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ただの貧乏子爵令嬢ですが、枯れる前の花を残したら学院で評判になりました。  作者: あけはる


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第3話 

 翌日。

 学院の鐘が朝を告げる。

 コーデリアは自室に飾られたガラスケースに目をやる。

 

 白銀の薔薇と淡いブルーの小花は、静かに並んでいる。

 昨日と変わらない姿で。


 胸の奥がじんわりと温かくなる。

 今日も枯れていない。それだけで、十分すぎる結果だ。


 朝の支度を終えたコーデリアは、花をケースごと抱えて部屋を出た。

 今日は生徒会の定例会がある。

 

 この花を、どうしてもレオンハルト様に見せたかったのだ。


 生徒会室は、朝から慌ただしい。

 品行方正な高位貴族が各学年を代表して数名選ばれるがなんせやること事が多いのだ。

 コーデリアも、もちろんレオンハルトも生徒会の一員として1年生の頃から様々な業務を担ってきた。


「おはようございます」

「おはよう、コーデリア嬢」

「おはようございます、コーデリア様」


 挨拶を交わしながら席につくと、何人かの視線が、私の腕に集中しているのを感じる。


「それは、もしかして……花の日の花束ですか?」


 ピッツフォルド侯爵家令嬢で1学年後輩のサラが、遠慮がちに声をかけてきた。


「ええ、そうよ」


 私は微笑み、ガラスケースをそっと机に置く。


 その瞬間、空気が変わった。


「え?花の日って…」

「あれから1週間以上たっておりますわよ・・・?」

「なぜ、あのように瑞々しい・・・!」


 他の生徒会メンバーも驚愕の視線でガラスケースを見ていた。


 私は、少しだけ言葉を選んで答えた。


「これは、私の大切な友人が、手を尽くしてくれたの」


 それ以上は言わないことにした。彼女の思いを大切にしたかったから。


 でも、噂になるにはそれで十分だった。

 ”友人が手を尽くしてくれた”、その一言が想像に想像w呼ぶ。


 その日の午前中だけで、コーデリアは三度、同じ質問を受けた。


「どうして枯れていないのです?」

「生花を保つ魔法を発見されたのですか・・・?」

「侯爵家の魔道具でしょうか?」


 そのたびに、私は得意げに笑って話した。


「いいえ、この花は愛の、この加工は親友の証なのです」


◇ ◇ ◇


 学院のカフェテリアにて昼食をとっていると

 今度は、ユーリアのほうが落ち着かない。


「……ねえ、コーデリア」

「なに?」

「もしかしてさ……その花、ずっと持ち歩いてるの?」


 ユーリアは、本日のメインディッシュである大きなチキンソテーをもさもさ頬張りながら、小声で聞いてきた。


「ええ。生徒会の会合からずっと」

「……ずっと?」

「ええ」


 ユーリアは、わかりやすく頭を抱えた。


「ああ……!やっぱり……!」


「ユーリア?」


「いや、その……ほら。失敗する前提でやったからさ。

 まさか、ここまで綺麗に形を保つとは思ってなくって…」


 彼女は、困ったように笑った。


「これ、目立っちゃう?」

「ええ、とても」


 正直に答えると、ユーリアはうめいた。


「うぅ・・・やりすぎたかも……私のひっそり平凡な金策作り生活が・・・・!」


 私は、ぐぬぬ・・・と呻いている横顔を見て、思わず笑う。


「でも、後悔してないでしょ」

「それは、してない」


 即答。


「コーデリアが喜んでくれたから。それだけで、十分」


 その言葉に、胸があたたかくなった。


(私の親友はこんなに素晴らしい人だと、もっとみんな知るべきだわ)



◇ ◇ ◇


 1週間後。

 中庭で、二人の令嬢が噂話をしている。


「ねえ、聞いた?」

「サイヘゲート侯爵令嬢の花、まだ、枯れてないんだって」

「生花の命を保つ魔法なんてないでしょう?」

「それが、特別な加工してもらったって話よ」

「どちらで?」

「さあ……でも、一説によれば、“学院の生徒”らしいわ」

「え、でもあの人は貧乏な子爵令嬢だって、聞いたけれど・・・」


 自然と視線がユーリアは注がれていく。


 分厚い薬草学の資料を抱えて、


(薬草学の授業、疲れた~、

 あの教授、絶対教科書に載ってない裏技を実践するから集中力いるんだな~、

 あ~コーデリアからの差し入れのマフィン、食べたいな・・・)

 

 と、のんびり歩いているユーリアの傍らで

 噂はとまらない。



 そんな彼女の隣を歩くコーデリアは

 彼女の才能が正当に評価されてほしい気持ちと、同時に増えていく悪意から守りたい気持ちが、

 胸の中でせめぎ合う。


 でも、きっと。

 ユーリアは、逃げないだろうとも思う。


 ガラスケースの中の花は、今日も変わらず、美しい。


 

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