第8話 古代の船と未来への招待状
ギアベルグに到着したオレたちを、レイナ艦長が出迎えてくれた。
「ご苦労だったな。君ならできると信じていたぞ」
「オレも夢中で……でも、できてよかったです」
「そこでだ。お礼というわけではないが、君をルビナスに招待しようと思って待っている」
「えっ、本当ですか!」
「実は、艦隊司令官が君に会いたいと言っていてね」
「艦隊司令官が、オレに……?」
艦隊司令官といえば、レイナ艦長の所属する第三艦隊のトップだ。
普通なら、オレみたいなのが会える相手じゃないはず。
「どうだい、招待を受けてくれるかい?」
「もちろんです!」
「よかったね、スカイ!」
「オレさまのおかげだってこと、忘れるなよ?」
「なにが“オレさま”よ。私の指示のおかげでしょ!」
「なんだとぉ!?」
――なんでこの二人、すぐ喧嘩になるんだろ……。
「まあ、二人のことは置いておいて、さっそくルビナスへ行こうか。司令官も、首を長くして待ってるだろうからな」
「はい、よろしくお願いします!」
定期船から少し離れた場所に、〈ルビナス〉が停泊していた。
タラップを上がると、制服を着た男女の軍人がオレたちを出迎える。
「艦長、司令官が首を長くしてお待ちですよ」
「わかった」
二人のうち、女性の軍人さんがオレと目が合い、にっこりと話しかけてきた。
「キミがスカイ君ね。艦長が気にかけてるって聞いてたけど、すごく可愛い子でお姉さんびっくりしちゃった」
あまり年上の女性と話すことがないオレは、ちょっとドキドキしてしまった。
「スカイっ! デレデレしすぎよ!」
(えっ……なんでオレが怒られるんだ……?)
女性軍人さんは、くすくすと笑っている。
――ルビナスの艦内は、雑誌で見たことのある軍艦と比べて、ずっと洗練された印象を受けた。
無駄な装飾が省かれていて、シンプルなのにどこか品があり、機能美を感じる。
(これはやっぱり、最新鋭艦だからなのか?)
なんてことを心の中で考えていると、一つの扉の前に案内された。
「司令官、スカイ君をお連れしました」
「入ってもらいなさい」
ドアが開き、中に入る。
「招待を受けてくれてありがとう、スカイ君」
大きな木製のアンティーク机に向かって座っていた男性が、こちらに声をかけてきた。
「あれ? どこかで……」
その男性は、机の上に置かれていた工具をくるっと回し、胸ポケットへしまった。
「整備士のおじさん!」
「ちょっと、スカイ!」
「あ、すみませんっ……!」
「ははは、構わんよ。“整備士のおじさん”で間違いないからな」
その人――司令官だと思われるおじさんは、まったく気にした様子もなく、豪快に笑っていた。
「おっと、挨拶が遅れたな。わしが第三艦隊司令官、セルギオ・ガルバードだ」
「あ、えっと……スカイです」
「ま、マイルです」
「大精霊のノクティさまだ!」
ノクティが、いつも通りの尊大な挨拶をする。……こらっ、ノクティ!
「ははは、元気のいいお仲間だな」
「すみません……」
「この前会ったとき、君が“乗ってみたい”と言っていたのを覚えていてな。それで、今回招待したんだ。――で、実際に乗ってみてどうだった?」
「あ……はい。イメージしていた軍艦とはぜんぜん違って、すごく洗練されていて……。正直、“戦うための船”って感じがしませんでした」
「なるほど。なかなか鋭い意見だな。――実はこの船は、“遺物”なんだよ」
「えっ!? この艦が……遺物なんですか?」
「ああ。ある古代遺跡から発掘された艦を、精霊の力を借りて修復したんだ。……おっと、一応機密事項だから、他言無用で頼むよ」
「……も、もちろんです!」
司令官は、オレたちの様子を見てニヤニヤしている。
――これは、きっと反応を楽しんでるな……。
「わしはな、この艦はもともと軍艦として作られたのではなく、“探索”を目的とした船だったんじゃないかと思っているんだ」
「探索、ですか?」
「うむ。たとえば、世界の秘密を調べるため――とか、な。ははは」
その言葉を聞いて、なぜかオレは本当にそうじゃないかって思った。
特に根拠があるわけじゃないけど、なんとなく……そんな気がしたんだ。
「ああそうだ、君たちはファクトリーで飛翔船を買うのが目的だったな?」
「はい、そうです」
「なら、私から紹介状を書こう。ファクトリーのグランに見せれば、多少融通してもらえるだろう」
『……ただしグラン以外の者には渡さず直接渡すようにな』
「お気遣いありがとうございます!」
お礼を言って退室したオレたちは、レイナ艦長に船内を案内してもらい、丁寧にお礼を言ってルヴィナスを退艦した。
◇◆◇
「ねえねえ、あれがファクトリーじゃない?」
オレたちの進む先に、ドーム状の建物群が見えてきた。
丸みを帯びた建物がずらりと並んでいる。
「さっきの案内板に書いてあったから間違いなさそうだね」
それぞれの建物の入り口は、ガラス張りのギャラリーになっていて、各ファクトリーの製品がずらりと展示されている。
商品に見入る客たちや、説明をしている店員の姿があちこちに見えた。
「行商人のおじさんにもらった紹介状って、第4ファクトリーだったよね?」
「ああ、第4ファクトリーは飛翔船で有名なファクトリーなんだ」
「あっ、あれ見て!」
マイルが前方の建物を指差す。そのギャラリーには飛翔船の模型や実機が飾られていて、入り口の上には大きく〈4〉の文字が掲げられていた。
「間違いない。行こう!」
オレたちは顔を見合わせてうなずき、〈4〉と書かれたギャラリーのある建物へと歩き出した。
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