9話異世界ターンで絶体絶命?!
説明しよう。
モブ兵士に異世界転生した俺、宮田律は竜王の側仕えセルヴァに目をつけられ「竜王を唆し操っている」という疑いを掛けられている。
そのせいで牢獄のような冷たい石壁に手枷を嵌められ捕まっているのだ。
上裸にさせられていることからこれから始まるのは拷問と思われる。
つまり、絶体絶命。
この国はドラギアスの独裁政治だからセルヴァの独断で俺を処罰することは無いとタカをくくっていた。この男───
「悪魔は火に弱いと聞く…焼けた鉄の棒を押し付け貴様に取り憑いている悪魔を炙りだしてやる!」
本物の馬鹿だ───!!
「アレを持ってこい」
セルヴァが兵士に指示を出すと運び込まれたのは鈍く赫灼に光る鉄の棒。俺の背筋がゾッと凍り夢でないことを理解する。
「あっあのっ何かの間違いです!俺は悪魔になんか取り憑かれていません!!」
まずいまずいまずい!!あんなもの押し付けられたら痛いじゃ済まないぞ!
「命乞いなど…心配せずともこやつを体に三回も当てれば貴様の本性が見られようぞ」
セルヴァが鉄の棒を構え怪しく笑う。権力と欲望に支配された人間がこんなにも怖いなんて。
こうなったらもう立原さんに助けて貰うしか…ッ
でも知らせる手段がない…!何時かも、ここがどこかも分からない。詰みか…
右脇腹に近づけられる鉄の棒。ヂリヂリと熱を感じ腹部が引き攣る。
「ひ…ッ」
恐怖で声が出ない。ブンブンと顔を左右に振るがこの世界はリアルとまったく理が違う。
話の通用しない男の残酷な行為を俺のようなモブ兵士が止めること等、できはしないのだ。
怖いッ熱い!!誰か助け───
明るく笑う立原さんとドラギアスの顔。両方が頭をよぎった。
「立原さん!!」
ドカァァァッッッ
けたたましい轟音と強風。黒い雷を纏った光が痛みを与える鉄の棒ごとセルヴァを吹き飛ばした。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン…って。言ってみたかったんだよね」
重厚な足音と共に漆黒の鱗を持つ竜が顔を出す。瞳は鋭く、ため息をこぼす口元はギラつく歯が強く噛み締められている。
全身から沸き立つ怒りの感情。
セルヴァに従っていた2人のモブ兵を震え上がらせるには充分すぎた。
「それ、さっさと外して」
ドラギアスの巨大な掌に渦を巻く黒い雷。これは命令ではない。脅しだ。
「は、はいっ」
枷から解放され俺はようやく助かったという実感を得た。
まだ手が震えてる…生きた心地しなかったなぁ…
「宮田クン!大丈夫?」
ガッと巨大な手に両肩を捕まれ面食らう。
全体的に黒く凛々しい面持ちのせいで分かりにくいがこれは多分心配している表情。
「う、うん。助かっ、た…あの…その手から出てるの何?」
「これは…は、ハンドスピナー」
「人吹き飛ばすハンドスピナーとか聞いたことないから」
「宮田クンがやばーい!って思ってパンチしたらなんか出たんだよね。変なビーム」
「ビーム…」
石畳を抉るほどの威力を持った黒い雷ビーム。通り道を追うと、シルヴァの体は床に撃沈。
その体からは黒い煙がプスプス上がっているのが見える。
「アレ…まさか………死んでる?」
「……ウッソマジ?」
いっけね☆みたいに舌ペロウインクすな。見た目のせいで怖いだけだから。
「でもでもアイツが悪いんじゃん?宮田クンのこと殺そうとしてたしさァ」
「まぁ…すごい助かったけど。なんでこの場所が分かったの?」
「なんか宮田クンと同じ格好した奴が教えてくれたんだよね」
元騎士隊長か騎士仲間の誰かか。後で探して御礼を言わなくては。
「そいえば宮田クンなんで殺されかけてんの?」
「いや……立原さんのせいというか…セルヴァが馬鹿だったってのがほとんどだけど…」
「あーー!ちょ、宮田クンケガしてんじゃん!」
キーーーンッと耳に響く声量。いい加減ドラゴンであることを自覚して頂きたいものだ。
立原さんが指さす箇所を見れば右脇腹に僅かな火傷跡が。
「あぁ。鉄の棒ちょっと当たっちゃったんだぬぁっ?!」
体当たりかと思われるほど勢いよくタックル───否、横抱きに抱えられ牢獄の出口へ。
「病院までトばすから捕まってて!」
「へっ?!い、いや、別に大したこと……」
「ダメ!痕になっちゃうぢゃん!」
やっぱり立原さんは優しい。
でも…お姫様抱っこはちょっとなぁ…あと病院、そっちじゃないよ───
俺は逞しい竜王の腕に抱かれ医務室とは反対方向へ運ばれていくのだった。




