちょうちょなんて、とてもきれいだったんだろうね。

こんどまた見つけたら、僕にも教えてください。

いっしょに見られたらいいね。

それから、にんじんもがんばったんだね。

えらいと思います。

でも、むりをしてたくさん食べなくてもだいじょうぶだよ。

少しずつ食べられるようになれば、それで十分だから。

らいしゅう、フローラに会えるのを楽しみにしています。


ユリアンより』




「『えらい』って書いてあります!」


 お返事を読んだわたしは、うれしくなってマリーにも見せました。

 やっぱり、ユリアンさまも、わたしがけっこうすごいことを分かっているみたいです!


 それから、週に一度、ロナード家に遊びに行くようにもなりました。

 二人でお茶を飲んだり、お庭をお散歩したり、とってものんびり過ごしています。


 ユリアンさまが木かげで、本を読んでくれることもあります。

 わたしはユリアンさまのすぐとなりにちょこんと座って、読めない字があるたびに指をさします。

 するとユリアンさまは、わたしにもよく見えるように本を少しこちらへかたむけて、一つずつゆっくり教えてくれます。


 この前は、お返しにわたしがユリアンさまに本を読んであげました。


「むかしむかし、あるところに……」


 わたしが少しつっかえながらいっしょうけんめい読むと、ユリアンさまは目を閉じて、とても気持ちよさそうに聞いてくれました。


 読み終わると、


「フローラの声を聞いていると、とても安心するよ」


 そう言って頭をなでてくれました。

 わたしってば、本を読むのもすっごく上手みたいです!




◆




 それから三年がたち、わたしは八歳になりました。


 ユリアンさまは十七歳。

 次期公爵として、毎日たくさんのお勉強と領地のお仕事をしています。

 もちろん、今でもお手紙のやり取りは続いています。


 五歳の頃より、わたしもずいぶん字が上手になりました。

 この前は、こんなお手紙を送りました。




『ユリアンさまへ


この前、お母様と一緒にお花をおして、しおりを作りました。

ユリアンさまはいつも本をたくさん読むので、一つあげます。

青いお花にしました。

ユリアン様の髪の色に、ちょっとだけ似ているからです。

お勉強ばかりしているとつかれるので、ちゃんと休んでください。


フローラより』




 すると数日後、ユリアンさまから返事が届きました。




『フローラへ。


しおりをありがとう。

さっそく、今読んでいる本に挟んで使っています。

僕の髪色に似ている花を選んでくれたんだね。

大切にします。

それから、心配してくれてありがとう。

フローラに言われたので、今日はいつもより少し早く休むことにします。

今度会えるのを楽しみにしています。


ユリアンより』




 わたしのお手紙のおかげでユリアンさまがお休みできたのなら、こんやくしゃとして、ちゃんとお役に立てています!

 そう思うと、なんだかとってもうれしくなりました。


 そんなある日のことです。

 わたしが公爵家に遊びに行くと、ユリアンさまは難しいお顔のお客さまを、玄関でお見送りしているところでした。


「ええ、その件は追って。本日はありがとうございました」


 ユリアン様は、絵本に出てくる王子さまみたいに、キラキラした完ぺきな笑顔でした。

 お客さまが帰った後、わたしはお部屋に通されました。


 ユリアンさまはわたしに向かっても、にっこりときれいな笑顔を向けてくれます。


「よく来てくれたね、フローラ。今日は何をしようか」


 でも、わたしは首を傾げました。

 ユリアンさまの笑顔は、さっきと同じ、なんだかお仕事の笑顔に見えたのです。

 よく見ると、目の下にはうっすらとクマもできています。


 わたしはユリアンさまのそばまで近づくと、服の裾をちょいちょいと引っ張りました。


「ユリアンさま。おつかれの時は、無理に笑わなくてもいいです」

「……え?」

「笑顔を作るのも、つかれるからです」


 ユリアンさまは、ぱちりと瞬きをしました。

 しばらくわたしの顔を見つめたあと、すっときれいな笑顔を消します。


 それから、ふう、と深く息を吐いて、ソファに沈み込みました。

 さっきまでの王子さまではなく、ただの疲れたお兄さんのお顔です。


「……君には敵わないな。正直、人前で笑顔を作り続けるのに疲れていたんだ」

「やっぱり!」

「気づいていたの?」

「だってわたしは、ユリアンさまのこんやくしゃですから!」


 そう言うと、ユリアンさまは少しだけ目を見開いて、なんとも言えないようなお顔でわたしを見つめます。


「……そうだったね」


 ぽつりとそう言って、ユリアンさまはほんの少しだけ笑いました。

 さっきまでのお仕事の笑顔とは違う、力の抜けた笑い方でした。


 でも、笑ってくれたからといって、ユリアンさまがお疲れなのは変わりません。

 それなら、こんやくしゃとして、何か元気になることをしてあげなくては!


 何をしたら元気になるのでしょう?

 わたしだったら……。


 そこで、ぴん! とひらめきました。

 わたしはユリアンさまの隣に座って、パンッと手を叩きました。


「では! 今日はわたしがユリアンさまをほめます!」

「……え?」

「わたしはユリアンさまにほめられると元気が出るので、同じことをしたらユリアンさまも元気もりもりになりますよね!」


 わたしは両手を腰に当てて、大きくうなずきました。

 そして、ふだんから思っていることを伝えます。


「ユリアンさまは、毎日お勉強して、お仕事して、とってもえらいです! 笑顔も上手ですごいです。ちゃんとお客さまにごあいさつもできていました。今日もすっごく頑張っててえらいです!」


 お部屋の中が、しいんとしました。


 ……あれ?

 わたし、何かまちがったことを言ったでしょうか。


 ユリアンさまは何も言わずに、じっとわたしを見ています。

 もしかして、十七歳になると、ほめられても元気にならないのでしょうか?

 ちょっと不安になってきた、その時です。


「ふっ……」


 ユリアンさまが口元を押さえたかと思うと、とうとう我慢できなくなったように声を上げて笑い始めました。


「はははは! ……ああ、ありがとう、フローラ。本当に疲れが吹き飛んだよ」

「本当ですか?」

「本当だよ」


 その言葉を聞いたとたん、胸の奥がぱあっと明るくなりました。

 よかった。

 わたしの作戦は大成功だったみたいです!


「じゃあ、もっとほめましょうか?」

「いや、今日はもう十分だ」

「えんりょしなくていいですよ? まだまだユリアンさまのすごいところは、いっぱいあるんですから」

「遠慮じゃない。これ以上褒められたら、僕はたぶん笑いすぎて仕事に戻れなくなる」

「そうなんですか?」


 それは困ります。

 こんやくしゃを元気にするのは大切なことですが、お仕事のじゃまをしてはいけないはずです。

 わたしは、そこでほめるのをやめることにしました。


 ユリアンさまにとって、何かができたからではなく、ただ「今日も頑張っていて偉い」と言ってくれる人は、わたしが初めてだったそうです。

 公爵さまも、お仕事を教えてくれる先生たちも、ユリアンさまができるのは当たり前だと思っているみたいです。


 でも、わたしはそうは思いません。

 お勉強だって、お仕事だって、毎日やるのは大変です。

 だから、毎日ちゃんと頑張っているユリアンさまは、すっごくえらいのです!


 お腹を抱えて笑うユリアンさまを見て、わたしも嬉しくなりました。

 そういえば、いつもはとてもきれいに笑うユリアンさまですが、こんなふうに大きな声で笑っているところは、あまり見たことがありません。

 でも、わたしはこっちの笑顔のほうが好きです。


 だからこれからも、ユリアンさまがつかれていたら、たくさんほめてあげようと思います。

 それもきっと、立派な『こんやくしゃのお仕事』なのです!




◆




 それから二年が経ち、私は十歳になりました。

 ユリアン様は十九歳です。


 この年、アデラインお姉様が結婚しました。

 お相手はもちろん、ずっと昔から想い合っていた伯爵家の長男です。

 真っ白な花嫁衣装を着たお姉様は、本当に、本当に綺麗でした。

 隣に立つ旦那様も、そんなお姉様を見つめて、これ以上ないほど幸せそうに笑っています。


 私は二人の姿を見ながら、胸の奥がぽかぽかと温かくなりました。

 五歳のあの日、お部屋で一人泣いていたお姉様の顔を思い出します。


 あの時私は、お姉様に笑ってほしいと思って、ユリアン様にお手紙を書きました。

 そして今、お姉様はこんなに幸せそうに笑っています。


「本当に、よかった……」


 思わず呟くと、隣に立っていたユリアン様がこちらを見ました。


「嬉しそうだね、フローラ」

「はい! だって、お姉様がとっても幸せそうですから!」


 私は大きく頷くと、ふと思ったことをそのまま口にしました。


「ユリアン様」

「うん?」

「次は、私たちもいつか、あんな感じになるんでしょうか?」

「…………」


 ほんの一瞬、ユリアン様が黙りました。

 けれど、すぐにいつもの綺麗な笑顔になります。


「……そうだね。君が大人になった時にも、そう望んでくれていたらね」

「もちろんです!」


 私は迷わず答えました。

 だって、ユリアン様は優しくて、格好よくて、いつも私を大切にしてくれます。

 婚約を嫌だと思う理由なんて、一つもありません。


「それなら嬉しいよ」


 ユリアン様は笑いました。


 けれど、なぜでしょう。

 その時のユリアン様の笑顔が、ほんの少しだけ困っているように見えたことを、私はなぜかずっと覚えていました。




◆




 さらに四年が経ちました。

 私は十四歳。

 ユリアン様は二十三歳です。


 あれからも、私たちの関係は変わりません。

 今でも定期的に手紙を送り合っています。


 ただ、五歳の頃とはさすがに内容がずいぶん変わりました。

 先日は、こんなお手紙を送りました。




『ユリアン様へ


先日、公爵夫人教育の一環で、慈善事業について学びました。

食料や衣服を寄付することも大切ですが、それだけでは一時的な助けにしかならない場合もあるそうです。

孤児院を出た子供たちが働ける場所を作ったり、仕事を覚えられる仕組みを整えたりする方が、長い目で見れば助けになるのではないかと思いました。

でも、そのためには最初にたくさんのお金が必要になります。

何を優先するべきなのかを考えるのは、とても難しいですね。

ユリアン様なら、どうなさいますか?


フローラより』




 数日後、ユリアン様から返事が届きました。




『フローラへ


とても良いところに気づいたね。

人を支えるというのは、ただ物を与えることだけでは足りないと僕は思っています。

その人が自分の力で生活を続けられるようになるまで、どう仕組みを作るかを考えることも大切です。

ただし、すぐに食べるものがない人に「将来のために仕事を覚えなさい」と言っても意味がありません。

目の前の支援と、将来のための支援。

どちらか一つではなく、両方必要なんだと思います。

今度こちらへ来た時に、実際の資料を見ながら一緒に考えてみよう。

君が自分からこういうことに興味を持ってくれているのが、僕は嬉しいよ。


ユリアンより』




 昔と変わらない、丁寧な文字です。

 五歳の頃は「にんじんを食べました」と報告していた私が、今では孤児院への支援についてユリアン様と手紙で話し合っています。

 自分でも、ずいぶん成長したと思います。


 それに、公爵家へ嫁ぐためのお勉強も、本格的に始まっていました。

 礼儀作法、社交、家政管理、会計、領地経営、王国の法律、慈善事業。

 覚えることは山ほどあります。


 もちろん、大変です

 でも私は昔から、自分のことをけっこうすごいと思っていましたが、それは本当に間違っていなかったみたいです。


 先生に一度教えていただいたことは、だいたいすぐに覚えられます。

 計算も得意です。

 法律や領地経営のような難しいお勉強も、仕組みが分かってくると、とても面白いのです。


 最初はただ、ユリアン様の婚約者だからという理由で始めたお勉強でした。

 けれど、学べば学ぶほど、知りたいことが増えていきました。

 どうしたら領地に住む人たちが豊かになるのかとか、孤児院の子供たちが、大人になった後も困らずに暮らせるのか。

 何か物を作るだけでも、あんなにたくさんのお金と人が必要なのか。

 知らなかった世界が、どんどん広がっていきます。


 そして、その頃にはユリアン様も王宮で働くようになっていました。

 お父様であるロナード公爵様はまだ現役です。

 ですから、ユリアン様はまだ公爵として領地を治めているわけではありません。

 代わりに、将来公爵家を継ぐための実務経験も兼ねて、王宮の財務監察局に出仕しています。


 地方貴族が王家へ納める税金に不自然な点がないかや、公共工事に使われるお金が、正しく使われているか。

 そんなことを調べるお仕事なのだそうです。


 私は、この頃にはもう知っていました。

 ユリアン様は、確かに優しい方です。

 でも――優しいだけの方ではありません。


 以前、ある男爵が、領地から集めた税の一部をごまかしていたことがありました。

 その男爵は、王宮から監査を任されたユリアン様を前にして、必死に言い訳をしている場面を見てしまいました。


「ですから、それは帳簿をつけた者の単純な間違いでして……!」


 ユリアン様は怒りませんでした。

 いつものように、とても綺麗に笑っていました。


「なるほど。単なる記載ミスだったのですね」

「そ、そうです! もちろんでございます!」

「それなら安心しました」


 男爵がほっとした顔をした、その直後です。


「では、王宮の監査官にも帳簿をすべて確認してもらいましょう」


 男爵のお顔が固まりました。


「……は?」

「単純な間違いなら、調べられて困ることはありませんよね?」

「い、いえ、それは……」

「ちなみに」


 ユリアン様は、にっこり笑いました。


「監査官には、もうあなたの領地へ向かってもらっています」


 その瞬間の男爵のお顔を、私は今でも忘れられません。


 後で調べたところ、やっぱり単なる間違いではなかったそうです。

 ごまかしていた税金はきちんと返却され、苦しい生活をしていた領民たちには救済措置が取られました。


 あの時、私は初めて知りました。

 ユリアン様は、怒鳴ったりしませんし声も荒げませんが、だから怖くないかというと、そんなことは全然ありませんでした。

 むしろ、笑っている時の方が怖いことすらあります。


 それでも私は、そんなユリアン様を嫌いにはなりませんでした。

 悪いことをした人にまで、無条件で優しくする方ではない。

 守るべき人のためなら、必要な時には容赦しない。

 そんなところも含めて、私はユリアン様を尊敬しています。


 ――いえ、この頃には、もう、尊敬だけではなかったんだと思います。


 いつからだったのかは、自分でも分かりません。

 毎週届く手紙が楽しみになった頃でしょうか。

 疲れている時に、私の前でだけ少し力を抜いてくれるようになった頃でしょうか。

 私が分からないことを聞けば、どんなに忙しくても丁寧に教えてくれるところや、約束したことを、どれだけ時間が経っても忘れないところ。

 青みがかった銀色の髪が額にかかる綺麗な顔や、穏やかな声、そして時々見せる、少し怖いところまで。


 ……私は、ユリアン様のことが、異性として好きになっていました。




◆




 ある日、私はロナード公爵家の執務室で、ユリアン様に領地の資料を見せてもらいました。

 公爵夫人教育の一環です。

 いくつかの書類を読んでいるうちに、一箇所気になるところを見つけました。


「ユリアン様。ここの東の川の工事の予算、どうして去年より増えているんですか?」


 ユリアン様が、持っていたペンを止めました。

 私は書類の数字を指差します。


「今年の春に、ロナード家の領地では雨がたくさん降っていたからですか? それとも、新しい橋を作るからでしょうか?」

「フローラ……」


 ユリアン様が、私と書類を交互に見ます。


「君、今、この予算書を読んでそこまで推測したの?」

「はい。公爵夫人になるなら、これくらい分からないと駄目だって先生がおっしゃっていました」


 ユリアン様は目を丸くしたあと、ふっと柔らかく笑いました。


「五歳の頃に『転んでも少ししか泣きません!』と得意げに自慢していた君が、ここまで成長するなんてね。感慨深いよ」

「もう九年も前のお話です!」

「そうだったね」


 ユリアン様は楽しそうに笑ったあと、椅子から立ち上がり、私の隣までやってきました。

 そして昔と同じように、私の頭を撫でようとしたのでしょう、大きな手が伸びてきます。


 私は無意識に、ほんの少しだけ頭をそちらへ傾けました。

 昔から、ユリアン様に頭を撫でてもらうのが好きでした。


 けれどその手は、私の髪に触れる直前で止まりました。


「…………」


 ユリアン様が、私を見ています。

 何かに今さら気づいたような、不思議なお顔でした。


 私はもう、幼子ではありません。

 背もずいぶん伸びましたし、顔立ちも大人びてきました。

 着ているドレスだって、もう子供用ではなく、大人の女性とほとんど変わらないサイズです。


 ユリアン様はしばらく私を見つめていました。

 そして、戸惑ったように目を伏せると、伸ばしていた手をゆっくり下ろしました。


「……本当に、立派になったんだね」

「はい」


 私は笑いました。

 ちゃんと笑えたと思います。


 ……十四歳にもなって、頭を撫でてもらいたかったなんて、そんなことを言ったら、子供みたいです。

 だから、我慢しました。

 でも、本当は少しだけ、胸が痛みました。


 最近、こんなふうにユリアン様が私との距離を測るような言動をすることが増えました。


 思い返してみれば、最初に気になったのは、お姉様の結婚式だった気がします。


『次は私たちも、いつかあんな感じになるんでしょうか?』


 そう聞いた私に、


『君が大人になった時にも、そう望んでくれていたらね』


 ユリアン様は、そう答えました。


 あの時も、少しだけ、困ったようなお顔をしていました。


 今だって、ユリアン様は何も変わりません。


 お手紙は必ず返してくれるし、会えば優しいです。

 私のお勉強も応援してくれるだけじゃなくて、分からないことがあれば、何でも教えてくれます。

 それでも、少しずつ変化しているように思います。


 そして最近になって私は――五歳のあの日、ユリアン様が私に言ったことをよく思い出すようになりました。


『君が十八になった頃にでも、もう一度聞くよ』


 ずっと私は、あの約束を「十八歳になったら、改めて結婚する意思を確認してくれる」という意味だと思っていました。


 私の答えは、もう決まっています。

 お姉様の代わりでも、家同士のためでもなく、私はユリアン様と結婚したい。


 だけど――ユリアン様にとっては、違うのでしょうか。


 私はずっと、九歳年下の妹のような存在でしかなくて、五歳の子供が言い出した無茶な婚約を、優しさで受け入れてくれただけなのかもしれません。


 そして私が成人したら、あの綺麗な笑顔で言うのでしょうか。


 ――婚約を解消しようか。


 そう思うと、胸の奥がきゅっと痛んで、大人になることが、初めて少しだけ怖くなりました。




◆




 それから四年が経ち、私は十八歳になりました。


 王立学園での三年間は、とても充実していました。

 授業はもちろん、社交や領地経営、慈善事業についても多くを学び、生徒会の仕事にも関わりました。

 友人もたくさんできました。

 勉強は少し大変でしたが――そこはまあ、昔から自分でも言っている通りです。

 私は、けっこうすごいのです。


 その結果、王立学園を首席で卒業することができました。

 もちろん、学園に通っている間も、ユリアン様との手紙のやり取りは続いていました。


 試験前には、


『無理をして夜更かししないように。君なら大丈夫だから』


 とお手紙を送ってくれたり。

 

 私が首席を維持していると報告すれば、


『さすがだね。でも、頑張りすぎるところがあるから、時々はちゃんと休むように』


 と返してくれました。


 会える回数は以前より減りましたが、ユリアン様からの手紙は、どれも私の大切な宝物です。


 そして迎えた卒業式の日。

 校舎を出たところで、周囲が急にざわつきました。


「ねえ、あの方……」

「すごく格好いい……!」

「ロナード公爵家のユリアン様じゃない?」


 声のする方を見れば、校門の近くにユリアン様が立っていました。

 二十七歳になったユリアン様は、昔よりもさらに背が高くなり、青みがかった銀色の髪も、光を受けてきらきらと輝いています。

 十代の頃から綺麗な方でしたが、大人になった今は、それに落ち着きまで加わっていました。


 周囲の女子生徒たちが騒ぐのも、仕方ありません。

 私は少しだけ誇らしい気持ちになりながら、ユリアン様のもとへ駆け寄りました。


「ユリアン様!」

「卒業おめでとう、フローラ」


 ユリアン様は、いつもの優しい笑顔で迎えてくれました。


「それから、首席卒業もおめでとう」

「ありがとうございます」


 私は少しだけ得意になって笑います。


「私、けっこうすごいので」


 ユリアン様は一瞬目を丸くして、それから声を立てて笑いました。


「知ってるよ。十三年前からね」


 ユリアン様の言葉が嬉しくて、胸の奥が温かくなります。


 その時でした。


「フローラ」


 呼ばれて振り返ると、同級生のレオンが立っていました。

 伯爵家の嫡男で、実家はここ数年、海外交易で急速に力を伸ばしている家です。

 本人も成績優秀で、人当たりがよくて見た目も整っているので、学園ではかなり人気のある人でした。


「卒業おめでとう」

「レオンも。おめでとうございます」

「ありがとう」


 レオンは笑いましたが、その目が少しだけ寂しそうな理由を、私は知っています。


 少し前、彼は私に婚約者がいることを知った上で、それでも一度想いを告げられました。


 けれど私は、お断りしました。

 理由は一つです。

 私には、ずっと好きな人がいるから。


 レオンは私とユリアン様を見比べると、それ以上何も言わず、


「……幸せにな」


 とだけ言って、友人たちのところへ戻っていきました。


 すると。


「彼がフローラに告白したっていう伯爵令息か」


 隣から聞こえた声に、私は目を瞬きました。


「……どうして知っているんですか?」


 思わず声が裏返った私が尋ねると、ユリアン様は、何でもないことのように答えます。


「君の婚約者だからね。それくらいの話は耳に入るよ」

「そういうものなんですか?」

「そういうものなんだよ」


 ユリアン様は笑っています。

 嫉妬している様子は、少しもありません。

 それがなぜか、ほんの少しだけ寂しく感じました。


 そして卒業式の後。

 ユリアン様から、


「少し話をしたい」


 と言われ、私はロナード公爵家へ向かいました。

 通されたのは、昔から何度も一緒にお茶を飲んだ中庭です。


 五歳の頃からずっと、私はこの屋敷に通っていました。

 ここで本を読んでもらったり、お菓子を食べたり、たくさんのお話をしました。

 庭の木々も、昔よりずいぶん大きくなっています。


「懐かしいですね」


 東屋のベンチに座り私がそう言うと、隣に座ったユリアン様も庭を見渡しました。


「そうだね。君は昔、あの辺りで蝶を追いかけて転んでいたっけ」

「そんなこともありましたね」

「泣かなかったけどね」

「私は昔から、転んでも少ししか泣きませんから」

「そうだった」


 二人で笑います。

 でも……やっぱり、何かが違います。


 ユリアン様の笑顔が、少しだけ固い。

 十四歳の頃から、何度か見たことのある表情です。


 私はもう、その理由を知っている気がしました。


 やがて、ユリアン様が、ゆっくりと口を開きます。


「フローラ」

「はい」

「婚約のことなんだけど」


 胸が、大きく鳴りました。

 ついに来ました。

 十三年前から決められていた、この日が。


「……はい」


 ユリアン様はふぅと一度だけ深呼吸をした後、私の方をまっすぐに見て、言いました。


「君との婚約は、解消しようと思っている」

「っ…………」


 分かっていたはずなのに、胸の奥が一気に冷たくなりました。

 私は膝の上で、ぎゅっと指を握ります。


「……理由を、聞いてもいいですか?」

「もちろん」


 ユリアン様は少しだけ目を伏せました。


「君が五歳の時に約束しただろう。十八歳になったら、改めて君自身に選んでもらうと。……この十三年で、ネビアン家とロナード家の関係は十分に深まった。今僕たちの婚約がなくなったからといって、両家の関係が揺らぐことはない」


 そこで、ユリアン様は少しだけ言葉を切りました。


「それに、君には他にも選択肢がある」

「……選択肢?」

「学園でも、随分人気があったそうだね。さっきのレオン・グレイヴ伯爵令息も、君に想いを寄せていたし。彼だけじゃない、君ならもっと他にも、年の近い、いい相手を選べるはずだ。だから」


 嫌な予感がしました。

 けれどユリアン様は静かに続けます。


「九歳も年上の僕に、これ以上縛られる必要はないと思ったんだ」


 その言葉を聞いた瞬間、十四歳の頃からずっと抱えていた不安が、形になった気がしました。


 ……それでも、まず、確認しなければいけないことがあります。


「ユリアン様」

「うん?」

「他に、好きな方ができたんですか?」

「いないよ」


 返事は即答でした。


「では、私と結婚するのが嫌なんですか?」

「それも違う」

「では、どうしてですか?」


 ユリアン様は黙りました。

 そして、少しだけ苦しそうに息を吐いたあと、ゆっくりと口を開いて答えました。


「君の気持ちには、気づいていたよ」

「……え?」


 その言葉に、私の顔が熱くなり、口からは間の抜けた声が出てしまいました。

 恥ずかしすぎて、今すぐ椅子の下にもぐってしまいたい気持ちに襲われましたが、なんとか堪えて、私はユリアン様に尋ねました。


「気づいて……いたんですか?」

「うん」

「…………」


 改めて言われると、やっぱりものすごく恥ずかしいです。

 私はちゃんと隠していたつもりだったのに……。


 でも、それよりも、次の言葉の方がずっと怖い。

 だけど、逃げずに私は耳を傾けました。


「僕は、君のことをとても大切に思っている。だけど僕にとって君は、初めて会った時からずっと、年の離れた妹のような存在なんだ。今でも、フローラを一人の女性として愛しているとは言えない」

「…………」


 それは、どこかで覚悟していた言葉でした。

 けれど実際に言われると、思った以上に心の奥がズキリと痛みました。

 

「結婚すれば、夫として君を大切にする。浮気もしない。できる限り君を幸せにする努力をする。それは誓える。でも君の気持ちに、恋愛として応えられる保証はない」


 ユリアン様はいつも通り、優しい声でした。

 私にはそれが、余計につらくて。

 でも、まだ泣きませんでした。

 私は黙ってユリアン様の話を聞きます。


「それなら最初から君を一人の女性として愛してくれる人と結ばれた方が、きっと幸せになれる。だから僕は、君を解放したいんだ」


 その言葉を聞いて、私はしばらく何も言えませんでした。

 悲しいです。

 すごく、悲しいです。

 そしてこれがユリアン様なりの私への優しさだということも、ちゃんと分かりました。


 でも同時に――なんだか、だんだん腹が立ってきました。

 なので私はもう一度確認します。


「ユリアン様。本当に、他に好きな方はいないんですよね?」

「いない」

「私との結婚が嫌なわけでもない」

「違うよ」

「では――」


 私は立ち上がると、ユリアン様の前に立ちます。

 そして。

 思い切り息を吸い込むと、中庭に響き渡るほどの声で叫びました。


「勝手に、私の幸せを決めないでください!」


 鼓膜がびりびりとするほどの大声を上げるなど、貴族の令嬢としてはしたないと理解しています。

 だけど我慢できませんでした。

 あまりの声量に、ユリアン様が目を見開きました。


「フローラ?」


 そんなユリアン様を見ながら、私はなおも彼に詰め寄ります。


「私の幸せのため? もっと年の近い方と結婚した方がいい? それ、全部ユリアン様が勝手に決めたことじゃないですか!」

「それは……」

「私は一度だって、年の近い人と結婚したいなんて言ってません!」


 目の奥が熱くなって、情けないことに、とうとう涙まで滲んできました。

 せっかくユリアン様に可愛いと思ってもらえるようにばっちり化粧もしていたのに、全部涙で流れていることでしょう。

 でも、止まりません。


「いいですかユリアン様、私はユリアン様が好きなんです! 確かに、妹みたいにしか思われていないんだろうなって、薄々分かっていました!」


 ユリアン様が申し訳なさそうな顔をします。


「それを改めて言葉にされると、ものすごくショックです! 本当にショックです!」

「……ごめん」

「今は謝らないでください!」

「……はい」


 素直に返事をされて、少しだけ調子が狂います。

 でも、まだ言いたいことがあります。


「むしろ、他に好きな方ができたから婚約を解消してほしいと言われる方が、よっぽど諦めがつきました!」

「そうなの?」

「そうです!」


 私は手の甲で涙を拭いました。


「でも、違うんでしょう?」

「もちろん」

「だったら、私は諦めません」

「…………」


 ユリアン様が黙ります。

 私は、婚約が決まってからずっと見てきたその目を、まっすぐ見返しました。


 涙で少し滲んだ視界の向こうにいるのは、ずっと大好きだった人です。

 綺麗な顔も、青みがかった銀色の髪も。

 誰より優しいところも、悪いことをした相手には笑顔のまま容赦しない、少し怖いところも。


 十三年間そばにいて、いろいろなユリアン様を見てきました。

 その全部を知った上で、私はこの人が好きなのです。


「私の幸せは、私が決めます。お姉様の代わりでもありません。家同士のためでもありません」


 五歳の頃とは違って、今の私は、もう大人です。

 自分の気持ちもちゃんと分かっています。

 全部分かった上で、自分で選べます。


「私は、ユリアン様と結婚したいんです!!」


 ユリアン様の表情がほんの少し揺れたあと、すぐに真剣な顔になります。


「それでも、フローラ。僕は、この先も君を恋愛として愛せないかもしれない。……君を傷つけたくないんだ」


 やっぱり、この人は、私の好きになった優しいユリアン様です。

 私は泣きながら、笑いました。


「それなら、心配いりません! だって結婚している間、私はずっとユリアン様を口説きますから! 一年でも、十年でも、その先でも」

「……え?」


 今度はユリアン様が、間の抜けた声を出しました。

 長い間婚約していたのに、こんな声を聞くのは初めてでした。

 それがなんだか嬉しくて、涙でぐしゃぐしゃのまま、私はもっと大きく笑いました。


「ユリアン様が私のことを好きになってくださるまで、何度だって口説きます!」


 そして、今まで胸の中にため込んできた想いを全部ぶつけるつもりで、大きく息を吸いました。


「私のユリアン様への愛を、舐めないでください!」


 中庭が、しんと静まり返りました。


 ユリアン様は、呆然と私を見ています。

 一秒、二秒……。

 どのくらいの時間が経ったんでしょうか。

 不意にユリアン様は、ふっと肩の力を抜いて笑いました。


「……ふっ」


 口元を押さえて俯いたかと思うと、堪えきれなくなったように笑い声をこぼします。


「ははっ……参ったな、本当に。君って子は……」


 それは、昔から何度も見てきた、お仕事用ではない本当の笑顔です。

 ユリアン様はひとしきり笑ったあと、目尻に浮かんだ涙を指先で拭って言いました。


「……負けたよ」


 その言葉に、胸がきゅっとなりました。


 五歳の私に負けたと言ってくれた時と、同じ言葉です。

 でもユリアン様はすぐに笑顔を消して、まっすぐに私を見ます。


「僕を選んで、本当に後悔しない?」

「しません」


 私は涙を拭うことも忘れて、ユリアン様の目をまっすぐ見返しました。


「……分かった」


 ユリアン様は、ゆっくり息を吐きました。

 そして、覚悟を決めたような顔で、低く、落ち着いた声で尋ねました。


「では、改めて聞くよ。フローラ。僕との婚約を、このまま続けてくれる?」


 私は満面の笑みで答えました。


「もちろんです」


 ユリアン様は、しばらく私を見つめていました。

 それから、どこか観念したように、それでもとても穏やかに笑います。


「……そっか」


 そして、ゆっくりと続けました。


「だったら、僕の人生を君に全部あげるよ」

「…………え?」


 あまりにも思いがけない言葉だったので、さっきまで泣いていたことすら一瞬忘れてしまいました。


「じ、人生……ですか?」


 ユリアン様は、冗談を言っている様子もなく頷きました。


「僕にとって、結婚するというのはそういうことだから」


 その声は静かでした。

 けれど、一つ一つの言葉が、まっすぐ胸の奥に落ちてきます。


「今はまだ、君が僕に向けてくれているのと同じ気持ちを返すことはできない。でも夫になると決めた以上、僕のこれからの人生は君に全て捧げる」


 ユリアン様は、少しだけ目を細めました。


「それくらいの覚悟はして、君と結婚するよ」

「っ…………」


 ずるいです。

 ついさっき、私のことを女性として愛してはいないと言ったばかりなのに。

 そんなことを言われたら、もっともっと、好きになってしまうではありませんか。

 

 胸の奥がいっぱいになって、また涙がこぼれそうになります。

 でも今度の涙は、さっきまでとは全然違うものでした。


 だから私は、負けないくらい大きな笑顔で答えます。


「では、私の人生も全部ユリアン様にあげます!」


 そうしたら、ユリアン様が少し困ったように眉を下げました。


「それだと、お互いに全部あげてしまって、手元に何も残らないね」

「それなら交換です!」

「……交換?」

「はい! 私がユリアン様の人生を大切にします。だから、ユリアン様は私の人生を大切にしてください」


 私は自分でも、とてもいい考えだと思って大きく頷きました。


「そうすれば、どちらの人生もなくなりません。二人とも、ちゃんと大事にしてもらえます!」

「…………」


 ユリアン様が黙りました。

 私の言葉をゆっくり噛みしめるように、しばらくこちらを見つめています。

 やがて、その目がほんの少し細められ、とても優しく笑います。


「……そうだね。じゃあ、君の人生は僕が大切にする。僕の人生は、君に任せるよ」

「はい!」


 その言葉が嬉しくて、私は何度も頷きました。

 ただ、一つだけ付け加えます。


「ただし、ユリアン様こそ後悔しないでくださいね。私、かなりしつこいですよ」


 ユリアン様は一瞬目を丸くしてから、楽しそうに笑いました。


「……それは、今日のでよく分かったよ」


 こうして、幼い私が姉の代わりにとお願いして成立した婚約は、大人になった私自身の意思で、もう一度結び直されたのでした。




◆




 あの日から、私は宣言通り、ユリアン様に愛を伝え続けました。


「今日も好きです!」

「ありがとう」

「今日も格好いいです!」

「それもありがとう」

「ユリアン様は私のこと、好きになりました?」

「……まだかな」

「では、明日も頑張ります!」


 そんな日々を重ねて一年後、私たちは予定通り結婚しました。


 結婚してからも、ユリアン様は約束通り、私をとても大切にしてくれています。

 仕事の相談もしてくれますし、私の意見もきちんと聞いてくれます。 

 私が疲れていれば休ませてくれるし、好きなお菓子も覚えていてくれます。


 不満なんてありません。

 ありませんけど……やっぱり、少しくらいは不満です。


 だって、まだ一度も「好き」とは言ってもらえていないのですから。 

 とはいえ、最近は私が「好きです」と言うと、ほんの少し目を逸らしたり、耳が赤くなったりするようになりました。


 これはかなりいいところまできているのではないでしょうか。

 



◆




 そして、私たちが結婚してしばらく経った頃、ユリアン様はお父様から爵位を継ぎ、正式にロナード公爵となりました。


 その日は朝からたくさんの人が屋敷を訪れ、ユリアン様はずっと完璧な笑顔で挨拶をしていました。

 夜、ようやく二人きりになった時も、ユリアン様はいつものように笑っていました。


 でも。


「ユリアン様」

「うん?」

「疲れている時は、無理に笑わなくてもいいですよ」


 ユリアン様が、目を瞬きました。

 それから、ふっと力を抜くように笑います。


「昔も、同じことを言われたね」

「八歳の時ですね」

「よく覚えてるね」

「ユリアン様のことですから」


 そう答えると、ユリアン様はしばらく黙っていましたが、やがてソファの背にもたれます。

 そして、消え入りそうな声でぽつりとこぼしました。

 

「……少し、怖いんだ」


 それは初めて聞く言葉でした。


「父上がずっと守ってきたものを、今度は僕が背負う。領地も、人も、家も。失敗すれば僕一人では済まない……こんなこと誰にも言えないと思っていたよ。それを年下の君に言ってしまうなんて、僕は情けないね」


 ユリアン様は小さく息を吐きました。

 でも、年下とか、そんなことは関係ないんです。


 私は迷わずユリアン様に近づくと、そのままぎゅっと抱きしめます。

 ユリアン様の体が、ぴたりと固まりました。


「……フローラ?」

「覚えていますか?」


 私はユリアン様の胸に頬を寄せたまま言いました。


「私、初めて会った時に言いました。ユリアン様が辛い時や苦しい時は、私がぎゅーってして元気にしてあげるって」


 しばらく沈黙があったあと、掠れた声が降ってきました。


「……覚えているよ」

「ずいぶん時間がかかってしまいましたけど、やっと約束を守れました。……大丈夫です。ユリアン様は誰よりも努力を重ねてきたことは、私がよく知っています。それに、一人じゃないんです。私も頼ってください。なんといっても、この私は王立学園を首席で卒業した、とっても優秀な妻なんですから!」


 少しでも元気になってほしくて、私はわざと明るい声で、自慢するように言いました。


「そうだね」


 ユリアン様の声から、先ほどまでの張りつめた固さが少しだけ抜けたのが分かりました。


 次の瞬間、今度は、ユリアン様の腕が私の背中にぎゅっと回りました。

 私が抱きしめているよりも、ずっと強く抱きしめられます。


「ユ、ユリアン様?」

「……フローラ」


 耳元で名前を呼ばれて、心臓が大きく跳ねました。


「君が成人したあの日、僕は君に言ったよね。君を妹のようにしか見られないって」

「はい。ものすごく傷つきました! でも、いい思い出です」


 思わずそう返すと、ユリアン様が小さく笑いました。

 けれど、腕はほどかれません。


「でも今は、もう同じことは言えないかな」

「……え?」


 私は顔を上げました。

 ユリアン様が、今まで見たことのないくらい真剣な目で私を見ています。

 その瞳には、いつもの穏やかさとは違う熱が宿っていました。

 それを見た瞬間、何かを期待するように、私の心臓が早鐘を打ちはじめます。


「いつから変わったのか、自分でも分からないんだ。君が毎日のように好きだと言うからなのか、一緒に暮らすようになったからなのか、それとも……もっと前からだったのか」


 一度言葉を切って、ユリアン様はどこか甘さを含んだ笑みを浮かべました。


 それから――。


「君が好きだよ、フローラ」

「…………」


 たったそれだけの、短い言葉でした。

 でも、余計なものが何もないからこそ、その言葉はまっすぐに胸の奥まで届きました。


 目の奥が一気に熱くなりました。

 ずっと、ずっと聞きたかった言葉です。

 なのに、実際に言われると、笑顔より先に涙が出てきました。


「……遅いですよ」

「うん」

「私が何年口説いたと思ってるんですか!」

「二年くらい? でももっと長期戦も覚悟してたんでしょう?」

「そうですけど! 覚悟していたのと、実際に待たされるのは別なんです!」


 ユリアン様が声を上げて笑いました。

 そして私の頬の涙を指先で拭って、微笑みます。


「でも、ちゃんと口説き落とされたよ」


 その言葉を聞いた瞬間、私は涙でぐしゃぐしゃのまま、満面の笑みを浮かべました。


「ほらっ、やっぱり私、けっこうすごいんです!」


 ユリアン様は一瞬目を丸くして。


 それから、昔と同じように笑ってから、今度はとても甘い声で続けました。


「うん。知ってるよ。出会った時からずっとね」



たくさんお読みいただきまして、ありがとうございます。


皆さんにデトックス効果が現れる短編になっているみたいです。(もちろんデトックスを目指して書いていたわけではありませんが、嬉しいです!)


近々良いお知らせができるかなと思います。

今後ともよろしくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
読んでいて心の中が幸せになるお話~ お互いがちゃんとお互いのことを考えているし、ちゃんと意思疎通も取れているし、フローラはけっこうすごいし、最高です!
面白かったです! お話し自体もハッピーエンドで良かったですが、フローラが年の近い人たちとの交流があった上で自分の意志でユリアンを選んでいること。 ユリアンが年の近い方がいいのではないかとフローラの…
うん、すごくよかった♪ 読んでて幸せになりました。 それから、この二人が大好きになりました。 作者様、ありがとうございました♪
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