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星雲の飛翔士 〜アーティファクトの力で世界を巡る〜  作者: いぬは
【第6章】 《カレンポート騒乱編》
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第53話 屋根裏に眠る記憶

「どうだ、見つかったか?」


「……いいえ、無いわね」


 アヤナが小さく首を振る。


「つーかよ、なんで屋根裏がこんなに広いんだよ。俺の部屋の五倍はあるぞ……」


 レオンがぼやきながら、頭をかいている。


「屋敷の倉庫として使ってるんだから、それなりの広さは必要なんじゃないか?」


 まあ、レオンの文句も分からなくはない。

 この屋根裏、想像以上に広いだけでなく、今は完全に倉庫として使われていて、家具や箱が所狭しと積み上がっている。

 高級そうなものも多く、庶民のオレは持ち上げるだけでも緊張する。


「飲み物を持ってきましたのですよ〜!」


 そんな中、元気な声が屋根裏に響いた。


 リリスちゃんが両手でお盆を抱えて、ひょこっと顔をのぞかせる。

 そのすぐ後ろには、心配そうに見守るメイドさんの姿も。


「ちょっ……リリスお嬢様! 危ないですから、そこは私が――」


「大丈夫なのです! わたし、アヤナお姉様のお役に立ちたいのです!」


 そう言って胸を張るリリスに、アヤナがやれやれと苦笑いする。


「ありがとう、リリスちゃん。でも、階段は気をつけてね」


「はいなのです!」


 元気いっぱいに答えたリリスちゃんが、大事そうに運んできたのは、

 可愛いガラスのポットに入ったフルーツティーだった。

 俺たちはいったん探すのをやめて休憩する。


「ふぅ……冷たくて美味しいわ。ありがとね、リリスちゃん」


 アヤナがお礼を言うと、リリスちゃんの顔がパァッと花が咲いたみたいに明るくなった。


「でも……この調子だと、今日中に見つけるのはちょっと難しいか」


 マイルが周囲を見回しながら、ぽつりとこぼす。


「そうだな。あんまり長居するのも悪いし……今日見つからなかったら、やっぱり使用人さんにお願いするか?」


 俺がそう聞くと、アヤナは小さく頷いた。


「そうね。さすがに何度もお邪魔するのは迷惑だし……しかたないわね」


 けど、その声はどこか残念そうなのが気になった。


「……どうかした? 気になることでもあるのか?」


 俺が尋ねると、アヤナは昔を思い出すように口を開いた。


「いえ……ただ、あの本は――私が大きくなったら、お母様が“あなたに渡すわね”って言ってくれていたものだったから」


 その横顔は、どこか寂しげだった。


「たしか、アヤナちゃんのご両親って……事故で亡くなったんだよね?」


 マイルがそっと尋ねる。


「ええ。二人で“ルージュ”に乗って、他国から帰ってくる途中……深雲獣に襲われて」


「そっか……。じゃあ、その本もルージュと一緒で、アヤナにとっては――形見みたいなもんなんだな」


「そうね……」


「なら、頑張って見つけないとな」


 オレはそう言って、みんなの顔を順に見渡す。

 レオンもマイルも、そしてノクティまでもが、真剣な顔でうなずいた。


 ――それから、休憩を挟みながら部屋中を探した。日が傾き、窓の外の空が夕焼けへと変わっていく。

 太陽が沈みかけたころ、薄暗くなった屋根裏部屋の片隅で、ふと異変に気づいた。


(……スタークリスタルが、光ってる?)


 首に下げたクリスタルが、かすかに淡い光を放っている。

 昼間の明るさでは気づけなかったが、今は確かに――輝き明滅しているのがわかる。


 すると、ノクティが近づいてきて、小さな声でつぶやいた。


「……近くに、“古代の遺物”があるな」


「みんな、ちょっとこれを見てくれ」


 オレは光を放つスタークリスタルを掲げる。


「これって……まさか遺物の反応?」


 以前オレと一緒に遺物探しをしていたマイルがすぐに気づく。


「ああ、この近くに遺物がある。そしてルージュに関係する本も……」


 オレがそう言いかけた瞬間、みんなの表情が一斉に変わった。


「この周辺を探そう!」


 オレの言葉を合図に、全員が一斉に動き出す。


 そして――すぐに、それは見つかった。

 埃をかぶった木箱が、ひっそりと隅に置かれていた。


「あった……」

 アヤナが小さく息をのむ。


 慎重に取り出し、蓋を開ける。

 中には、美しい装飾が施された小箱が収められており――その中には、真紅の表紙に〈ルージュ〉の姿が描かれた一冊の本が、静かに眠っていた。


 アヤナは震える手でその本を抱きしめ、ぽつりと呟く。


「……お母様」


 ◇◆◇


 オレたちはその後、エレノアさんに本が見つかったことを伝えて感謝を述べ、一度宿へ戻ることにした。

 エレノアさんからは、夕食を用意すると言われたけど、みんな早く確認したくて丁重にお断りした。

 別れ際、リリスちゃんが駄々をこねたが、「用事が済んだら遊びに来る」と約束して我慢してもらった。




 ――そして宿に戻り、改めて本を開いた瞬間。

 全員が息をのんだ。


 それは“本”ではなかった。


 二つ折りになったそれを開くと、淡い光があふれ出し、空間に赤い輪郭が浮かび上がる。

 次の瞬間、街で見た街頭ビジョンのように――宙に、鮮やかなルージュの映像が投影された。


「ホロビジョンだな」


 ……ノクティが静かに呟く。

 どうやら、古代の投影技術を使った記録装置らしい。


 ノクティは「俺様は何でも知ってる」とか言うくせに、オレが古代文明の事を聞いても、お前に言っても理解できないて誤魔化すんだよな。

 最近では、実はほとんど知らないんじゃないかと疑ってる。


 そんなやりとりをしていると――。


「……思い出したわ」アヤナが小さく呟いた。


「この映像……昔、見たことがあるわ。どうして今まで忘れてたんだろう……」


 映し出された映像には、〈ルージュ〉――正式名称〈コメット・ルージュ〉の詳細な説明が記されていた。

 赤い光尾を引いて流れる彗星に由来する名。その姿は、今のルージュとは違っていた。


「ねえ、このルージュって、複座なんだね」


 マイルが驚いたようにアヤナへ尋ねる。


「ええ。両親が深雲獣に襲われた時、ルージュも大きく損傷したの。そのあと、残っていた部品だけで再生したのが……今のルージュよ」


「そっか……じゃあ、エンジンコアが壊れたのも、その時……?」


「たぶん、そうだと思うわ」


 するとレオンが、腕を組んでうーんと唸った。


「ならよ、使えなかった部品はどうしたんだ?」


「えっと……たしか、先祖代々の霊廟に納められたはずよ」


「待てよ。それってさ、コアの欠片が残ってる可能性、あるんじゃねぇのか?」


「……たしかに、その線はあるな」


 オレもレオンの意見に同意する。


「なあ、アヤナ。その霊廟ってここから近いのか?」


「ええ。飛翔船で三十分もかからないわ」


「よし。なら、今から行ってみないか?」


 オレがみんなの顔を見渡すと、全員の目に、同じ想いが浮かんでいた。

 うなずき合い、オレたちはすぐに霊廟へ向かう準備を始めた。


 ――アヤナの両親とルージュの真実。

 やっと見つけた手がかりに、オレたちの胸は高鳴っていた。

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