27話ギャル道爆走!引きずられる俺
カザ王国。女帝ユーヴァースが納めるこの国は活気と英気に満ち溢れていた。
賑わうバザールに噴水前で踊る人々。街ゆく人々は商人やら冒険者やら身なりも様々だ。
「うわ…凄い。これがカザ王国。ジュラ王国と全然違うな…」
「カザ王国は小国ながら多種多様な民族が住んでおり軍事、建築技術、鉱山、どれをとっても他国に引けを取りません。
よくもまぁこの国を戦火に沈めようとしたものです」
相変わらずの毒舌レティナだ。
「確かに凄い。俺たちの国とは国民の顔つきが違う。もしかしたら統治の参考になるかも…ってドラギアス王は?!」
隣を歩いているはずが忽然と姿を消している。
「王ならあちらの露店でバカルキアと串焼きに見蕩れています」
串焼き露店を覗き込む漆黒の竜。当然注目を浴びることとなる。
「あれってドラギアス王か…?」
「和平条約を結んだって本当だったんだな…」
「そうはいっても魔物でしょう?またいつ暴れ出すやら…」
ヒソヒソと聞こえてくる声は好奇、嫌悪、不安それぞれ。あまりいいものでは無い。
「ちょ、2人とも。さっさと王宮に」
「おっちゃん!串焼き4本!」
「コルァ!話聞けェ!」
「なにも〜宮田クンのもあるからさ〜」
「そうじゃなくて!…一応この国と戦争してたんだから目立つ行動はダメだって」
「え〜でもそれ仲直りしたしィ?ユーたんがここの串焼き美味いって言ってたし?」
「あ、あのっドラギアス王よ!」
串焼き屋の店主が身を乗り出す。
「ユーたんとは…ユーヴァース様のことですか?」
「?…うん!ユーたんが『バセルの肉焼きはタレがマジウマ!噛めば肉汁が溶けだして口に広がる激アゲ料理!』…って言ってた」
勝手にギャル語に変換すな。
「ユーヴァース様が…俺の串焼きを褒めて下さったとは。時折食べに来て下さるが気に入っておられたのだな…」
じぃん…と喜びを噛み締める店主。それだけでもユーヴァースの人徳が伺える。
「そーそ!あとねェ…肉まんのお店とかァ焼きフルーツの店とか。あ、ジュエルズなんちゃら?って店はインスタ映え間違いなしって言ってた!」
「肉まん?いんすた?」
「えっとねぇ…あ、コレコレ」
ドラギアスはポケットから手紙を取り出す。そこには───
『此度の交換留学。貴様が来ると知ってバーンズと笑ったものだ。
我が国に来たら、バセルの肉焼きは必ず立ち寄れ。串焼きの常識が変わるぞ。
それから焼きフルーツや肉を生地で包み込んだタオヤン。このあたりが特産品だ。
さらに貴様の言う"映え"とやらにピッタリなジュエルズティアラという宝石店がある。』
バーンズはユーヴァースの傍らに控えている強面の大男である。
「あぁ…焼きフルーツは斜め向かいのお店、タオヤンはもう少し進んだ右側に、ジュエルズティアラは王宮の真向かいにありますよ!」
店主は嬉々として教えてくれた。
「マヂ?おぢちゃんあり〜串焼きいただきマース!」
「これ、サービスです!ユーヴァース様にも宜しく頼みます」
牛串の他につくねと見られる丸い串を4本追加されドラギアスはニコニコだ。
「いーのー?!ありがと!ユーたんにサイコーって伝えとく〜」
串焼き屋の店主とのやり取りを見てザワ付いていた国民たちの空気が和らぐのを感じた。
ユーヴァースの人徳もあるだろうが、にしても恐るべきギャルパワー…
「ハイ、宮田クン!」
「どうも…」
串焼きを2本受け取る。
「次肉まん言って〜デザートは焼きフルーツで〜…あーん」
「立原さんって凄いよね」
「ぁにが?」
はふはふ串焼きにかじりつきながら小首を傾げるドラギアス。串ごと食べてしまいそうなスケールだが「うまっ」と目を輝かせている。
「初めましての人とすぐ仲良くなれるとこ」
「…あーしはさ、宮田クンみたいな頭脳もないしおっちゃんみたいに美味い串焼き作れない。周りは皆アタシにできないことをもってる。
だから、皆に助けて欲しいしあーしも助けたいんだよねっ」
立原さん…今まで暴君とかサボり魔とか人たらしとか思ってたけど芯がしっかりしてるんだな…
「…今失礼なこと考えたっしょ?」
「へっ?!か、考えてない考えてない!あはは…ン!…この串焼きうまァ!」
「でっしょ!!お肉やらかぃしタレが激ウマ!インスタでバズるね!」
「だからこの世界にインスタとか無いってば…」
◾︎◾︎◾︎
「あー…確かにこの国を観光してから来るとは聞いていたが……」
玉座に腰掛けるユーヴァースは苦笑い。
俺としては今すぐ他人のフリをしたいくらい恥ずかしい。
隣に座するドラギアスは腕輪に首飾りに耳飾り。両手に白いライオンのような謎の生き物のぬいぐるみ。
「た…楽しめたようでなによりだ」
強気な美女、ユーヴァースが笑いを堪え、お付のバーンズは俯いたまま震えている。
「ユーたんの言ってた通り!ジュエルズってとこめっちゃ良くて爆買いしちった〜ランちゃんに貰ったお小遣い全部つかっちったよ〜」
ランちゃん=優秀なランフェルである。
彼も最近ドラギアス王のアホさに気づいてきたらしい。
「相変わらず愉快な奴だ。では早速技術者達は工場の見学から。あと……そこの2人は?」
「レティっちとルキア?アタシのダチ!2人とも強くてオモロいよ」
「コホン…レティナは財務大臣。ルキアは国民の声の代表、国益大臣です」
使者という名目上2人には役職をつけたが───
「ルキアッす!タオパオってやつが最高でした!」
「レティナです…」
淑やかに見えてレティナの耳にはエメラルドの耳飾り。
コイツら観光目的で着いてきやがったな───
「はははっ愉快な仲間たちだな?どれ、明日は我が国伝統"格技大会"が開催される。
四人一組なんだが…出場してみないか?」
格技大会?四人一組?…なんかやな予感…
「出る〜!!」
やっぱり───!




