40話別れ
「?…な、なんだ貴様は?!」
「やれやれ…娘の顔も分かりませんか。豚野郎」
「その声…れ、レティナか?!なんたる親不孝者め!ふざけた連中と遊び半分でこのようなこと…もう取り返しがつかんぞ?!」
バキッ
鈍い音。レティナのグーパンチがエルドの頬にクリーンヒットした。
「な、にを…」
「取り返しのつかないことをしたのは…貴方の方であるとまだわかりませんか?
対して力もなく親から受け継がれただけの地位に胡座をかき、民の血税を私利私欲に投じる。
それだけでは飽き足らず人の生を虐げて遊戯とするなど言語道断」
父親の胸ぐらをつかみ桜色の瞳は鋭く怒りに震えている。
殴られて膨れ上がったエルドの顔が青ざめ引き攣っていくのがよくわかった。
「お前は既に償っても償いきれないほど数多の時間と人生を奪ってきた。誇り高き王家の血筋の者として恥を知れ」
レティナの拳が再度振りかぶられる。
ガッ
怒れる拳を止めたのはルキアだった。
「…もうよせ。これ以上お前が背負うことはねぇよ」
こんなクズ野郎でもレティナの父親なのだ。
他人だとしても虫酸が走り嫌悪する行為。
今まで止められなかったこと、父親の性根が腐っていたこと。
長年の積もった気持ちをあの冷徹な顔の下にずっと隠していたんだな…
レティナは静かに拳を収め父親に背を向けた。
「今日限りで親子の縁も終わりです。さようなら、クズ豚野郎」
嫌悪と悲しみがレティナから感じられるが今の俺がかけられる言葉なんてない。
今はそっとしておこう…
「…では、全員取り押さえたら地下の牢獄へ。夜明けと共に自国へ叩き返してください」
「わ、私はシュルツ国王の側近だぞ!!そうだ、王に頼まれたのだ!!」
貴族たちは次々と保身のために騒ぎ立てる。
「ね、宮田クン、マヂで戦争になっちゃう?」
「なんないよ。奴隷自体世界法で禁じられてる。逆に公になれば戦の理由を与えられた国々が討伐と称して攻め込みに来るんじゃないかな。
そんなことも予想できない王はいないだろうし…このまま帰国したらどうなるか分かる?」
「首チョンパ?」
「そ。例え王が命じて許したことでも、王は関与していないと言い張って、この"お使い"の人に罪被せるってわけ」
「マヂ?!じゃあ命令だけしてた王様達ズルくない?!」
「そーね…でも戦争するってなると国民が傷つくし、もし関与してるなら地道に販路を塞ぐしかないかな」
「よくそんな考えられんね。ほぼほぼアタシいなくても解決させられたんじゃん?」
「俺と衛兵だけじゃ貴族は大人しく捕まってくんなかったよ。
王にバレた、見つかったって事実が貴族の闘争心を削いで捕まえることができた。
暴れても立原さんのビーム一発で腰抜かしちゃうよ。発射する時がなくて良かったけど」
「ふぇえ…み、宮田クンの頭の良さって…変態的だね」
「やかましい」
全くこの取引場所を突き止めたり建物設計を調べたり、交換会の仕組みを調べたり、大変だったんだからな。
「あの…」
3mはあろうかと言う巨人族の奴隷が控えめに手を上げる。
貴族たちが連れていかれ残された奴隷は人間やら巨人族やらエルフやら多種多様。
おお…これぞ異世界って感じだ…
「ドラギアス王よ、我々はこれからどうしたら…」
「今日から自由!」
「いや雑か。住む所も仕事も無いんじゃ困るでしょ。丁度これから工場を増やす予定だし働き手も必要。
資金が貯まるまで王宮で預かるってのがいいと思うけど」
「サンセー!じゃあ着いてきたい人おいで〜!」
「良いのですか…?ありがとうございますドラギアス王よ…」
「ドラギアス様ありがとうございます!」
「ドラギアス王!」
ウンウン。ついでに竜王の悪評を挽回するネタにもなるな。
「イヤイヤ!今回の作戦も提案も全部この宮田クンのおかげ!
この人に着いてけば今後は安心だからちゃんと言うこと聞くよーに!」
あれ?
「おぉ…ミヤタ様!ありがとうございます!」
「ミヤタ様ァ!」
泣きながら感謝され吐血するかと思った。
「ちょっと!俺を英雄みたいにすんのヤメテ!」
「ほんとのことぢゃん〜それにほら、こんなに感謝されること、宮田クンはやったんだよ?」
「う……め、目立つのは好きじゃないんだよ…」
照れくさいし…
「えー?でもノリノリだったぢゃん。お前たちの悪行もここまでだァ!って」
「うわーー!!わ、忘れろ!!」
ラノベで人気の小さな"ざまぁ"を達成した喜びで盛り上がってしまった。恥ずかしい。埋まりたい。黒歴史…
「フェンリルさん。じゃないや…ドラギアスさん。王様だったんだ」
振り返ると美しい白髪、真っ白な羽とみずぼらしい奴隷服がアンバランスな天使。
ステージで紹介されてた時も思ったけど綺麗な女の子だな…
「ドラギアス王、ミヤタさん。僕たちを助けてくれて…本当にありがとう」
天使らしい笑顔だ。




