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星雲の飛翔士 〜アーティファクトの力で世界を巡る〜  作者: いぬは
【第6章】 《カレンポート騒乱編》
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第45話 作戦前夜

 人質救出作戦は、軍の作戦と並行して行われることになった。

 それまでに、警備体制の把握と、正確な拘束場所の特定が必要だ。


 俺たちはマイセン商会の応接室で、改めて救出計画の詰めをしていた。


「まずは、二人がどこに捕まっているかを突き止める必要があるな」


「でも、あの施設のセキュリティを見た限り、素人の俺たちだけで突破するのは無理だろ」


 レオンの言葉に、他のみんなも頷く。


「それに関しては、儂からカレンポート大使に要請しておこう」


 マイセンさんが専門家を手配してくれるという。


「そうなると、オレたちに出来ることはあまり残ってないな」


「そうね、救出自体はプロに任せたほうがいいわ」


 アヤナがそう言ったとき――部屋の扉が開いた。


「お邪魔するわね」


 係員に案内されセリナ大使が部屋に入ってくる。


 オレたちは、これまでに集めた情報を改めて報告した。


「なるほど、そんな場所に……分かったわ。そちらは私に任せてちょうだい」


 セリナ大使はオレたちの報告を聞くと、すぐに協力を申し出てくれた。


「ありがとうございます! それで、セリナ大使はどうしてここに?」


「それなんだけどね。じつは、あなたたちにお願いしたいことがあるの」


 うかがうような目でこちらを見る。

 オレが頷くと、セリナ大使は少し声のトーンを落として話しだす。


「ありがとう。実はね、今回の軍の作戦なんだけど、ワルマール商会側に漏れている疑惑があるの」


「なんじゃと!? 大使、それはどういうことじゃ?」


 マイセンさんも含め、全員が驚きの表情を見せる。


「じつは、少将が“今回の作戦は必ず成功させねばならん!”と言って作戦の動員規模を拡大したの。その際に間者が紛れた可能性があるのよ。先日、別件で“スリの男”を捕えたんだけど、その男が持っていたメモの数字が、作戦の日時・座標と一致していたの」


 セリナ大使の眉間に、深い皺が刻まれる。


「じゃあ、作戦は中止なんですか?」


 マイルが不安そうに尋ねる。


「いいえ。念のため軍には報告しておいたんだけど、不確かな情報で軍の作戦を中止させるのは難しいわ」


「確かに、聞いた感じだと確証が持てないですね。その捕まえたスリの男は、なんて言ってるんですか?」


「酒場で酔っ払いの男から盗ったって言ってるわ。残念ながらワルマール商会に通じる証拠も出てきてないのよ」


「そうですか……。それでオレたちに手伝って欲しいことって何ですか?」


 オレの問に、セリナ大使は申し訳無さそうな顔になる。


「あなたたちには、最悪軍の作戦が失敗した際の、“尻拭い”をお願いしたいのよ」


「軍の尻拭いですか……具体的には?」


 少し低いトーンで聞き返す。


「もしワルマール商会が情報を掴んでいるとしたら……今回の作戦は失敗する可能性が高いわ。

 でも、向こうはまだ我々が人質の居場所を突き止めたことを知らないはずよ。

 だからこそ、こちらは救出作戦を最優先する。

 人質さえ解放されれば――軍の作戦がどう転ぼうと、ワルマールは窮地に立たされることになる」


「なるほど。そうなれば、ワルマールは必ず逃走しようとする……」

 アヤナが不安そうに口を開く。


「そうよ」大使は短く肯いた。


「ただ問題は、今現在ワルマールの所在が掴めていないことなの」


「手がかりは――全くないんですか?」


 大使の視線が俺に向く。しばし黙ったあと、深い溜息を漏らした。


「昨日の時点でカレンポートにはいたの。でも、今朝から足取りが途絶えているのよ」


「なるほどの……今回の作戦がバレているなら、身を隠した可能性もあるのか」


 マイセンさんが低く唸る。


「だから、人質を救出した後に、わざと誘拐犯を逃がすつもりなのよ」


「え? 犯人をわざと逃がす?」


「ええ。そうなればワルマールはウィークポイントである誘拐犯の始末に動く可能性が高いわ。そして、その実行犯は高確率でワルマール商会に近い人物よ。新たに信用できる人物を雇う時間的余裕はないですからね」


 セリナ大使の言うとおり、その可能性は高いように感じる。


「そこを抑えて、商会との関係とワルマールの居場所を吐かせるわ。その作戦に、あなたたちにも参加してほしいの。どうかしら?」


 オレはみんなの顔を見回す。全員真剣な顔で頷く。


「わかりました。まかせてください!」


 こうして、オレたちは翌日に実行される囮作戦に参加することになった。

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