表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星雲の飛翔士 〜アーティファクトの力で世界を巡る〜  作者: いぬは
【第6章】 《カレンポート騒乱編》
52/60

第47話 ワルマールの尻尾

 ――ワルマールが脱出したのと同じ時刻。


 フードの男は必死に走っていた。


「くそっ! なぜバレた!」


 ここまで計画は順調だったはずだ。

 軍の作戦が失敗した隙に人質を始末し、それで依頼は完了――そのはずだった。

 雇い主からも「問題はない」と告げられていた。


「問題ないだと……ふざけやがって!」


 男は毒づく。


 裏路地の角を曲がり、アジトへ通じる古ぼけた扉を開ける。

 中に入り、もしものために用意してあった最小限の荷物を掴む。

 逃げ切れるはずだった……。


 ――そのとき、男は背後に気配を感じる。


 振り向いた男の目に映ったのは、執事服の初老の男。


「ば、馬鹿な……今まで気配すらなかったはず……」


 押し殺すような声が漏れた。


「ふふふ。最初からいましたよ」


 感情の読めない声が、薄暗い部屋に響く。


「どこから入った……!」


「おや、そんな大声を出せば……外に潜んでいる連中に気づかれてしまいますよ」


「なっ……!?」


 フードの男の喉が凍りついた。


「今、あなたに捕まられては少々都合が悪いのです」


「……助けてくれるのか?」


 わずかな希望を込めて問いかける。


 執事服の男は静かに片手を差し出した。

 その手に縋るように伸ばした瞬間――フードの男の意識は、永遠の闇に沈んだ。


 ◇◆◇


「隊長、しばらく経ちますが……どうしますか?」


 フードの男を尾行してきた追跡部隊の一人が、低い声で指示を仰ぐ。


「偵察の報告は?」


「内部からの物音は一切なし。気配も感知できません」


(休んでいる? いや、この状況でそんなはずがない……!)


 隊長の胸に嫌な予感が走る。


「……まさか。全員、突入だ!」


 号令と同時に扉が蹴破られ、部隊がなだれ込む。

 だがそこにいたのは、すでに絶命したフードの男。

 その顔には、恐怖と絶望を焼きつけた表情が残されていた。


「大使! 追跡部隊より報告――作戦は失敗とのことです!」


 連絡員の悲痛な声が響く。


「なんですって!」


 セリナ大使の口から思わず声が張り上がる。


「詳しい状況を聞かせて。回線を繋いでちょうだい!」


 ◇◆◇


「作戦、どうなってるかな」


「順調に進んでるといいけどな」


 マイルに返事をしたちょうどその時、コックピットの無線が鳴った。


『作戦部隊に告ぐ。実行犯の追跡に失敗――対象は死亡。なお殺害犯は逃走中』


「えっ……!」


 思わず声が漏れる。


「スカイ、どうしよう?」


 マイルが不安そうに言う。


 オレは必死に平静を装い、答えた。


「とりあえず、指示があるまで現状待機だ。殺害犯を捕まえられれば、まだ挽回は可能だ」

「……うん、そうだね」


 そうは言ったものの、胸の奥はざわついていた。

 人質が無事なのは幸いだ。だけどここでワルマールの尻尾を掴めなければ、同じことが繰り返されないとも限らない。


 そこへ、レオンとアヤナからも通信が入る。


「こっちは引き続き見張ってるが、特に変わった動きはねーな」


「こちらも異常なしよ」


「空港の出入りは、まだ禁止されてるんだよな?」


 俺が確認すると、アヤナが答える。


「ええ。一般の船は出入りできないわ。……そういえば、さっき軍の飛翔船が二隻、外へ出て行ったくらいね」


 船の出入りは軍船だけか。

 となると、殺人犯はまだカレンポートに潜んでいる? いや――。


「その飛翔船に、怪しいところはなかった?」


「……そういえば、二隻とも空港から出てきたところを見てないの。その時は、ただ見逃しただけかと思ったんだけど」


 アヤナの言葉にオレは眉をひそめる


「空港からはその時間に出発した船は無いぜ」


 レオンの報告が追い打ちをかけた。


「しかも二隻とも、軍基地とは逆。北東方向へ飛んでいったのを確認してるわ」

 アヤナの声が重なる。


 オレは二人に礼を言い、セリナ大使に通信を繋いだ。


「セリナ大使、すみません。少しお聞きしたいことがあって。今、お時間大丈夫ですか?」


「ええ、短い時間なら大丈夫よ」


「ありがとうございます。実は空港の出入りについてですが……軍の船も警備と同じようにチェックしているんですか?」


「警備船はこちらの管轄だから確認しているけれど、軍の飛翔船まではノーチェックね」


「では、軍に飛翔船の入出港記録を照会してもらうことはできますか?」


「もちろんできるけれど……どうして? 何か気になることでも?」


「はい。もし犯人がカレンポートから逃げるなら、飛翔船を使うしかないはずです。ところが今は一般の船は入出港できない。つまり――利用できるのは警備か軍の船だけ。

 ……そして、あの時間に空港を出入りしたのは、二隻の軍船だけなんです。それも空港からじゃなく、どこからともなく現れたと言うんです」


「なるほど……怪しいわね」


 大使の声が低くなる。


「もちろん、まだカレンポートに潜伏している可能性もあります。ですが念のため、その軍船を調べてほしいんです」


「わかったわ、すぐに調べてみるわね」


 通信を切ると、すぐにマイルが話しかけた。


「追跡することになるかもしれない。センサーの調整を頼む」


「りょうかい」


 ――ほどなくして、セリナ大使から追加の連絡が入る。


「スカイ君、お手柄よ。二隻は正式な軍の所属機ではあるけれど、飛行命令は出ていないそうなの」


「つまり、犯人である可能性が高いってことですね」


「ええ。こちらでも追跡部隊を至急手配するわ。あなたたちはまず先行して動いてちょうだい。危険を感じたら深追いはしないで」


「了解です」


 オレは通信を切り、レオンとアヤナに合流を指示した。

 ついに、ワルマールの尻尾を掴んだ。絶対に見つけ出してやる。


 オレは操縦桿を握る手に力を込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ