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星雲の飛翔士 〜アーティファクトの力で世界を巡る〜  作者: いぬは
【第1章】 《星降りの儀式》
4/60

星の記憶:EP01 深淵

 ― 星歴2025年 ―


「艦長、〈惑星アステール:Ω018754〉からの住民収容がすべて完了しました」


「……よし、ご苦労だった」


「全艦に告ぐ。恒星間移民船のワープ完了をもって、アマテラス作戦を実行する」


 眼下に広がるアステールの姿は、もはやかつての面影を残していなかった。

 大地の九割が、黒く染まった闇に覆われている。残された緑も、じわじわと侵食されつつある。


「……これが、死にゆく星の姿か……」


「奴らに狙われた惑星は、例外なくこうなる。地表は漆黒に染まり、生きとし生けるものは奴らを除いて、すべて死に絶える」


 静かに広がるその闇は、まるで星そのものが腐敗していくようだった。

 かつて人々が暮らしていた文明の痕跡も、今はその輪郭すら判別できない。


「……何度見ても、酷い光景ですな」


 移民船団が次々とワープゲートを通過し、光の中へと消えていく。

 そのときだった。


「艦長! 惑星地表から高エネルギー反応を検知!」


「なにっ!? 全艦、シールド最大展開!」


「来ます!」


 バギィィィィン!


 艦体が大きく揺れ、鋼鉄が軋むような振動音が船内を満たした。


「右舷シールドに直撃! 残存シールド92パーセント!」


「地表各地から複数のエネルギー反応! 続々と上がってきます!」


 センサーのモニターには、いくつもの赤い点が表示されている。


 ドゴォン! ドガゥゥゥン!


「移民船A01304、大破!」


「E01135、C00233――両艦も撃沈されました!」


 次々と報告が重なる。


「……ワープ準備中の隙を突かれたか……!」


「作戦を変更する。アマテラス作戦、即時実行!」


「〈グラヴィティ・ノヴァ〉発射準備に移行!」


「システム起動……惑星破壊モードへ移行します」


 警告音が艦内を満たし、モニターには赤く点滅する文字列が躍る。


「シールド残り78パーセント!」


「ターゲットロック完了、全艦同期!」


「シールド残り51パーセント!」


「発射準備、完了しました!」


「よし、前面にすべてのシールドを展開せよ!」


『全艦〈グラヴィティ・ノヴァ〉発射!』


 眩い閃光とともに、艦隊が一斉に攻撃を放つ。

 無数の重力圧縮砲が流星のように惑星へと降り注ぎ、地表を貫く。


「全弾命中! 惑星コアに到達しました!」


「……コアが、崩壊します!」


 光が宇宙空間を埋め尽くす。

 遮光シールド越しでも、その輝きは目を焼くようだった。


 やがて光が収まると、かつて惑星だった場所には、ただ瓦礫と塵だけが漂っていた。


「……惑星コアの破壊を確認。作戦、成功です」


「よくやった。全艦、損傷艦の救援に向かえ。警戒態勢は維持!」


「今回は……本当に危なかったですね、艦長」


「まさか、地上からここまでの反撃能力を持っているとはな。至急、艦隊本部に報告を……」


 ――その瞬間。


「艦長! 前方宇宙空間に、超高エネルギー反応を多数確認!」


「なに!?」


 ドバギィィィン!!


「直撃! シールド残り36パーセント!」


「全艦、戦闘態勢。攻撃開始! タイミングは各艦の判断に任せる!」


「ダメです艦長! 攻撃、まったく通用しません!」


「くそっ……なんてやつらだ……!」


 ドバギィィィン!!


「シールド残り19パーセント!! もうもちません!」


 警報が響き渡り、艦内の照明が非常灯に切り替わる。


「……ここまでか」


「全クルーに告ぐ。これより艦を放棄する。全員、脱出ポッドへ移動せよ!」


「艦長……お供します」


「すまんな、副長……。少しでも、時間を稼ごう」


 ◇◆◇


 ― 星歴2035年 ―


『深宇宙艦隊本部より通達。〈惑星アステール:Ω018754〉への航路は、当面閉鎖する』――。


 かつて、アステールと呼ばれたその星。


 今では、砕け散った惑星の残骸と、破壊された船が残る墓場と化していた。


 そこに動くものは、何もない――

 ただ一つ、“それ”を除いては。


 宇宙よりも深く、光すら届かぬ漆黒の“深淵”が、そこに静かに息づいていた――。

最後までお読みくださいありがとうございます。

本編は、この物語の核心に迫るエピソードです。今後この謎に満ちた世界がスカイたちとどう関わっていくのか、お楽しみに。

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