第二話「模擬戦って聞いてないんですけど!?」
「じゃぁ、模擬戦やりますか!」
「では、お前らには模擬戦をやってもらうぞ〜。軽くでいいからな〜」
教壇でやる気のない声を響かせるのは、担当教師・ボーラス。
「初日から模擬戦!?」
「聞いてないぞ!」
生徒たちが一斉にざわつく中、ボーラスが適当に名簿をめくる。
「よし……グレイ=ワークスと、アーシェ=リーヴェ。お前ら前出ろ」
「えぇ……」
「え? わたし〜? は〜いっ」
(なぜ俺だけ、いつもこうなる……)
グレイが呆れながら教室の中央へ向かうと、アーシェが隣にふわりと並んだ。
「よろしくね〜グレイくん。草、いっぱい生やすから、踏まないように気をつけてね〜」
「なんだその宣言は……」
クラスの注目を一身に浴びながら、ボーラス先生は結界を展開し二人は対峙した。
「準備はいいか〜?じゃあ、始め〜」
ボーラスの気だるげな号令とともに、模擬戦スタート。
アーシェは柔らかく笑みを浮かべると、杖をくるりと回して詠唱に入る。
【めぶけ、めぶけ、我が友たち……咲きほこれ、癒しと守りの庭!】(結界魔法)
床から一斉に芽吹く植物たち。花やツタがうねり、グレイの足元を狙って伸びてくる。
(見た目はほのぼのしてるけど、あの精度と速度……普通に危険だな)
グレイはステップでかわしながら、杖を手にして呟く。
【《マジック・ボルト》】(初級魔法)
ごく小さな光の弾が生まれ、ツタの根元に向かって飛ぶ。命中と同時に、魔力の波が周囲に小さな衝撃を走らせ、植物の動きを一瞬だけ止める。
「わぁ〜すごい!地味だけど、ちゃんと当たってるね〜!」
(“地味”は余計だ)
観戦していた生徒たちは、やや拍子抜けしたような声を上げた。
「なんか……お互いの魔法、控えめじゃね?」
「いや、あの草魔法の子……魔力の流れが尋常じゃない。あれ、フルで解放したらやばいぞ」
「グレイってやつも……無属性なのに、めちゃくちゃ魔力の制御うまくね?」
一方その頃。
アーシェが、ぽそっと呟いた。
「うーん……じゃあ、この子も使ってみよ〜っと」
アーシェは魔導書を読みながら杖から溢れた緑の光を、地面に触れると……
大きな花が咲き、そこから大量の花粉が舞い上がった。
「げ、視界妨害か!?面倒くせぇ!」
咄嗟にグレイは体勢を低くして、自分の足元に魔力を込める。
【《フィールド・キャンセル》】(中級魔法レベル)
魔法領域を中和する“無属性”独自の防御魔法だ。
花粉の効果範囲だけを消し飛ばし、アーシェの魔法を中断する。
「わっ!? 花粉さんがいなくなった〜!?」
「ごめん、俺、花粉症なんだわ」
「ええっ!?そうなんだ〜それはたいへんだ〜!」
(この空気で“ほのぼの”できるお前のメンタルが一番やばいよ……!)
バチバチと交差する植物と無属性の光弾。
火も風も雷も使わず、地味な魔法の応酬……だが、戦いの質は異様に高かった。
ボーラスが、ついに止めを入れる。
「お〜い、そこまで〜! 校舎がツタに飲まれかけてるぞ〜。引き分けな〜!」
結果は、引き分け。
拍手と笑いが混ざる教室の中、アーシェがぴょこんと頭を下げた。
「たのしかったね〜、グレイくん♪」
「……うん。ほんと、いろんな意味で」
(ていうか、あの子がこの調子なら、絶対また巻き込まれる未来しか見えない……!)
その日の午後、寮の案内が始まった。
学園の寮はランク分けされている、同ランクのものは同じ階層になる、庭や食堂は共用エリア。
部屋はランダムで配置され、偶然の要素も強いらしい。
グレイは案内書を見ながら、自分の部屋の扉を開けた。
(やっと休める……今日はほんと、つかれた……)
バタン、とドアを閉めて一息つく。
……しかし、次の瞬間。
「グレイく〜ん!やっほ〜♪」
カーテンをめくると、窓の外からアーシェが顔を出していた。
「お隣さんだったんだね〜!すっごい偶然だね〜!」
「……ぐっ」
(終わった……俺の平穏、初日で終了……!)
と真顔になって立ち尽くしていた
原初の魔導士の設定・2
なぜ魔法学園に来たのか
理由は簡単!原初の魔導士と呼ばれてた頃まともに青春という青春を送れていないから!(親が離婚したり、妹が病死したりしたから)
次回もお楽しみに!