第29話 仲間との再開
手がかりを見つけたオレたちは、高鳴る鼓動を抑え、一度宿屋に戻って作戦会議を開いた。
「あの子どもたちだけど……。さっきも言ったけど、騒ぎを起こして目立つのは避けたい」
「そうだな。ファクトリーに気づかれたら元も子もない」
レオンが腕を組み、真剣な顔でうなる。
「だけどよ、声を掛けられないんじゃ居場所を聞き出せないぜ?」
「それなんだけど――」
オレは少し息をつき、全員を見渡した。
「明日もあの場所を見回ろうと思う。それで……悪いけど、子どもたちの後をつけさせてもらう」
「尾行か。まあ、確かにそれしか手がないな。でもよ、あいつらがまた来る保証はあるのか?」
「ああ、数日のうちにはきっと来る」
「なんでそう言い切れるんだ?」
「今日一日この町を歩いて気づかなかったか。子どもが遊べる場所をほとんど見かけなかった。実際に遊んでるのを見たのは、あの公園だけだ」
「……そういえば、そうだな」
レオンが納得したようにうなずく。
「町の人も言ってたけど、この町は最近急激に人口が増えて、空き地は片っ端から家や店に変わってるみたいだ。だから、おそらくこの付近に大きな公園はあそこくらいしか残ってないんだと思う」
「……それに子どもの頃はオレたちも、お気に入りの場所ってあっただろ?」
「なるほどね。確かにそう考えれば、またあそこに来る可能性は高いかもね」
マイルも同意してくれた。
「もちろん絶対とは言えないけど……自信はある」
そう言い切ると、場に漂っていた不安が少し和らぎ、自然と前を向く空気に変わった。
――翌日。
オレたちは昨日の打ち合わせどおり、公園近くのベンチに腰掛け、あの子どもたちが来るのを待っていた。
それから一時間もたたないうちに――二人は現れた。
(やっぱり来た!)
オレたちは視線を交わし、無言でうなずき合う。
気づかれないように気を配りながら、その姿を見張った。
今日は昨日と違って、友達らしき子どもが二人一緒だ。
四人はボールを蹴り合ったり、おやつを分け合ったりして無邪気に遊んでいる。
その様子を見ていたノクティが、キラキラした目で「なあ、俺様も腹減った」と駄々をこねだす。
マイルは少し困った顔をしつつも、持ってきたサンドイッチを食べさせている。
――やがて、子どもたちの母親と思われる女性が現れ、四人に声をかけた。
一言二言話すと、友達の二人は手を振って母親と帰っていく。
そして――残った“ターゲット”の二人も、昼食に戻るのか来た方向へと歩き出した。
(……よし。ついに尾行開始だ!)
オレたちは静かに立ち上がり、互いにうなずき合って子どもたちの後を追った。
足音を消すように歩くたび、心臓の鼓動がやけに大きく響く。
しばらく進むと、子どもたちは町の中心から少し外れた場所にある、一軒の家へと入っていった。
(いよいよ……だな)
胸の奥でつぶやき、オレは玄関へと歩み寄る。
一拍置いて、緊張で汗ばむ手をドアに当て――コン、コン、とノックした。
「はーい、少し待ってくださいね」
中から女性の声が返ってきた。柔らかい響きなのに、妙に胸を締めつけられる。
ほどなくして、玄関が開く。
姿を現したのは、二人の母親なのだろう。優しげな雰囲気をまとった女性だった。
だが、オレたち三人の姿を見るなり、その表情が一瞬だけ固くなる。
「あら……どちらさま?」
『オレたちはアヤナの友達です』
オレはためらわず答えた。
その瞬間、女性の顔にかすかな緊張が走った。
――やっぱりだ。明らかに何かを知っている。そう確信できた。
「え、えっと……アヤナさんですか? うちにそんな名前の女性はいませんよ?」
動揺を隠そうとする声。だが、その不自然さが逆に決定的な証拠になっていた。
「アヤナがファクトリーから身を隠しているのは、知っています」
オレは一歩踏み出し、まっすぐ彼女を見据える。
「オレたちは彼女と同じ学院に通う仲間なんです」
「わたし……アヤナちゃんの力になりたいんです!」
マイルが続けて必死に訴える。
「仲間を助けるのは当たり前だからな!」
レオンの声も熱を帯びて響いた。
女性はしばし視線を泳がせ、迷うように言葉を探す。
「そ、そんなこと言われても……」
――その時だった。
二階へと続く階段の上から、はっきりとした声が響いてきた。
「ノエルさん。その人たちは……私の友達です」
その声に、オレたちは一斉に顔を上げた。
階段の影から現れたのは――ずっと探していた仲間、アヤナだった。
「お嬢様!」
ノエルと呼ばれた女性が慌てて呼びかける。
「もう、“お嬢様”じゃありませんよ。……ノエルさん、どうかこの人たちを家に入れてあげてください」
柔らかく、それでいて揺るぎない声だった。
「アヤナちゃん!」
マイルが駆け寄り、勢いよく抱きつく。
「アヤナちゃん……っ。うぅ、よかった、本当に無事で……!」
マイルの目から大粒の涙がこぼれる。その肩にそっと手を置き、アヤナは少し困ったように、それでも優しく微笑んだ。
「心配をかけて……ごめんなさい、マイルさん」
それからオレとレオンの方に向き直り、深く頭を下げる。
「みなさんも……本当に、ご心配をおかけしました」
その顔には微笑みと一緒に、薄っすらと涙がにじんでいた。
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