17話貴族の反対派は無気力な美女
ハッと目を覚ます。シャンデリアが下がる白い天井とふかふかのベッド。起き上がって鏡を見れば茶色い短髪、素朴な顔をした男の姿。
異世界モブ兵士ターンだ。
といっても、立原さんによるスピード出世により俺はなぜかこの国の宰相に任命されてしまった。
部屋も3人部屋から個室へとランクアップ。服装だって重たい鎧はオフ。代わりに白を貴重とした軍服を支給された。
「うわ…これ……結構カッコイイんじゃね…?」
金色の肩章やタッセル、ボタン等の豪華な装飾。黒いスラックスにロングブーツと右肩から翻るマント。
身につけて鏡の前でポーズをとる。
なんかコスプレしてるみたいだ…
「───!!」
「ん?…今なんか声がしたような」
耳を済ませるとやはり誰かがなにかを叫んでいる。と、窓の外に空飛ぶ黒い物体が。
目を凝らしていれば黒い物体は次第にこちらへ近づいてきてその全貌が露になる。
漆黒の巨大な羽を羽ばたかせ重厚な鱗が朝日に照らされる。鋭く大きな爪と牙を持つドラゴンが部屋の窓目掛けて飛んできた。
ビタンッ
窓枠にしがみつき爬虫類系の瞳がギョロリと俺を捉えた。
「宮田クンおっはー!!」
「ぎゃあああっ!!」
俺、腰を抜かす。
◾︎◾︎◾︎
今日はルキアが貴族の反対派とやらを連れてきてくれる日だ。立原さんin竜王ドラギアスと共に応接室へ向かう。
「も〜…朝からやめてよ…心臓止まるかと思った」
「そんなビックリする〜?ほらほらァドラちゃんのカラダさ、大っきい羽ついてるから飛べるかもって。
チョーテンション爆上がりした!今度宮田クン背中に乗せて飛んであげるね」
「絶対ヤダ」
飛べなかったらどうするんだ。全くギャルは恐れ知らずで困る。
まぁ朝から腰抜かした衝撃のせいで気まずいと思ってたの吹っ飛んだから、そこは有難かったな
「おはようございます。ミヤタ様。ドラギアス王」
応接室の前で宰相補佐のランフェルが頭を下げる。
「おはようございます。えと…俺昨日まで一兵士だったし…様はちょっと…」
「そうですか?…では、ミヤタさん。ルキアさんと貴族の方が中でお待ちです。」
さて、貴族の反対分子…一体どんな人だろうか
緊張気味にノックをし応接室の戸を開ける。
中で待っていたのはルキアとクリーム色の布頭から被った人物。
「お、来たか。コイツが昨日話した貴族大嫌い女
レティナだ」
レティナ。そう紹介された彼女は立ち上がってゆっくり顔を上げる。
薄桃色の瞳は、ハッとするほど美しく白い肌に整った顔立ち。まるで精霊のようだ。
なんかイメージと違うなぁ…貴族の反対派とかいうからガラ悪い大男とか想像してた
「なんだぁミヤタァ。レティナに見とれてんの?」
「はっ?!ちがっ…は、反対派とかいうからもっと厳ついやつ想像してただけで…」
「宮田クン好みそうだもんねぇ〜だってむ」
「うわぁあっ!違うって!!」
慌ててドラギアスの巨大な口を上下に抑える。
綺麗な人だと思っただけで胸なんか見てない!クソ…絶対変な人だと思われた…
レティナに目をやるがレティナは怪訝そうな顔をするでもなく困惑するでもなく、真顔のまま。無気力と言った方が正しいか。
パサ。被っていた布を取ると広がる桜色。長い髪を一本の三つ編みに束ね益々精霊のように感じられる。
「レティナです。よろしく」
無愛想な挨拶だ。
「俺は一応宰相のミヤタ。昨日から、だけど。それでこちらが…」
「竜王ドラちゃんでぇす!一緒に貴族ぶっ潰そーう!」
巨大なウインク音と似合わぬピースポーズ。流石のレティナも面食らい目を丸くするがすぐに冷たい無表情へと戻る。
「誰ですかこの馬鹿は?」
ヒュンッとその場が凍りつく。
竜王ドラギアスはキョロキョロと辺りを見回したあと───
「え?宮田クンだけど」
「アンタのことだよ!!」
つい全力ツッコミを入れてしまった。
◾︎◾︎◾︎
気を取り直しテーブルを囲んでレティナとの対談を始める。立原さんはお茶請けに出された紅茶風味のケーキにご機嫌なようだ。
「───というわけで、国民の生活を助けるために税収を半分にすることが決定しました。ただ税の恩恵を受けている貴族達の不満も最もでこれ以上の国の衰退を防ぐためなんとか穏便に済ませたいのですが…」
一通り説明してみる。もしレティナが貴族たちを説得させられるなら俺と立原さんの案は特に必要なくなってしまうがそれが一番良い。
「無理ですね」
レティナは冷静な瞳でハッキリと言い放った。




