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11話 ギャル、クーデターに立ち向かう。失われしモブ兵の平穏

「ちょぃちょい、クーデターってどういうことよ?」


「多分だけど…以前のドラギアス王の暴君さに国民の我慢が爆発した…とかじゃないかな」


宮殿の廊下を足早に急ぎドラギアス達と門へと向かう。


「まじか〜このドラおぢやっばい奴じゃん!」


外に近づくにつれ喧騒は大きく怒鳴り声や叫び声等あまりいい物では無さそうだ。


立原さんがやった事じゃない…でも重税に戦争…力でねじ伏せる政治。国民たちの怒りは最もだ。


今回ばかりはギャルムーヴじゃどうにもならないぞ…


「うわ…」


門の前にはすきくわを構え血気立つ老人たち。やせ細った赤子を抱えた母親。ナイフを片手に怒り狂う少年。


「暴君ドラギアスだ!!」


「もうわしらもだまっとらんぞ!今こそ王制廃止!」


「もう3日何も食べてないんだ!!この子で2人目…我が子が死ぬのをもう見ていられない!」


この国の闇が集約されているような阿鼻叫喚地獄。怒り狂う国民たちの怒りはドス黒いオーラを纏って立ち上りどんな言葉も届きそうにない。


「お、王よ。ここは危険です。お下がりください」


衛兵が押さえ込んでいるとはいえ、いつ国民たちが武器を叩きつけ戦闘が始まってもおかしくない。


「どうする?立原さ…」


「…」


立原さん、否。竜王の横顔は静かだった。黄金の瞳を伏せ悲しげに揺らし、そしてゆっくりと歩き出す。


「国民たち!!」


門から橋の終わりまで続く群衆一人残らずに届く声量。


ビリビリと体を打つプレッシャーに俺を含めた衛兵たちは息を呑み、国民たちは武器を握りしめる。


この後の一言で一触即発───


「ごめんなさい!!」


響き渡る謝罪。そして深々と下げる竜のこうべ。その場にいる全員がド肝を抜かれた。


「あ、謝って済む問題じゃないだろ!」


「そうよ!私の子供は戻ってこない!」


「そう…この竜王ドラギアスは取り返しのつかないことをしてくれた…だからアタシが代わりに償う…」


「償うだと?!なら死んで詫びろ!!政権交代しろ!」


やはり駄目か…立原さんに非はない。もう取り戻せないくらいこの国が腐ってただけだ。

最悪立原さんと二人で国外逃亡するしか…


一端の兵士である俺は槍を片手に祈ることしか出来ない。


「死ぬのは簡単だよ!でもその前に皆が今一番して欲しいことを叶えたい!」


「な…何を言って……そ、そんなの貴様の死に決まっている!」


「そうじゃなくて!欲しいものとか、今一番困ってることとか!」


ザワザワ。ドラギアスの変化に動揺し始める群衆。


空気が変わってきた…立原さん、凄い…


「ッ…そんなもの税収の削減に決まってるじゃないか!」


「おk!じゃあとりあえず今の税収を半分に減らす!」


「なっ…ど、どういうつもりだ…」


「他には?!」


「…王よ…今年は天候不順により不作続き。農業が豊かなジュラ国は大打撃を受けています

…なんとかなりませぬか?」


群衆の中から老人が冷静な声をあげる。それに従い群衆の怒りの熱が冷めてきた。


「水不足って言ってたっけ?」


「はい……大規模な干ばつでして…」


「なるほどね。じゃあそこはユーたんに頼もう」


「ゆーたん…?た、頼むとは一体…」


「ユーヴァースちゃんね。ユーたんの国では風を水に変える魔法の機械が生まれてるらしいの。

その作り方を教えてもらって…それまで水は輸入に頼る!万事解決!!」


おぉ…俺が貿易関連でこき使われてる間サボってんのかと思ったらそんな会話してたのか。

立原さんギャルなのに頭良いな


…いやいや、見た目に左右されちゃいけない…忘れてたけど立原さんだって俺と同じ学科。


講義の一環で「中島敦の山月記」を紹介してた時も発想がおもしろかったしなぁ…


「ユーヴァース…つい最近まで戦争をしていた相手ではないですか…!そんな国が敵国である我々に技術を教えて下さるとは到底思えない!」


「ところがどっこい。昨日ユーたんとアタシはマブダチ同盟結んだし技術教えてくれる約束もしているのデス!」


ゴツイ指でピースサインをし喉を逸らして得意げなドラギアス。群衆がまた「おぉ…」とどよめいた。


「皆竜王のせいで傷ついていろいろシンドいかもだけど…アタシこの国を変えたい」


すげぇいいこと言う!最初はこき使われて腹たったし話し合わないなって思ってたけど…真面目なんだなぁ…


群衆達の空気が軽くなり俺の出る幕がなかったことに感動を覚える。


俺は俺のできる範囲で立原さんを…いや、竜王を助けよう!


そんな決意をした直後だった。ドラギアスの巨大な四歩指が俺の手首を鷲掴む。


「へっ?」


ドラギアスの目の前に引きずり出されたかと思えば両肩をガシッと掴まれた。


「この優秀な新宰相、宮田クンと頑張るからアタシにチャンスちょうだい!」


「おっ…」


おぃいいぃい!!何やってくれてんの?!俺の紹介とかいらんし!おィこらニヤニヤすんなクソトカゲ!!


「そ……その者は?」


ドラギアスの良い変化の兆しに期待が止まらないといった様子の国民たち。今すぐ逃げたい。


「この人はねー新しいアタシのアドバイザー!頭めっちゃよくて仕事鬼早でいろんな問題解決してくれるパなぃ男!!」


ハードル上げすぎだろ?!ギャル盛りってこういうことか?!ああぁあ国民もそんな期待の眼差し向けないで!俺は槍も満足に振るえないモブ兵士だから!


いくら心の中で叫ぼうと俺に発言権はない。強い王が言えばそれが真実なのだ。

その証拠に──────


「ミヤタ…聞いた事のない名だ。一見普通に見えるが…」


「いや、ドラギアス様が目をつけたんだ。もしかすると天の遣いじゃないのか?」


「おぉ…この国に巣くっていたかつての悪王、ルシフォンを従わせたというあの…」


話は尾ひれがつき国中に波及していく。俺はモブ兵士らしく隅っこでのんびりやっていきたかっただけなのに、たった二日で宰相にまで出世してしまった。


ほんと…なんでこうなるんだよ─────


「なぁなぁおぃ、なんかイイ感じにまとまってるとこ悪いけどォ…俺ァ納得いかないねぇ」


明るい声が飛び交う中、一本の矢を投じるが如く響いた声。

人混みが自然に道をあけ軽い足取りをした青年が姿を現した。


金髪オレンジ目の一見チャラそうな見た目をした男は鋭い目つきをドラギアスに向ける。


一体この男は誰なのか。そして返してくれ。俺のモブ兵士ライフを──────





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