26話優秀な妄想力!竜=ギャル
「大蛇討伐、オメデトー!」
舞う紙吹雪。机に並ぶ豪華な料理。満面の笑みのつもりだろう竜王。
席には酒瓶をかかげるルキアと無表情のレティナ、微笑むランフェルと肩身が狭そうなイグニー。ともかく勢揃いである。
「あのドラギアス王…これは一体」
「ン?お祝い!巨大ベビ倒すの大変だったけど皆でやり遂げたしパーチーしたいじゃん?
ハイ、宮田クンはMVPね」
どこから持ってきたのだろう。「本日の主役」とかかれた襷を引っ掛けられ、頭にはキラキラのとんがり帽子。
「え〜…もう、呑気だなぁ…」
既に国民の税収は半分になっているためお金儲けを餌に貴族を取り込む作戦は急を要するというのに。
まぁ急いでも仕方ないこともあるし…いっか
お誕生日席に座らされると『乾杯〜!』なんて大はしゃぎの音頭。賑やかな昼食が始まった。
「いゃまさか本当にバイオレットサーペントを討伐するなんて…流石ドラギアス王です」
イグニーが酒を煽りながら笑う。
「あーしだけじゃないよ〜ルキアもレティっちも凄かったんだから!」
イグニーは大蛇を売って儲けたお金を見せたら早速ピクルス工場とバター工場建築に着手してくれた。
無事貴族の中の権力者、イグニーを味方に引き込めたらしい。
「そんでもってMVPは宮田クン!蛇の動きを予測して一撃!チョー凄かった!」
「いや一撃入れたのはドラギアス王で…」
「確かにミヤタがいなきゃ終わってたぜ!足手まとい連れてきたかと思ったけどお前頭脳派なんだな!」
ルキアは一言余計である。
「本当に…何故あの蛇の動きを予測できたのですか?」
「あぁいや…アイツ最初から一番弱い俺ばっかり狙ってたけど視線が分かりやすかったんだよ。
あの時蛇はドラギアス王に捕まってたから体をうねらせないと怪我してるルキアにトドメをさせない……
って、山張みたいなもんだから外れたら俺も死んでたけどね」
「すげ。ミヤタ頭いいな…流石ドラちゃんに取り憑いてた悪魔を追い払っただけあるわ…」
そういえばそんな設定だったな。
「でしょ〜!宮田クンすごいんだから!」
「はい。どこかの馬鹿と違って理論的で信頼できます」
「…おぃ、それ俺のことじゃねぇだろうな」
「さぁ」
火花が散りそうな食卓には最早苦笑い。しかし───
褒められたの…嬉しいかも…
自分の咄嗟の判断が仲間を救い助けになったのだ。素直に嬉しい。
骨付き肉にかぶりついていると横から感じる視線。
竜王立原さんがニヤニヤと笑っていた。
「…な、何?」
「嬉しそ〜な宮田クン。可愛いな〜って」
「はっ?!…か、可愛いって…揶揄うなよな」
ギャルはすぐそうやって何でもかんでもカワイイって言うんだから…いちいち俺もドキッとしてんじゃねぇ…
「なんというか…ミヤタ殿はドラギアス王と仲が良いのですね?」
「あ…」
ツッコミ疲れのせいで最近は王として接するのを忘れていた。
これが本物の竜王だったら今頃一族諸共処刑だな…
「ドラギアス王も以前とは印象が全く違う…本気で国を変えるおつもりなのですね…」
イグニーは酒の入ったコップを硬く握りしめる。
「私も覚悟を決めましょう。この国を全ての人々が笑って暮らせる豊かな国に…!」
「うむ!アゲ⤴︎なギャル王国目指してカンパーイ!」
「あげ…?」
ツッコむのも気にするのも疲れてきた。
何はともあれ弱腰だったイグニーがやる気になってくれたのは助かる。
彼に付き従う貴族も多いのだとレティナから聞いている。
「新しい事業の拡大は上手く行きそうですね。次は…どうしますか?」
宰相補佐の役目を全うするランフェルは優秀だ。
「次は並行して水問題の解決かな。
カザ国に技術者を派遣して風から水を精製する装置を学んできて欲しいんだ」
「なるほど…本当にそんな装置が…それがあれば我が国の水不足も解消されそうですね」
「うん。だから腕のいい技術者を数人…」
「ハイ!」
巨大な竜の手が天井に向かって挙手。その場が静まり返る。
「あーし行きたい!」
技術者つってんだろ!話聞けこのギャルトカゲ!!
「いや…ドラギアス王が行ってもなんにも学べないから」
「わかんないぢゃん!
それに水不足改善するのが王のツトメ…だし?」
「だから、元々高い技術持ってないと仕組みも理解できないでしょーが」
「ぅう…でも行きたい行きたい行きたーい!ユーたんに会いたーい!」
本音が出たな。
「ユーたんもお手紙で遊びに来いって言ってたもん!」
「いつの間に文通してたの…」
「ミヤタ知らねぇの?国には大体転送魔法陣ってのがあって手紙とか小物位ならリアルタイムで送れるんだぜ」
「へ、へ〜…シラナカッタ〜…じゃあドラギアス王と技術者10人くらいで…」
「宮田クンも行こ?」
「行きません」
「え〜…一緒がいぃ〜」
机に突っ伏してイヤイヤと首を振る竜王。駄々をこねる荘厳な竜というのは不気味なものだ。
「宮田クン居たら心強いしぃ…楽しいし〜…」
「行ってやれよミヤタァ」
「行きましょうミヤタさん」
ルキアはともかくレティナまで…
ドラギアスの金色の瞳がウルウルと俺を見あげて懇願してくる。
「そんな目しても…っそんな目、しても…」
恐怖でしかないはずの竜王。しかし優秀な俺の妄想力のせいで立原ギャルへの変換を余儀なくされる。
「い、行かないからな、絶対、いかないから───!」
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2日後。俺はドラギアスとレティナ、ルキアと共にカザ国へ到着した───




