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12話国民代表ルキア。ギャル力で取り込む!

「なーんかイイ感じにまとめようとしてっけどォ…そもそもアンタのせいだかんな?竜王サマァ」


悪逆非道、誰も叶わない暴力で国を牛耳ってきた竜王ドラギアスの前でもポケットに手を突っ込みナメた目つきをしている青年。


「ルキアだ…」


「おぃルキア…よすんだ。殺されたいのか?」


押しかけた街の者たち数人が声を潜めて彼を噂する。どうやらこの"ルキア"という男、街の中では有名らしい。


「誰アレ?イケメンぢゃね?」


「いやうん。今それどころじゃないから」


竜王は口のデカさ故にヒソヒソなんてひとつもできていない。鼻息がうるさいと竜の顔を押しのける。


「なぁにコソコソ話てんだァ?…国を変えるだの、今から償うだの…元々壊したのはテメェらだろォ?なぁ皆?そう思うよなぁ?」


先程まで緩んでいた国民たちの顔が曇っていく。


コイツ…せっかく立原さんが良くした流れを…

巻き込まれないようにって黙ってたけどもう意味ないしこういう輪を乱すやつは嫌いだ


元々嫌いな相手とも争わない、スルーするスキルは高い方だったはずなのに。


立原さんの頑張りを見たせいか俺は無意識に言葉を発していた。


「お待ちください。確かにこれまでのドラギアス王の行いは謝って許される事ではありません。

ですが今ここで争って新たな憎しみと悲しみを生み出すことは誰の得にもなりはしない…」


「フーン…じゃあ俺らは泣き寝入りしろってか?」


「実は…ドラギアス王には悪魔が取り付いていたのです」


「悪魔だァ?」


「はい。元は心根の優しいドラゴンでしたがその強大な力に目をつけられ人間が契約した悪魔に体を乗っ取られたのです」


嘘つきでもいい。例え誰かに恨まれてもいい。


「つい先日、俺が悪魔を封じたことにより元のドラギアス王がもどって来られました。王は変わり果てた国と苦しむ国民に胸を痛め、悪魔の所業を自分の罪として償おうとされているのです!」


俺が立原さんを守る。ギャル王国だかなんだか知らないけど俺と立原さんでこの国を救う…!


「ふ…ふ…くくく」


振り返ると竜王ドラギアスが口元を覆い懸命に笑いを堪えて震えているではないか。


わ、笑ってんじゃねぇぞギャル〜〜!!テメェのために嘘ついてんだぞこっちは!!


確かに悪魔が取り憑くとかバカバカしいけど、セルヴァの口ぶりから察するにこの異世界では呪いや悪魔といった架空の力が信じられているはずだ…


「あ…悪魔に?信じられん」


「でも確かに今のドラギアス様はなんだか雰囲気が柔らかいというか…」


「あぁ。こんな風に民の声に耳を傾ける方では無かったはずだ」


よし、上手くいった。あながち間違いでもないしな。まぁ悪魔ギャルが取り憑いてるのは今の方なんだけど…


「証拠はあんのかよォ?お前らグルで俺たちを騙し、また悪魔に取り憑かれたんだ〜って言いながら取り立てるんじゃねぇのォ?」


ルキア、こいつは頭がいい。逆を言えばルキアさえ取り込んでしまえば群衆は鎮まるだろう。


「では証拠を見せる。ルキア。君は国民の代表として王との対談に参上しろ」


「対談ン〜?イィねぇ…俺もそのクソデカトカゲに話ェことがあるんだァ」


ルキアはニヤケ面をしながらも橙色の瞳をギラつかせる。


「っつーワケだ皆ァ。家帰って寝るなり仕事するなりしろォ〜」


ルキアは振り返ると群衆に向けて両手を広げた。


この男、口ぶりはチャラついているが察しも良い


「ねね宮田クン」


ドラギアスの巨大な手に腰を、否、体を掴まれ心臓がヒュッと冷える。ギョロリとした巨大な竜の瞳が細く三日月型に笑う。


「何?…また揶揄うつもり?」


「ありがとッ」


ちゅ…


ほ、ほっぺたに、キス─────


冷たく硬い鱗が俺の頬に突き刺さった。


「いっっってェエエ!!!」


◾︎◾︎◾︎


何だかんだと国民のクーデターを乗り切ったが本番はこれからだ。あのルキアという男、相当な切れ者である。


ドラギアスが悪魔に取り憑かれていた証拠として俺はセルヴァを突き出すつもりだ。あの二人の噛み合わなさはお墨付き。

セルヴァには悪いが殺されかけた恨みである。


「おぃっどこに連れていく気だ無礼者!兵士の分際で私に触れるな!」


怪我をしているセルヴァは脅威でもなんでもない。痛がる老害を容赦なく早足で対談場所まで連れていく。


「もう俺ドラギアス王の宰相なんで。

次喋ったら王様にお願いしてアンタのこと処刑してもらうから」


「ひっ…」


やられたらやり返す。目には目を。我ながら平和主義者とはよくいったものだ。


立原さんから悪い影響受けちゃったかな…


対談場所は立原さんの希望でソファのある部屋。


『アフヌンしながら喋った方が上手くいくんじゃね?』


とのことだ。多分アフタヌーンティーがしたかっただけである。


戸をノックし開けると飛び込んできたのはゲタゲタ笑い転げる2人の姿だった。


「マジか?!マジかそれ!!ンで、どーなったん?!」


「マジ!それでさウチのオカンがね…あ!宮田クーン!」


「おぅミヤタァ!」


カヌレを齧りながら手を振りまくるドラギアス。天井のシャンデリアが揺れてヒヤヒヤする。

そして友達みたいなノリで片手をあげるルキア。


「なんっっっでだよ?!俺がセルヴァ連れてくるまでの間でなんでこんな打ち解けてんの?!」


「いやさぁ、ドラちゃんすげーおろしろくってェ…ミヤタが言う悪魔に取り憑かれた〜ってのも超わかる!」


笑いすぎて涙の滲んだ目元をヒィヒィ言いながら拭うルキア。


ドラちゃん…


「ルキアも面白くてさーぁ、さっきのトンビと子ブタの話宮田クンにもしてあげてよ〜超ウケんの〜」


俺の努力と覚悟は一体…


力が抜けフラフラとソファに座り込む。ルキアにはどうやらギャルの資質があったらしい。


「ン?…そいつセルヴァか?」


「あ…あぁ。コイツが王に取り憑いて唆してたクソ野郎」


「なっ?!き、貴様っ言わせておけば…!」


「ちょい、宮田クンに手だしたら今度こそ丸焦げにするよ」


冗談に聞こえないし冗談ではないのだろう。セルヴァも肩を震わせ一瞬で萎縮だ。


「へぇ…そいつが、ねぇ…」


それまでケラケラ笑っていたルキアだったがテーブルに肘をかけると橙色の瞳がスゥッと色を失った。


なんか雰囲気が…セルヴァを連れてきたのは失敗だった、か…?



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