37話変装潜入。奴隷交換会
「え?…レティナ?」
「はい」
黒髪一つ結び。背が高く凛々しい面持ち。どこからどう見ても王族に仕える騎士。
「うわー!レティめっちゃイケメンじゃん!」
「すっげ。言われてもレティナって分かんねぇわァ」
レティナ、まさかの男装…!
「ミヤタさん。いかがですか?これならばあの豚に私だとバレないかと」
「うん!正直男の俺より全然カッコイイよ!」
「そう…ですか。まぁ化粧のおかげです」
「化粧?!あーしにもして!コスメなにがあんの〜?!」
「え…ドラギアス様、に…?…?」
俺とルキア、レティナの頭に化粧をしたドラギアスの顔が思い浮かぶ。
白塗り、青いアイシャドウ真っ赤なリップにピンクのチーク。化け物の上にゲテモノをトッピング。
「目立っちゃダメだからやめとこ…ね?」
「会場中の貴族が失禁しちまぅなァ」
「可愛いかもしれません…」
ウットリ…
レティナは置いといて。俺たちは奴隷交換会が行われるエスメラルダ教会へと足を踏み入れた。
「会員証を」
「ハイ」
「…たしかに。どうぞ中へ」
中は一件普通の教会。崇められているのは巨大な女神像だ。
その裏に地下へ続く階段が着いており、悪事の場となっている。
罰当たりにも程がある。
「なぁなぁミヤタァ。さっきの会員証どしたん?」
「ルキアは今奴隷なんだから馴れ馴れしく話しかけちゃダメ。俺のこともリツって呼ばないと。
…会員証はセルヴァの物。名前とか顔とかそういうのはチェックされないから助かった」
「セル髭もたまには役に立つね!」
「っ!…ドラ…フェンリル!声が大きい!
出る前にも言ったけど立原さんの喋り方ギャルすぎて正体バレかねないの!」
「え〜じゃあ喋んなってコト?」
「うーん…意思疎通に困るから最低限だけは…でももう少し荘厳な感じで振舞ったりとかさ?」
「ソーゴン…わかった。やってみる」
不安だぁ〜…フェンリルも超威厳あるイケメン狼なのにド低音でギャル語連発。強面×ギャル語なんて特殊キャラ1人しかいないっての…!
「おや…見ない顔ですね?」
ッ!エルド!始まるまでなるべくコンタクトは避けたかったのに!
「え、えぇ…知人の紹介なんですが…初めてでして」
「ここは限られた貴族や伯爵、公爵家しか参加できませんから貴方方はとても運がいい。
フェンリルを従えているなんてまるで噂の伯爵家ですなぁ」
「はは…噂になっているとは」
早めにこの場を離れなくては…
「貴殿も本日の目玉商品をお求めで?」
「目玉…?」
「交換に出される奴隷の中に"天使族"がいるそうですぞ。
東の海の真っ只中に小さな島がありましてな、そこに天使族らは住んでいるのです。
天使族の涙は傷を癒し、歌声は若返りを可能にするとか…見目も美しく観賞用としても素晴らしい。
なんとか手に入れたくてこの度私は巨人族や獣人族まで連れてきてしまいましたよ」
ニヤリとした笑顔に嫌悪感が募る。
人を売買するなんて誰が思いついたんだよ…
「それから天使族の体は犯せばそれこそ天に昇るほどの快楽を得られ肉を喰らえば不老不死に…なんて噂もございますからなぁ
皆さんそれを狙っておられるのですよぉ」
虫唾が走る。コイツは人間じゃない。
あぁ…今すぐぶん殴りてぇ…
ふと背後から刺すような視線に悪寒が走る。
ハッとして振り返るとドラギアス、ルキア、レティナから湧き上がらんばかり殺意───
気持ちは分かるけど抑えろ…!!今はダメだ!
「はしたのうございますぞ」
隣に座っていた仮面の男性は同じくニヒルな笑みを貼りつけている。
「いやはやこれはこれは…楽しみにしていたものでつい語りすぎてしまいましたなぁ。
貴殿も天使族を狙っておられるのでしょう?」
「どうですかなぁ…釣り合う奴隷がおりませぬわ」
「お戯れをもうされる…そうだ。フェンリルを連れているという貴殿は本日何を交換に出されるのですか?」
我慢、我慢。
大きく吸って吐いて、深呼吸。
「本日はこちらの人間の奴隷とフェンリルを」
「おぉ…魔獣を交換会に…?!やはりお目当ては天使族か?!」
「どうでしょう?いろいろ見て決めたいなと」
「今期は豊作ですなぁ!」
「それで…お恥ずかしながら私交換会は初めてでして…なにか規則があるならば粗相がないよう聞いておきたいのですが…」
「よろしいですぞ。それでは早速交換に出す奴隷をマスターに預けてしまいましょう。あちらの舞台の脇が裏手に繋がっておりますから」
「ありがとうございます。是非、有意義な時間を。お互いに…」
まだ我慢。エルドを最高のタイミングで晒しあげ、生きていることを後悔させる程の苦痛を与えてやる…!
足早に裏手に向かうとバックステージでは既に多くの奴隷達が。種族も様々だ。
この国は…根本から腐ってる
「3人とも我慢してくれて良かったよ…」
「マジ血管ブチギレるかとおもったぜェ」
「えぇ。ぶん殴りそうでした。ですが…」
「宮田クンが頑張って考えて調べて準備してたのしってっからね!」
「みんな…うん。絶対成功させてあのゲス野郎の顔を恐怖に変えてやろう!
じゃあルキ、フェンリル…頼んだよ」
「おうよ!」
「まっかしといてぇ!」
フェンリルとルキ。もといドラギアスとルキアを交換用奴隷として登録し会場へと戻る。
希少な種族や魔獣ほど交換に出すための費用がかかるってことか…ふざけた交換会を取り仕切ってるマスターもロクな人間じゃないな…
パーティ用の円卓に腰掛けレティナは側仕え騎士の設定なため傍らに立つ。
シャンデリアがブラックアウトしステージのマスターにライトがあたる。
「紳士淑女の皆様!待ちに待った奴隷交換会を開始致します!今夜も希少商品が目白押し!
奴隷紹介後、主の皆様にてマッチングを行い、交換が成立致します。
それでは1つ目の奴隷から参りましょう!」
いよいよ始まる…奴隷交換会。覚悟しろ。貴族のクズ共───!




