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星雲の飛翔士 〜アーティファクトの力で世界を巡る〜  作者: いぬは
【第1章】 《星降りの儀式》
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第3話 星降りの儀式と遺物の目覚め

「いやぁぁぁっ! 放してぇぇぇ!」


「危ないよ、マイル! 崖から落ちちゃう!」


 泣きじゃくりながら崖に身を乗り出すマイルを、リンが必死に押さえつけていた。


「マリ、どう? 何か見える?」


「だめ、木が邪魔で……」


 そのときだった。聖域から駆けつけてきたガイが、こちらの騒ぎに気づいて近づいてくる。


「おーい、何やってんだ、お前たち?」


 リュークがこれまでの経緯――ナイトベアとの遭遇、スカイの囮行動、崖からの落下までを説明する。


「なんだって!?  スカイのやつ……」


 ガイは驚きと悔しさの入り混じった表情を浮かべた。

 すぐそばで、マイルが肩を震わせて泣き続けている。誰も言葉をかけられず、ただ彼女のすすり泣きが静かに響く。


 ――そのとき。


「ぉーぃ……ぉぉおーい……!」


「スカイ!?」マイルが顔を上げた。


 全員が一斉に谷底へ目を向ける。


「スカイなの!? 大丈夫なの!?」


「ああ、ナイトベアは死んだよー」


「スカイ……っ、よかったぁ……」


「他のみんなは大丈夫ー?」


「こっちは、スカイのおかげで全員無事だよー」


「おいスカイ! あんな高さから落ちて、よく生きてたなー」


 ガイが崖下に向かって叫ぶ。


「ああ、運良く木の枝に引っかかって助かったよ」


 星石の不思議な能力のことは秘密にしておいた。

 こんな能力があるなんて聞いたこと無いし、騒ぎになっても嫌だから。


「どうだ? こっちに登ってこれそうかー?」


「いや無理っぽい。だから、歩いて登れそうな場所を探すよ。みんなは先に聖域で待っててくれー」


「了解だ! 気をつけろよー」


「スカイ気をつけてねー」


 ――さて、とにかく日が沈む前に合流しないとな。

 まずは聖域側の崖沿いを歩いて、登れそうなルートを探そう。


 ◇◆◇


 歩き始めて一時間ほどたったころ、足元に瓦礫のようなものが散らばっているのに気づいた。

 どこか人工的な雰囲気があって、資料で見た古代遺跡とは少し違うような……。


(まさか、まだ誰にも発見されてない遺跡か……?)


 両親がいたら、大喜びしただろうな……。


「とりあえず、ちょっと休憩するか」


 近くの岩に腰をかけ、あたりを見回す。

 もしかしたら、ここにもかつて人が住んでいたのかもしれないな。そんな思いが頭をよぎる。

 ふと、崖の岩壁に目をやると、何かがゆらいだように見えた。


(あれ……? 幻覚じゃないよな?)


 気になり、揺らめく壁に近づこうとしたそのとき――。


『いらっしゃい――ませ。こちらは――記録セクター0-3-0-4――』


『プラネ■■■ラ■センス――を確認――す』


「えっ!?」


 どこからともなく響く不明瞭な音声。

 次の瞬間、首にかけている両親の星石が光り始めた。

 そして突如、壁の揺らぎが消える。そこに現れたのは、斜めに傾いた金属製の扉。


『深宇宙■■■■■――のIDを確認しました。どうぞ――お入りください』


 音声はかすれて聞き取りづらいが、たしかにそう聞こえた。


(両親の星石と関係があるのか?)


「何か手がかりがあるかもしれない……行ってみよう」


 勇気を振り絞って、扉の中に足を踏み入れる。


 中は傾いたままの構造で、薄暗いオレンジ色の光が点滅している。

 部屋の中央には円柱型の大きな装置があり、その周囲にはモニターと椅子がずらりと並んでいた。


(これ……コックピット? いや、違う。何かの観測室か?)


 モニターに触れてみたが、反応はない。

 部屋の奥にはもうひとつ扉があるが、内側からは開かなかった。


 探索を続けると、部屋の隅にいくつかの金属製の遺物が落ちているのを見つけた。

 見た目は五センチ四方の立方体を半分にしたような形で、中央に直径一センチ程度の丸い窪みがある。

 もっと詳しく調べようと近づいた時、胸元がほんのりと光っているのに気づいた。


(……あれ? また星石が光ってる?)


 星石を手に取り確認すると、やはりほのかに明滅している。


(周囲の何かに反応してるのか?)


 すると幾つも落ちている遺物の中に、星石に連動してほのかに明滅している、他と違って“完全な立方体”をしてるものを発見した。


(この遺物だけ他と形が違う……それに星石に反応してるよな?)


 拾い上げようと身をかがめ、そっと手に取った時。


「……ピピ、ロックを解除します」


 部屋の奥から、高い女性の声が聞こえた。


(まさか……奥の扉!?)


 急いで扉の前に戻ると、「ピ、ピッ」と電子音が鳴り、自動で扉が開く。


 ――その先は真っ白な部屋だった。壁そのものが淡く発光していて影ひとつ無い空間だ。


 中へ入ると、また声が響く。


「中央にお進みください」


「誰かいるのか……?」


「中央にお進みください」


 無機質な声が繰り返される。

 一瞬ためらったものの、オレは言われるままに中央へと進んだ。


「それでは、〈受信地〉へ転送します」


 足元に光のリングが幾つも現れ、まばゆい光に包まれる。

 次の瞬間、視界が真っ白になった――。


 ◇◆◇


 ふわりとした浮遊感のあと、徐々に視界が戻ってくる。


「……ここは、どこだ!?」


 部屋の中だったはずなのに、気がつけば見知らぬ屋外に立っていた。


(〈受信地〉って言ってたけど……ここがそうなのか?)


 見回しても、どこにも見覚えはない。戻る道も、方向もわからない。


「困ったな……どっちへ行けば……」


「スカイ!」


 声がした方向を振り返ると――そこに、マイルが立っていた。


「スカイ!」


 彼女が駆け寄ってきて、オレにしがみつく。


「無事でよかった……ほんとによかった……!」


「ああ、ごめん。心配かけて」


 わずか数時間だったはずなのに、何日も離れていたような気がした。

 ほどなくして、他の仲間たちもオレたちに気づき、駆け寄ってくる。


「スカイ、おかえり!」


「ただいま!」


 オレは、ようやく――聖域にたどり着いたのだった。

 その後、シモンからは何度も謝られた。


「みんな無事だったんだから、気にするな」


「うん、ほんとごめん、ありがとう……」


 ――みんなが落ち着くのを待って、オレは谷底での出来事を説明した。


「崖下に遺跡があったなんてな」


「で? これがその金属の遺物か」


 リュークが興味深そうに手に取る。


「なるほど……見た目は鉄っぽいけど、やけに軽いな」


「ホント? ボクにも触らせて!」


 シモンが興味深そうに手に取る。


「おぉ……ほんとだ軽い。なんだろうこれ、鉄じゃないね?」


「これを売れば商売になるかも!」


「売らないってば!」


「とにかく、いろいろあったけど、全員無事に聖域まで来れてよかったな」


 リュークがまとめに入ると、みんな頷いた。


「……あれ? そういえば、ガイの姿が見えないけど」


 周囲を見渡すと、森の中からガイガ出てくる。


「ここにいるぜ! いい鳥が獲れたんだ。せっかくだから、飯でも食いながら話そうぜ」


「やったー! 私、お腹ぺこぺこ〜!」


「じゃあ、わたしが料理するね」とマイル。


 料理ができない組は薪拾いと火起こし担当だ。


 ◇◆◇


 料理が完成する頃には、あたりはすっかり夜になっていた。


「お待たせ! あまり凝ったものは作れなかったけど、鍋にしたよ!」


「わーい!」


「めっちゃ美味しそう!」


「よっしゃ、食うぞー!」


 それぞれ器を手に取り、一斉に食べ始める。


「……うん、美味しい!」


「最高だな、これ!」


 やっぱり、マイルの料理は美味しい。みんなにも好評だ。

 お腹も膨れた頃、リュークが話を切り出す。


「さて、今後の予定を決めようか。まず、星降りの儀式だけど……星石、全員持ってるな?」


 リュークの問いかけに、みんなが頷く。


「村長の話だと、時間になると〈星の精霊〉が現れて、導いてくれるそうだ」


「なあ、その精霊ってほんとにいるのかよ?」


「……まあ、その時になればわかるさ」


「そして儀式が始まると、空から〈星の力〉が降ってきて、星石にクラスの力が宿るらしい」


「スカイはやっぱり、飛翔士でしょ?」


「ああ、もちろん!」


「マイルは何のクラスになりたいんだ?」


「わたしは……スカウトかな」


「へぇ、意外。てっきり料理人のクラスかと思ってたよ」


「料理は趣味よ」


 みんな、それぞれがなりたいクラスの夢を語り、その声が聖域の夜に溶けていった。


 ◇◆◇


 やがて、儀式の時刻が近づいた。


「よし、そろそろだな」


 どこから精霊が現れるのか――みんなの視線が星空へと向く。

 そのとき、夜空に一筋の光の帯が走った。

 光の帯が空から降り注ぎ、地面に届くとやがて円形に広がっていく。


 そしてその中央に――〈精霊〉が浮かび上がった。


 姿は、羽のついた小さな光の玉。絵本や伝承に出てくるような、人型の妖精とはまるで違う。


「えっ、あれが……?」


「本当にいたんだ、精霊って!」


「なんか、かわいいかも……」


 その光の精霊が、女性のような高い声で語りかけてくる。


<<お待たせしました。それでは、〈受信サークル〉の中へお進みください>>


 オレたちは導かれるまま、光の円の中に入る。


<<それでは、〈スタークリスタル〉を顔の前にかざしてください>>


「スタークリスタルって……星石のことかな」「まぁそうだろうな」


<<続いて、希望するクラスを、スタークリスタルに申告してください>>


 みんなが願いを込めて、星石に向かって話しかけていく。


「飛翔士になりたいです……お願いします!」


<<……確認しました。これよりクラスデータのロードを開始します>>


 天から七本の光の柱が降り注ぎ、それぞれの星石に吸い込まれていく。

 幻想的な光景に、誰もが目を見張っていた。


<<……データのロードが正常に完了しました>>


 精霊はそう告げると、光となって再び夜空へと戻っていった。

 残された静寂のなかで、みんなの星石がふわりと光り出す。


 ――すると飛翔船の操縦方法が頭の中に浮かぶ。

 これがクラスを授かるって事なのか。

 体はとくに変化はない、でもクラスを授かったという確かな確信があった。


 その夜、みんな興奮冷めやらぬ様子でクラスの話を続けていた――


 ◇◆◇


 ――翌朝。


「おはよう、スカイ」


「……おはよう、マイル」


「朝ごはん作ってるから、もうちょっと待っててね」


「ありがとう」


 しばらくすると他のみんなも起きてきて、朝食が完成。いつも通りマイルの料理は最高だった。


 帰り道は周囲に気をつけながら慎重に歩いたけど、白い花は一輪も咲いていなかった。

 出発が早かったこともあって、昼前には村に戻ることができた。


 すぐに全員で村長の家を訪ね、儀式の成功――そしてナイトベアとの遭遇を報告した。

 村長は驚きながらも、みんなが無事だったことを心から喜んでくれた。


 そして、興奮冷めやらぬ様子で、それぞれの家へ帰っていった。


 ◇◆◇


 マインと別れ家に戻ると、おれも自分の家に戻る。


「そういえば、遺跡で拾った遺物のこと……聞き忘れたな」


 ポーチから取り出した遺物を、机の上にそっと置いた。


「……これでオレも、飛翔士か……」


 思わず、顔がゆるむ。


「おい……なにをニヤニヤしてんだ」


 すると、突然声が響く――。


「えっ!? だ、誰!?」


 慌てて周囲を見回したが、誰もいない。


「こっちだ。スタークリスタル《星石》を通じて話してんだよ」


 ま、まさか……星石から……声!?


「よし、まずはその遺物から――中にある〈スターリング〉を取り出せ」


「……」


「おい、早くしろよ!」


「これ……開かないんだよ」


「クラスを得た今なら開くはずだ。やってみろ」


 言われるまま、慎重に遺物を開いてみる。


 ――パカッ。


 遺物は意外なほどあっさり開いた。中には、中央の窪みにぴったりはまった指輪。


「この窪み……指輪を納める場所だったんだ」


「よし、それをスタークリスタル《星石》に近づけてみろ」


 言われた通りに、指輪を星石へと近づける。


「ふぅーっ、やっと出られたぜ!」


「……は!?」


 目の前には、ふわふわと浮かぶ小さな謎の生き物がいた。

 それをオレは、ただ呆然と見つめるしかなかった。

最後までお読みくださいありがとうございます。

次の話「星の記憶:EP01 深淵」は本物語の核心に迫る重要な物語です、ここから広がる謎、伏線を気に入ってもらえると嬉しいです。

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