幸福税徴収員
「あなたの幸福値は平均値以上です。幸福税のお支払いをお願いします」
市役所から来たというスーツ姿の男の言葉に私は耳を疑う。そしてなにかの冗談なのかと笑いながら少しだけ身を捩ると自分の部屋を見せた。
ボロボロの備え付けエアコン、敷きっぱなしの薄い布団、スーツと寝間着が入ってるだけのいまにも崩れそうな衣装ケース。
私の部屋にあるものなんてそれだけなのだ。
「まさかこれで平均以上の生活をしているなんて言わないでしょう?」
私の言葉に市役所員はにこりともせずに答えた。
「しかしあなたは五体満足で働けているではありませんか」