29話 陽キャだらけの騎馬戦
騎馬戦。
それは3人が手を組んで馬となり、1人が騎手として頭の帽子や鉢巻を取り合う運動会で行なわれる競技種目。
俺はその騎手に選ばれた。
通常の運動会レベルの騎馬戦なら気軽に楽しんだところだが、この度俺は竜王の背中に乗っかり、数多の戦を乗り越えてきた歴戦の猛者達と相対しなければならない。
「宮田クン行くよ!」
「ちょっと待っ!」
暴君ドラギアスは戦略もクソもなく大量の敵兵に突っ込んでいく。
待ち構える半裸筋骨隆々の騎士たち。そして───
「相手にとって不足なし…ミヤタ…その命貰い受ける!」
まっ待って───俺まだ覚悟が…死ぬぅうっ
◾︎◾︎◾︎
「うぉあ───!!」
飛び起きた。
辺りを見回すと本棚とフィギュアと観葉植物。見知った自分の部屋である。
己の顔をペタペタ触ったあと洗面台へがっつく。黒髪センター分け。なんの特徴もない自分の顔。
「…夢……かぁ……」
ヘナヘナ。洗面台で崩れ落ちながら俺は現実世界に戻ったことを理解した。
今日は大学である。
まぁ…あながち夢じゃないって言うか今日寝たら始まっちゃうんだけどね、騎馬戦。
異世界のカザ国にて行なわれる格技大会。戦を模した紅白騎馬戦に出場することになり───
なんで俺が"騎手"なんだよ…!!
(回想)
『いやいや俺が騎手?!即死よ?!絶対ルキアの方がいいって』
『ルキアは頭に血が上って乱戦に突っ込みいつの間にか頭の羽をなくしていることにも気づかない阿呆なのでダメです』
『レティナ表でろコラァ』
『宮田クン戦国時代好きっしょ?白チームの先陣切って兵隊動かしたらイケる!』
『イケねェ…楽観的すぎだって…』
『お前の頭の良さは大蛇討伐でよォく知ってるしなァ。俺たちが下で護るから存分に暴れろよ!』
『私も魔法でサポートしますので雑魚兵は眼中に入れず大将狙いで行きましょう』
『アタシも火噴いてガンバる!宮田大将、頼んだ!』
『え…え……えええぇ〜…』
以上回想終わり。
俺は反射神経も運動神経も中の下!開始5秒で頭の羽奪われてもおかしくない…マズイ…このままじゃ絶対マズイ
大学へ向かいながらも頭の中は異世界のことでいっぱいだ。
「騎馬戦と言えば武田信玄の戦法が有効だけど俺が支持して白組の人達が動くかどうか…白組の人間だってユーヴァースの部下だろ…背後から刺されそうまである…」
「宮田クーン!!おっは!!」
ブツブツ言いながら歩いていると背中に走る衝撃。
よろめきながらもなんとか踏みとどまったが後頭部に跳ねる柔い感触に狼狽える。
む、胸がっ!!
「ちょっ立原さん!危ないし近い!」
振り返ると本日は色白ギャルの立原さんだ。
革ジャンと首元まであるニットなのに胸元だけダイヤ型に空いている。
暑いか寒いのかわからない服だ。
こちらがドキマギしてるなんて彼女は露知らず。
「なんか一人で喋ってた?」
「無視かい…あー騎馬戦の事。やっぱり俺が騎手とか無謀だよ」
「そぉんなことないって!宮田クンにはつよつよ頭脳があるじゃん!」
「そりゃ囲碁とか軍議とかその辺では発揮されるかもしんないよ。
でも結局最後は羽の取り合いになるんだからそっち強い方が有利だよ。
俺が下から指示出してルキアが戦う。その方が強いって」
「ルキア言うこと聞かないかもだしドジりそう。宮田クン一択!」
「勘弁して…所詮遊戯だしみんなユーヴァースが勝つとこ観たいんだろうから負けてもいいけどさ…」
「やるからには勝つっしょ!…あ!あーしいい事思いついた!練習やろう!」
「練習?騎馬戦の?」
「そう!したらみょんちゃんとくーたんとしばちーと…」
誰?
1人も分からないが立原さんはスマホをタプタプ、連絡しているようだ。
「いや待って誰呼ぶ気?!練習って何?!」
「実践あるのみ!レディゴー!」
誰かこのギャル止めてくれ───!!
◾︎◾︎◾︎
大学の講義後中庭に連れていかれた。待ち構えていたのは同じ学科の陽キャ達。つまりは俺がほとんど話したことの無い人間達だ。
「おーっすイルカ〜。騎馬戦するぞ〜ってイミフなんだけど」
「騎馬戦って小学校の時運動会でやってたやつ?」
「えっその子誰?もしかしてイルカの彼ピ〜?」
うわああああ!!既に帰りたい。ムリ。人種か違う!
「彼ピじゃないよ〜え〜っと…秘密の共有者」
かっこよく言ってもアウトなんだが。
「なんそれ気になりすぎんだけど〜あ、私みょんでーす。名前は?」
「みょん…?…お、俺は…宮田です。宮田律」
「あー!レポートとかいつもお手本になってる人?」
「俺たちにプリント貸してくれた時あったよな〜まじ助かった〜」
ワイワイガヤガヤ。俺には縁のなかった陽キャたちにどんどん認知されていく。
悪い人たちではないのだが疎外感と別種であることを感じてしまう。帰りたい。
「で、イルカ。騎馬戦って何よ?」
「あーしと宮田クン騎馬戦の大会出んの。だから練習付き合って〜」
「騎馬戦の…?」
「大会…?」
男女ともに小首を傾げる。当たり前だ。今どきそんな大会あるだろうか。
「おk。よく分からんけど面白そうだからやろ、練習!」
軽っ!流石立原フレンズ!!
「あり〜!じゃーあーしVS宮田クンね!」
「なんでっ?!」
「男と女の戦い!ハチマキないからキャップね〜」
「いやっやんないよ俺!…うわっ」
横からツバのついた黒いキャップを被せられる。そして一言二言しか交わしたことの無い男子学生に肩を組まれた。
「おもしれぇ!ボコボコにしてやんよ!乗れ宮田ァ!」
誰っ?!陽キャ怖い!この流れで騎馬戦始まるか普通?!
陽キャ、否。大学生の悪ノリで始まった立原さんVS俺の騎馬戦バトル。
マジで帰らせてくれ───!!




