16話ギャルのドキドキお宅訪問!
宮田律。俺は男の割にいろいろ几帳面な方だと思う。
掃除は月曜日と木曜日。床に物を置かない。
大好きなラノベや歴史文学の本は巻数順に並び部屋にある物全て収納場所が決まっている。
そういう空間や生活が好きなのだ。
そして今、俺は作り上げてきたオアシスに爆弾を連れ込もうとしている。
「お邪魔しまーす!おぉ…ここが宮田クン家かぁ…」
青系の色で統一された柄物のない部屋。ド派手な見た目の立原さんはかなり浮いている。
「適当に座っていいけど本棚とか触んないでね」
「うい〜っす」
「カルピスとお茶と…珈琲あるけど」
「マジ?やった!カルピスお願〜ぃ!」
冷蔵庫を開けカルピスのペットボトルを持つ手が震える。
ギャルに部屋を荒らされるかもしれないという焦りと女の子と部屋で2人きりという事実で正直心臓がパンクしそうだ。
落ち着け宮田律〜…元カノだって家に来たことあるだろ!それに相手はギャル!陽キャ!男女分け隔てなく垣根を飛び越え仲良くなれるコミュ力の化け物!!
そう、男友達と何ら変わりない…
「ねぇねぇ宮田クン、これってなんのアニメ?」
カルピスのグラスを2つ運んだところで立原さんが指す方を見ればショーケース。
中にはパニエたっぷりのフリフリ衣装を着た可愛い女の子の2次元フィギュアが。
うわーーはっ!どえらいもんだしたまんまだったァ!!
「そ、それは…異世界ダンジョンに転生したら森の女神だったので加護を与えまくってたら魔法使いに降格されました、っていうラノベ作品の主人公で……」
「題名長!宮田クンが言ってた異世界転生ラノベってやつ?このアニメ見たらアタシが竜に転生しちゃった理由も分かんのかなぁ」
「理由はわかんないかも…」
なんだか思っていた反応と違う。こういう陽キャ達は俺のようないい歳した男が可愛らしい女の子のフィギュア飾ってるってだけで「キモイ」だの「ウケる」だの言いそうなのに。
現にそれで彼女に振られたことあるしなぁ…
「立原さん、それ見てうわって思わないの?」
「なんで?」
「ほら…俺みたいな男がさ、こーゆーの持ってると…気持ち悪いというか…自覚あるし言われたとてどうってことは無いんだけど」
「え〜人の好きな物キモイとか言う方がキモくない?宮田クンが二次元の女の子可愛いって思ったり好き〜って思ったりすることって別にアタシに害もないしカンケーないじゃん」
「立原さん…」
優しい。人を見た目で判断しちゃだめだな…俺の方が偏見まみれだ。
じぃんと胸に広がる感動。
「まぁでもー…宮田クンはこういう女の子がタイプなのかぁ〜ふむふむ胸派かァ…とはなるね」
いたずらっぽく笑う立原さんに俺は顔から火が出るかと思った。
秒速前言撤回。やはりギャルはデリカシーがない。
「む、胸じゃなくてストーリーとかキャラクターがすきなんだよ!」
「ほっほう…キャラクター"も"じゃないのかい宮田クンや…」
「うるさいなぁあもぉ…そんなことよりギャル王国の件だろ?
ルキアが言うように貴族の反対派を取り込むのはいいけど、どの道争いになりそうだよなぁ」
「従わせる」
「どうやって?」
「こう…」
拳を丸めシュッシュッと振る立原さん。
「確かにドラギアスでそれやったら一発だろうけど…反感買うと後が面倒になるよ絶対」
「税収とか無くてもお金持ちのクセに」
「人間は一回贅沢味わっちゃうと戻れないからなぁ…
とりあえずラノベいくつか漁ってみるか。
無一文から成り上がったり国を作る話はそれなりに多いから、いい案でてくるかも」
「おk〜あーしネットで調べてみる〜」
◾︎◾︎◾︎
「イイ…これならイケちゃうよ宮田クン!!」
「うん。明日?というか今日?…提案してみよう」
総思考時間3時間。貴族の反発に対抗する策が完成した。
ノートのメモ書きは異世界に持っていけないので頭に叩き込むしかないがこれ以上の対策は無いだろう。それにしても───
楽しかった…
生まれ故郷でも知り合いがいる訳でもない傾きかかった国のために労力を割く。
お金になるわけでも俺と立原さんの人生がかかっているわけでもない。
だが2人であーだこーだと試行錯誤しながら異世界の幸せの為に頑張る時間は充実したものだった。
「あ…もうこんな時間。立原さん、家まで送るよ」
「まだ17時半だしヘーキヘーキぃ」
「そう?…なんていうか…立原さんって結構話しやすいんだね」
「え?」
「ギャルだから俺とは相容れないって思ってたけど…結構頭良いし発想も面白いし
すぐ仕事押し付けてくるから何も出来ないのかと思ってたら今日すっげー調べてくれるし、印象凄い変わった」
「宮田クンは結構ズバズバ言うねェ」
「陽キャもギャルも苦手だったけど…立原さんは良いギャルだね」
「みーんな良いギャルだよ〜皆に宮田クン紹介したげよっか?」
「それはいいかな…」
立原さんと仲良くなれたしいい案も完成したし。今日は異世界に行くのが楽しみだ…
立原さんを玄関まで見送る。予定外の訪問のドキドキも試行錯誤に夢中になるうちいつの間にか消えていた。
やはりギャルはコミュ力が高い誰とでも友達人間なのだ。
意識してた俺が恥ずかしい…
「じゃあ立原さん。また異世界で」
「ンね、宮田クン」
トントン
立原さんは靴に踵を入れるためつま先で下足場を叩く。
玄関は段差があるため自然と俺を見つめる立原さんは上目遣いだ。
「アタシ最初はなんで巨大トカゲになっちゃったんだーって思ってたんだけど〜…
宮田クンとアタシ、2人だけのヒミツみたいで今はけっこーたのしーかも」
無邪気な笑顔にそれまで鎮まっていたはずの心臓が大きく脈打つ。
ぎゅっ
は?!手…手っ…にぎられてっ……
「今日も増えるね。アタシと宮田クンのヒミツ…」
指の間に立原さんの細い指が入り恋人繋ぎに。バクバクとけたたましく鳴り響く心音のせいでなにも考えられない。
なにか言おうにも口をパクパクさせ情けなく「あ」だの「う」だの漏らすだけ。
「じゃねッ宮田ク〜ン」
パタン…
一瞬にして去ってしまった立原さん。俺は放心したように床に座り込み握られた手をワナワナと見つめる。
何?!今の?!?!
こ、この後異世界でどんな顔して会えばいいんだよ〜?!眠れねぇえ〜!!
異世界転生の影響か、おやすみ3秒だった。




