第十一話「秘密と買い物と不穏な影」
戦闘後
まじで嬉しい
休みの日
maguroyukke心の俳句
戦闘の翌朝。
まだ身体が重く、布団の中でまどろんでいたグレイの耳に、扉を叩く音と元気な声が響いた。
「グレイ〜! 起きて〜! 朝ごはん行くよ〜!」
有無を言わさぬ勢いで扉が開き、アーシェが顔を覗かせた。
昨日の怪我はほとんど治っているらしく、表情も明るい……と思いきや、どこか迷いのような影があった。
「おいおい、人の部屋はノックだけで開けるなって……」
「はいはい、言ってないで早く〜!」
強引に腕を引かれ、結局二人は食堂へ。
テーブルに着いて朝食を食べ始めると、アーシェがスプーンを止めて、真っ直ぐにグレイを見た。
「ねえ、昨日の……あれって、やっぱりそうなんだよね?」
「……何の話だ」
「とぼけないで。グレイ、全属性使えるんでしょ?」
周囲の声が遠くなる。
グレイは一瞬だけ目を伏せ、そして小さくため息をついた。
「……バレたか」
食事を終えると、二人は人目を避けてグレイの部屋へ戻る。
ドアが閉まり、静かな空気の中でグレイはベッドの端に腰を下ろした。
「全部使えるのは事実だ。でも……他のやつには言うな」
「なんで?」
「目立ちたくないんだ。力を見せれば、戦争や権力争いに巻き込まれる。俺は静かに過ごしたい。それだけだ」脳内→(前世がそうだったから)
その声音は冗談一つない、真剣なものだった。
アーシェは唇を噛み、しばし沈黙した後――
「……わかった。グレイの秘密、私が守る」
その瞳には、強い決意が宿っていた。
グレイは短く頷き、軽く笑みを浮かべる。
「助かる」
と笑って返した
そして午後。
「じゃあ今日は休みだし、買い物行こ!」
「は? 急だな」
「昨日は色々あったし、気分転換!」
そんな勢いに押され、二人は学園の購買街へ。
マナポーションや文具を見て回り、アーシェは目についた雑貨を次々と手に取っては袋へ入れていく。
「おい、それ……何に使うんだよ」
「見てるだけで楽しいから!」
「……いや、見てるだけなら買わなくていいだろ」
「買って眺めるのが楽しいの!」
グレイは半ば呆れながらも、その楽しそうな横顔に何も言えなくなる。
夕暮れ、寮へ戻る道。
アーシェが足を止め、袋を抱えたまま振り返った。
「グレイ、ありがとね。秘密も力も……私、ちゃんと守るから」
「……ああ、頼む」
そう答えたグレイの胸には、不思議な温かさが広がっていた。
静かな夜風が、二人の間を優しく通り抜けていった。
……その頃、学園の外れ。
朽ちた森の奥、漆黒のローブを纏った影が立っていた。
「あの小娘……生きて帰ったか。忌々しい」
闇の中、その目が怪しく光る。
「だが、次はそうはいかん。必ず——“器”ごと奪ってやる」
冷たい笑みが、夜に溶けて消えた。
原初の魔導士設定・5
・実は、