表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星雲の飛翔士 〜アーティファクトの力で世界を巡る〜  作者: いぬは
【第2章】 《飛翔船購入編》
6/60

第5話 赤き艦影、村に来たる!

 今、オレたちは聖域の古代遺跡からハイノ村へ帰る道の途中にいる。


 季節はまだ初夏だけど、日差しは強く、昼間はじっとしていても汗ばむような暑さだ。

 道の木陰でひと休みしながら、マイルが持ってきてくれたおやつをのんびり食べている。


「ティーちゃん、これも食べる? はい、あーん♪」


 マインの中では、いまだに“ノクティブーム”が続いているみたいだ。


 自称グルメのノクティも、食事のときだけはマインに逆らわず、素直にされるがまま。

 食欲には勝てないってことらしいね。


「ねえスカイ、今回の成果で、飛翔船の購入資金ってどれくらいになったと思う?」


「そうだな、ざっと三百万ゼニーくらいかな」


「すごいっ! それなら、中古の飛翔船ならもう買えちゃうんじゃない?」


「たぶんな。今度、ファクトリーのある空島へ見に行ってみようと思ってるんだ」


「じゃあ、私も一緒に行くからね。ナビ席はもちろん私が座るんだから!」


 ――実は、星降りの儀式のあと、マイルに「スカイが旅に出るなら、私も一緒に行くからね!」ってはっきり言われたんだ。


 それどころか、彼女がスカウトのクラスを選んだ理由も、オレと旅に出るためだったらしい。


「スカイ一人じゃ心配だから、ちゃんと見ててあげるの。お母さんも応援してくれてるしね」


 そう、照れもせずにまっすぐ言ってきた。


 ……正直、一緒に来てくれるのはすごく嬉しい。でも、本当にマイルはそれでいいのかなって、ちょっと心配にもなる。


「ティーちゃん、あーん♪」……もしかしてノクティが目当てなんじゃ……ないよな?


「ふたりとも、そろそろ出発しようか」


「うん。村に戻ったら、ティーちゃんに夕ご飯作ってあげるからね!」


 それからも特に何もなく、オレたちは山道を抜けて、今は整備された街道を歩いている。

 日が少しずつ傾き始めて、空気も涼しくなってきた。歩くのにも丁度いい時間帯だ。


 ――そんなときだった。

 雲海を切り裂くように進む、大きな一隻の飛翔艦が視界に入ってきた。


「ねえ、あの赤い船……村のほうに向かってない?」


「ああ……ほんとだ。あの紋章……確か、“リヴェリア第三艦隊”のじゃないかな?」


「ってことは、リヴェリア自由都市連邦の飛翔艦ってことよね?」


「たしか……あれは最近就航したばかりの新型巡洋艦だったはず。今月の飛翔船マガジンで見た気がする」


「へえー、新型なんだ。大きいねぇ……」


「おい、リヴェリア自由都市連邦ってのは、何なんだ?」


「そっか、ノクティはずっと遺物の中にいたから知らないんだよな」


「リヴェリア自由都市連邦っていうのは、七つの都市を中心に結成された都市連合で、オレたちの村もその連合に加盟してるんだ」


「統治は、各都市の代表が集まる『七都市会議』っていう機関が、実質的に担ってるよ」


「なるほどな」


「でも、なんであの飛翔艦は村の方へ向かってるんだろう?」


「そうね……とにかく、村に戻ってみましょうよ」


 そう言って、オレたちは急ぎ足で村へと歩き出した。


 ◇◆◇


 オレたちが村に着くと、飛翔艦は村外れにある空き地の上空に停泊していた。

 その飛翔艦は流線型の真っ赤な船体、オレがイメージする無骨な軍艦とは真逆の見た目をしている。

 広場には上陸用の飛翔艦が数台停まっていて、その周りに村のみんなが集まっている。


「あっ、あの村長と話してるの誰だろう?」


 そこには、腰まで伸びた金髪にエメラルドグリーンの瞳が印象的な女性がいた。


「軍服を着てるし、連邦軍の人だろうな」


「ねぇスカイ、もっと近くで見てみよ!」


 ◇◆◇


「突然押しかけてしまい申し訳ない」


「いえいえ、とんでもございません」


「私はリヴェリア自由都市連邦所属、第三艦隊旗艦〈ルビナス〉の艦長レイナ・ヴァルモンドです」


 その軍人はレイナと名乗った。

 へぇ、あの赤い飛翔艦の艦長なんだ。


「わしは、このハイノ村の村長ムライですじゃ。して、この度はどのようなご用でしたかな?」


「ああ、その件なんだが少し落ち着いた場所で話せないですか?」


 レイナ艦長はそう言って広場に集まった村人を見渡す。


「そうですな、ではわしの家にご案内いたします。こんな辺鄙な村なので軍人さんは珍しいものでな。申し訳ないですじゃ。」


「いえ、ご配慮感謝します」


 そう言って、レイナ艦長は二人のお供を連れて村長宅に入って行った。


 ……その時、レイナ艦長がこちらをチラッとみた気がしたけど、気のせいだよな。


「ねえねえ、もうちょっと近くで飛翔艦、見てみない?」


「ああ、行ってみよう」


 ――近づいてみると、その大きさに改めて驚かされる。


「近くで見ると、やっぱりすごく大きいね……!」


 二人で、空に浮かぶ飛翔艦をしばらく見上げていた。


「一度でいいから、乗ってみたいな」


「スカイって、ほんと飛翔船が好きよね」


 すると、少し離れたところで上陸用の飛翔艦を整備していた、作業着姿で五十代後半くらいの、白い顎髭を蓄えたおじさんが声をかけてきた。


「おっ、きみは飛翔士志望かな?」


「えっ、はい! そうです!」


「そっか、いいよなぁ、飛翔船は――夢がある!」


 おじさんは、船体の上で作業を続けながら、にこっと目尻を下げて笑った。


「おじさんは、飛翔士だったんですか?」


「んー……まあ、昔ちょっとな。今はこうして、船の整備を任されておるがな」


 工具をくるっと回して、胸ポケットに収める。手際がいい。


「飛翔士って、やっぱり大変ですか?」


 少し緊張しながら聞くと、おじさんはふふんと鼻を鳴らした。


「そりゃあな。風の流れは読まなきゃいかんし、エンジンの癖も覚えなきゃいかん。でもな──」


 と、おじさんは空に浮かぶ飛翔艦を、ふと見上げる。


「一度でもあの空を翔べば、もう地上じゃ満足できなくなるぞ。そういうもんだ……」


「まっ、きみも頑張れよ!」


 そう言って、軽く手を振るとおじさんは作業に戻った。


「はい! ありがとうございます!」


 それを聞いて、今まで以上に飛翔船で空を飛びたいという気持ちが強くなった。

 それから、少しの間飛翔艦を眺めてから家に帰った。


 ◇◆◇


 家に戻ったオレたちは、マインの母さんが差し入れてくれた夕食を囲んで、ほっと一息ついていた。


「ねぇ、あの艦長さん、すっごくかっこよかったよね。できる女って感じで、同じ女性として憧れちゃうなぁ」


「女性で軍艦の艦長って、けっこう珍しいな」


 そのとき、ノクティがふいに口をはさんだ。


「そういえば……お前、気づいたか? あの女、スターリング《指輪》を着けていやがったぞ」


「えっ? 本当に?」


「ああ、間違いない」


「ってことは……レイナ艦長にも、ノクティみたいな精霊がついてるのかな?」


「おそらくな。ただ、どちらにせよ俺様よりは劣るだろうがな」


 ノクティは自信満々に胸を張って、どや顔を決める。


「うんうん、ティーちゃんが一番だよねぇ〜」


 マインがくすっと笑いながら頷いた。


「とりあえずさ、指輪のことはひとまず置いといて……明日、村長に何があったのか聞いてみよう」


「うん、そうだね。朝ごはん食べたら、行ってみよ」


 ◇◆◇


 ――翌朝、三人で朝ごはんを食べていると、不意に家の戸を叩く音がした。


「スカイ、おるかの? お前さんに話を聞きたいという方がおってな。会ってくれるか?」


「は、はい! 大丈夫です!」


 オレは慌ててノクティに指輪へ戻ってもらい、急いで身なりを整えると、玄関の扉を開けた。

 そこに立っていたのは、村長――そしてその隣に、キレイなエメラルドグリーンの瞳に、陽光を思わせる金色の髪――。

 昨日、見かけたあの女性艦長が、そこに立っていた。

最後までお読みくださいありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、評価ポイント、お気に入り登録をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ