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ラノベ作家になったドイツ美少女の初恋は俺らしい。  作者: 藤白ぺるか


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第20話 はじめてのデート②

 香澄さんとの映画デート。

 映画館から出るとばったりと鉢合わせしてしまったのは、クラスメイトの二人――神宮利樹と庵野小依だった。


 ちょっと待てよ。

 こうして二人で遊んでるってことはもしかして神宮が好きな相手って、庵野さん!?

 二人は幼馴染だった……!?


「ど、どうも……」

「こんにちは……」


 俺は二人でいるところを見られたからか、どうしようもなく恥ずかしくなっていた。香澄さんも同じだったようで、顔を赤くしてあたふたしている。


「てかさ……クラウディアちゃんめっちゃ可愛くね!? エグッ!」

「それは私も思ったー! ねえ、すっごい綺麗! 一瞬別人かと思ったよ。オーラがすごいもんっ!」

「あ……え……あり、がとう……っ」


 二人に褒めちぎられたことにより、紅潮した顔色がしばらく収まらなかった。


「それにしても越智……映画デートか。やるじゃんっ」

「……アンタよけいなこと言わないの! てか、香澄さんのこと下の名前で呼ぶな!」

「いだっ」


 夫婦漫才がはじまった。

 庵野さんがべしっと神宮の頭を叩いた。


「二人も映画にきたの……?」

「おうよ。こいつが観てー映画があるっていうからよ、しょうがなく観に来たんだ」

「アンタが観に行きたいって言ったから私がついて来たんでしょ、このバカ!」


 どっちが本当なんだ。

 よくわからない。

 ただ、二人が仲が良いことはよくわかった。


「へえ……二人ってクラスではそんなに話しているところ見たことないから、こういう関係だって知らなかったよ」

「あー、幼馴染なんだ。まあ、クラスではそのことは話してないからさ」

「そうそう。私みたいな優秀な子がコイツみたいなやつと仲良くしてたら、なんて回りに言われるかわからないからね」

「おい」


 やっぱり幼馴染だったらしい。

 神宮は俺にウインクをしてきて、先日話したずっと片想いしていることと繋がった。

 ただ、付き合えない理由は神宮の態度に大きな原因があるように思える……。


「じゃ、じゃあ俺たちは行くから――また」

「えっ、せっかく一緒になったんだからお茶でも――」

「バカ! ほんと余計なことしか言わないわね! 行くわよ!!」

「ちょっ、小依! てめっ、痛え! 痛えって!?」


 神宮は庵野さんに耳を引っ張られ、どんどん遠くへと行ってしまった。

 正直、ここで一緒になってくれたほうが俺は心が安らいだのだが、そうはいかないらしい。


「――あの二人……付き合ってるのかな?」

「あー、神宮から少し聞いたんだけど、付き合ってはないみたいだよ」

「へ、へえ……とっても仲良さそうに見えたね」

「うん。幼馴染らしいからね。その間にもたくさんケンカして、仲直りもしてきたんじゃないかな」

「…………そうね」


 香澄さんは、二人の背中を見送りながら、まるで何かを思い出すように遠い目をしていた。


「えっと…………じゃあ、俺たちは帰る……?」


 歯切れの悪い聞き方だ。

 デートなんてしたことはない。この日がはじめて外に出たデートだ。

 これ以上香澄さんの時間を使わせるには悪い……そんな思いで俺はそう言った。

 けど、彼女はそうは思っていないようで――


「……お茶」

「お茶?」

「――お茶、行こう……ほ、ほら、さっき神宮くんが言いかけてたから……なんか、行きたくなってきたというか……」

「そ、そっか! よし、行こう! うんっ」

「あ、ありがとうっ」


 結局、俺たちはデートはまだ終わらず、このまま次のデート場所に移ることになった。


 しかし、休日だからか、どこもカフェは満席で、簡単に座れる場所が見つからなかった。


「香澄さん、ごめん……なんというか、映画のことで頭いっぱいで、他のデートプランとか考えてなくて……」

「ほ、ほんとね! で、でも……別にお店に入れなくてもあなたと一緒に……」

「ん?」

「な、なんでもない!」


 何を言いかけていたかわからないけど、これは俺の失態だろう。

 最初から何時解散にするだとかLINEで聞いておけば良かったのだ。


「えっと……じゃあさ、飲み物だけ買って、空いているベンチに座るとかはどう?」

「――っ! うんっ! それでいいっ!」


 少しだけ暗くなっていた香澄さんの表情が明るくなる。

 俺はそれを見て少し安心した。


 そうして二人でドリンクだけ購入し、商業施設の屋上にあった庭園のベンチに座ることにした。


 ◇ ◇ ◇


 だめだ。心臓がずっと飛び出そうで、頭がおかしくなりそう。

 手汗も酷くて、ドリンクを持つ手が震えている。


 いつも以上に汗をかいてる。

 臭くないかな? 素直、気になってないかな?


「――最近さ、読んでるラノベある? 読んでるというか、好きなラノベでも良いんだけど」


 すると素直は話題を振ってくれた。

 とっても嬉しい。

 でも、私は緊張しているせいか、とんでもないタイトルを口ずさんでしまった。


「『限界領域の魔法銃使い』とか……」


 なにやってるのよわたしぃぃぃぃぃぃ〜〜!?

 自分の作品出してどうするのよぉぉぉ!!

 これじゃあ怪しまれるじゃないっ!


 しかし、さらに驚くことが、素直の口から飛び出した。


「そうなんだ! 俺も『魔法銃』結構好きでさ! ウェブでも追ってて……それで書籍についてた抽選チケット応募したんだけど当たったんだよね。だからゴールデンウィークのサイン会に行くんだ!」

「………………はい?」


 えええええええええ!?

 私のサイン会に来るの!?

 いやいやいやいや私どうするのよ!

 サイン会って、ちょっとしたインタビューもあるって言ってたし、ええええ!?


「香澄さんは抽選チケット応募した?」

「わわわわっ、私は……当たらなかった……」

「へえ、そうなんだ。そういや真幌も当たったって言ってたな」


 あの爆乳娘も!?

 ヤバい……ヤバいヤバい……っ。


 簡易的に顔を隠せば良いと思っていたけれど、これでは完全に髪も隠して声も変えるような変装しなきゃいけないじゃないっ!!


「楽しみだな〜。俺、こういうサイン会ってはじめてでさ、どんな感じになるのかわからなくて……直接ハイルヴィヒ先生から手渡してもらえるのかなー」

「どどど、どうなんだろー」


 カタコトの返事になった。

 いや、私もそこまでまだ聞いてないんだけど……え、手渡しとか絶対無理。

 まさか握手とかはない……よね?

 帰ったら網走さんに確認しなきゃ……。


 ドリンクが全然減らない。

 自分からお茶に誘っておいて、全然喉を通らない。


 いつか明かしたいとは思っているけど、まだ心の準備ができていない。

 ゴールデンウィークがこわいよぉ……。





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