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星雲の飛翔士 〜アーティファクトの力で世界を巡る〜  作者: いぬは
【第6章】 《カレンポート騒乱編》
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第42話 交差する疑惑

 ――宿に戻ったオレたちは、空港で集めた情報を机の上に広げた地図に書き込んでいった。


「えっと、ここが積み荷がなくなった船の帰港地」


「そして、こっちは焼け焦げた小型船が帰ってきた航路ですね」


 マイルが色ペンで印をつけていく。

 アヤナはメモを読み上げながら、次々と情報を書き加えていく。


「同じ方角から帰ってきた船が多いって証言も……この辺りね」


 地図の上に赤や青の印が集まっていく。

 バラバラに見えた小さな出来事が、線でつながった瞬間――。


「……おい、見ろよ」

 レオンが唸る。


 その線は一点で交差していた。

 カレンポートの北西、雲海の中に浮かぶ無人島。


「……偶然にしては出来すぎだな」


「そうですね。全部この島の周辺を通過した船です……」


 アヤナの声にも緊張が混じる。


 ◇◆◇


 ――翌朝。

 オレたちは協会に向かい、空港で拾った島の情報を確かめることにした。


「えーと、この島ですね? 少しお待ちください」


 職員が奥へ消えていく。


 と、その時――。


「あっら〜、昨日の生意気な子たちじゃない?」


 聞き覚えのある声に振り返ると、例の三人組探索者がニヤニヤして立っていた。


「協会で情報収集かしらぁ? どうせ新しい情報なんて出てこないと思うけどねぇ」


 女探索者がわざとらしく笑みを残し、仲間とともに去っていく。


「ほんっと、感じ悪!」


 マイルが思わず声を荒げる。


「落ち着いて。あの人たち、わざと挑発してるんです」


 アヤナも眉をひそめる。


 ちょうどその時、職員が戻ってきた。


「お待たせしました。その島ですが……名義上は()()()()()()()の所有地となっています。強い乱気流と磁気嵐が発生しやすいとのことで、調査の記録もほとんど残っていませんね」


(ワルマール商会……?)


「あの、ワルマール商会ってどんな商会なんですか?」


 オレが尋ねると、職員は言葉を濁しながら答える。


「最近急速に成長した新興の大商会です。ただ……強引な取引で中小商会を潰したとか、吸収したとかあまりいい噂は聞きませんね。あと、あくまで噂ですが裏の組織と繋がりがあるとか……」


 職員の顔には渋い色が浮かんでいた。


(裏の組織か……)


 礼を言って協会を後にする。


「ねえ、どうするの? 他人の島を無断で調査するわけにはいかないよね……」


 マイルが不安そうにオレを見上げる。

 答えを探しながら迷っていると、レオンが口を開いた。


「なあ、マイセンさんのところに行ってみねぇか? 会えるかどうかは分からねーけど、同業者なら商会の裏事情に詳しいだろ? それに――人質の件も、確かめておきてぇし」


 オレはみんなの顔を見回す。誰も反対する者はいない。


「よし……ダメ元でも行ってみよう」


 そうしてオレたちは、中央通りにある店に向かう。

 店の中に入り、受付の女性に事情を伝えた。


「マイセンさんにお話があって……」


「申し訳ございません。主人はただいま会談の最中でして」


 やっぱり駄目かと諦めかけた時、受付の奥から従業員の話し声が聞こえてきた。


「……ねえ、あれって大使のセリナ様じゃない? やっぱり例の件かしら」

「ちょっと、声が大きいわよ!」


 オレたちは思わず顔を見合わせる。

(大使のセリナさん……? カレンポートの大使がここに?)


「あの、お客ってカレンポート大使のセリナさんですか?」


 受付の女性は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに首を振った。


「申し訳ありません。お答えできません」と断られてしまった。


「やっぱり、急に来ても無理よね……」

 マイルが肩を落とす。


 そのとき、アヤナが一歩前に出て受付に名乗った。

「私はアヤナ・トキハラと申します。そして私たちは、クラン《アストラル・ナイツ》に所属しています。お役に立てるはずです」


「えっ……トキハラ? まさかトキハラ重工の……! それに、アストラル・ナイツ!?」


 受付の女性は慌てて姿勢を正し、深く頭を下げた。


「しょ、少々お待ちください!」


 そう言うなり、彼女は小走りで奥へ消えていく。


 残されたオレたちは思わず顔を見合わせた。


「アヤナ……さすがお嬢様だな」


 レオンが感心したように口笛を吹く。


「本当はあまり家の名前を使いたくなかったんだけど……」


 アヤナは複雑な表情で視線を伏せた。


 ――数分後。

 奥の扉が開き、先ほどの受付の女性が戻ってきた。


「アヤナ様、そして皆様。主人がお会いになるそうです。……ただし、お客様もご一緒ですが、よろしいでしょうか?」


「もちろんです」オレは即座に答える。


 女性に導かれ、応接室へと進むとそこにいたのは――。


 凛とした雰囲気をまとい、ブルーのドレスを着た女性。

 カレンポート大使、セリナさんがソファーに座っていた。

 そして彼女の隣には、マイセンさんが深刻な顔で座っている。


「二人ともお久しぶりね。――まさか、あなたたちが“アストラル・ナイツ”に所属しているなんて驚いたわ。それにトキハラ重工のご令嬢まで一緒なんて。……あら、あなたは、もしかしてヴァルガス家の関係者?」


 セリナさんはオレたちを見回しそう話しかけてきた。


「ええ、レオン・ヴァルガスです」


 レオンが名乗ると、セリナさんは意味ありげに目を細めた。


「やっぱりね、ヘクターに目元がそっくりだわ」


 そう言って懐かしむように微笑む。


「さあ、そんな所に立っていないでこちらに座ってくだされ」


 マイセンさんに勧められ、みんなでソファーに座る。


「それで、今日は何か話したいことがあるそうじゃが」


 そう促され、ここに来た事情とこれまでに得た情報を二人に説明した。

 それを、二人は黙って聞いていた。


 そして説明を終えると、部屋に重苦しい沈黙が落ちた。

最後までお読みくださいありがとうございます。

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