#3
ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回は明日に投稿します!
夕日になる前の薄い光が膜をはるよう校舎に張られている。
「おい、人が死んでるぞ…」磯田は震える声でそう言った。
僕、磯田、瀬名の3人で放課後3年生の教室に向かい、相田を探した。これ以上巻き込みたくないといった瀬名の希望であえてミナ先輩には話を聞かず、同じクラスで関わりがありそうな人達に声をかけた。もちろん極力怪しまれないように必要最低限の人数にしか接していない。これもそうするほうが効率的だし怪しまれないといわれ僕は納得する。
結局、相田本人はみつけられなかったが、相田と席が隣同士で比較的話す関係の岡部という男が校舎の外にある用具室にいつもいるという情報をきき僕達はそこへ向かう。が、その砂埃臭い用具室で男が倒れているのを僕達は発見し今に至っている。
こいつが岡部なのか?
瀬名は僕と磯田の後ろで口を抑え、ただでさえ大きい眼球をさらに押し出している。
僕は刑事ドラマの刑事が死体確認するかのように、怯える磯田の前で倒れている男子生徒の顔をしゃがんで確認する。
「…… いや、これ寝てるだけだぞ」
「え?」と磯田は泣きそうな顔をしている。
「ティッシュあるか?」ときくとすぐにポケットから出してくれたのはもちろん瀬名だ。磯田が持っているわけがない。
僕はティッシュを倒れている男子生徒の顔にのせる。
「おい、不謹慎だぞ」と言った磯田の声は僕の耳には届いていない。
「ほら、ティッシュがプカプカ浮いてるだろ? 息してる証拠だ」
よかった、と安心して瀬名がその場に座り込む。
とりあえず起こそう。「先輩!」と肩を揺すった。薄目を開けながら「だれ?」と目を擦っている。
寝癖でつり目の男が目を覚ます。
「あ!先輩気づきました?」
「お前ら、誰?」
「僕達は2年です。岡部先輩ですか?」
「そうだけどって…… えっ? 2年? やっば、今何時?」
終始気だるそうだった男は、焦っている。野球部かなんかが用具を取りに来たと勘違いしているようだった。
「大丈夫です。部活じゃないですから、ただ岡部先輩に話を聞きに来ただけです。そして、今は17時少し前です」
「17時…… そんな時間までねてたのか」
「でも、どうしてこんな場所で?」
「そりゃあ、誰も来ないからだよ。なんだよ一時間だけサボるつもりだったのに…… そんな寝ちまったか」
いつから寝ていたのか少し気になったが僕はあえて聞かず本題に入る。
「先輩、一つききたいんですけど相田さんしってますよね?」僕は単刀直入に聞いた
「え? 相田?知ってるけどなんで?」と警戒心が滲んだ表情に変わり僕の顔をまじまじと見る。
「実は親戚が相田さんの知り合いみたいで、最近様子がおかしいから話をきいてみてくれないかといわれまして」
適当に嘘をついて笑顔をつくると、岡部の表情が少し和らぐのがわかった。内心はバレるのではとヒヤヒヤしていたのでほっと息をつきたくなる。
「あー、あいつな。確かに最近おかしいよな、まぁ、仕方ねぇよ。あいつ今影で殺人犯呼ばわりされてるから」
「…… それってやっぱり消える橋と関係あるんですか?」
「…… なんでお前そんな事しってるんだよ?」
「いや、先輩知らないんですか? もう学校中の噂ですよ」
とは言ったものの瀬名と磯田以外にこの噂を話しているのをしらない。
「そ、そうか……。まぁ、俺も詳しくはしらねぇんだけどよ、でも、もし相田が末藤を殺したんだとしても、不思議じゃねぇっていうか気持ちは分かるっていうか」
「気持ちはわかる…… やっぱりいじめですか?」
「あ、ああ。あいつ去年の半ばくらいから末藤に目つけられて、毎日ボコボコにされてたからな」
「毎日って、知ってて周りは誰も止めないんですか?」
「止めれるわけねぇよ。そんな事したら次は自分が標的になっちまう。みんな自分が一番大事だからよ」
「気持ちわるい…」と瀬名がボソッっと呟くと、岡部は顔を引き攣らせる。瀬名の顔をみて「え…」と言ったあとなにかを考え、数秒沈黙し、でも多分、と再び口を動かし始める。
「一番は弓野のことだおと思う」
「弓野? だれですか?」
「相田が唯一と言っていいほど仲良くしてた女子なんだけど、前に相田になんで仲良いのか聞いたらどうやら幼なじみらしくて」
「彼女か?」と磯田は真剣に挟むが誰も答えない。
「その弓野さんと相田さんってどういう関係なんですか? 幼なじみってだけですか?」
「それはよく知らねぇけど、相田は末藤を憎んでたよ。その弓野にしつこく言いっよったりしてたし、これは本当かはわからないけど襲われたって情報もあった……」
「え…… 襲われた?」
僕と磯田は重たい息を飲み込んだ。
「とことんクズだな、末藤の野郎……」
「ああ、本当にな」
怒っている磯田にここは共感しかない。
「でも襲われてどうなったんですか?」
「それ以上は俺もしらないんだよ、ただ弓野はその後学校やめちまったから」
僕は自分の部屋の天井をスマホの液晶越しにながめながら、色々な思いを巡らせていた。
結局あのあと瀬名はすぐ帰り、僕と磯田も気分がわるくなりすぐに解散した。
身体を起こそうとベットから起き上がろうとしたタイミングで、決して軽快とはいえない足音が響いた。
その足音は部屋の前で止まったかと思うと勢いよく部屋のドアを開ける。
「お兄ちゃん!!!」
騒がしい妹の登場だ。こいつには兄としての尊厳や威厳を示してきたつもりだが全く無意味だ。
「なんだよ…… ドアは静かにあけろよ」
「はーい! あ、お母さんが餃子の皮包むの手伝ってっていってるから下おりてきて!」
「お兄ちゃん今忙しいから、お前にその任務をまかせよう」
起こした身体を再びベットに預け妹に背中をむける。
「ほう、ベットで横になってスマホを弄るのが忙しいとは知りませんでしたな、時代は変わったようですな」
「何時代の誰の設定なんだよ」とツッコミをいれておく。
「彼女ができて連絡が忙しいっていうなら見逃してやってもよいぞ?」
「そんなんじゃねぇよ。とにかく俺は忙しいんだからほっといてくれよ」
僕はスマホの画面に目を戻す。
「そんなこといってると、消えたはしにお願いしちゃうぞ?」
妹の言葉に飛び起きる。
「は?! お前どこできいた? なんで消える橋のことしってるんだよ? それにお願いってどういう意味だ?」
「しらないの?!今ツブッターで密かに人気のアカウントだよ! 面白いんだよねこのアカウント!お兄ちゃんの高校の話しがよく出てくるからお兄ちゃんと同級生の子がやってるのかも!だから、お兄ちゃんの秘密ばくろしてもらうようにお願いしようかなって」
「…… ちょっとまて、もう一回アカウント名いってくれ」
「ちょっと! それより餃子!!」
「聞いたら行くから、早く!」
「消えたはしだよ」
「消え…た… はし…」
夕飯を食べ終え僕はすぐに妹からアカウントを聞き出した。
末藤がいなくなったのが、5月29日、そして今が6月3日。いなくなってから4日たっている。
僕は3ヶ月前まで遡り気になる呟きをまとめた。
3月2日【今日もつかれた、しばらくはしやすめ】
3月15日【なんかはしがきえそう】
3月27日【今度は向こうの橋が消えてる】
4月15日 【橋が消えました。何人か亡くなってるみたいです】
そして末藤がいなくなる1週間前の呟きが【はしを無理にわたろうとすると死んじゃうよ】
他は【YEAH、今家ー!】など、くだらないおどけた文章ばかりだ。
おかしいと僕は何度も見返した。3月の前半と4月の後半で印象が違う。
え、と声を出したのは一昨日の呟きだ。
「これって…… もしかして」