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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
最終章 聖杯の章

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最終話 光と闇の決着①




  デウスウルト城・円卓の間


城の最奥に位置するこの場所へ1人の機士が黄色のクレストを携えて向かっていた。


機士は用向きを巨大な扉越しに伝えるが、奥にいるはずの現在の城の主マレフィクスからの返事はなかった。


「理由は自分も聞いておりません。ただ、自分達3神官が居なくなった時にプレハ様からこれをお渡しするように、主以外に中を見てはならぬと厳命されておりましたので」


「見る?・・・・入るがいい」


今は亡き部下のおかしな物言いに興味を抱いたマレフィクスは機士を通す。彼は(うやうや)しく(ぬか)ずいてクレストを差し出し、主がそれを取った事を確認すると退出していった。


「さて、何がある?」


騎士団長用の椅子に腰かけたままマレフィクスはクレストを砕くと破片から煙が立ち昇り1つの映像を映し出す。


『これを見ているという事は我ら3神官は既にこの世にいないはず。主よ、そのお力を信じておりますれども勝手ながら主の勝利の為にこの城を改造させて頂きました。我ら3名の死を感知するとこの城の城門と城内が変化する仕組みでございます。主の悲願成就の為是非ともご活用くださいませ』


これだけ伝えると映像は煙と共に拡散して消えた。


「フ・・・まあ良い。部下の忠義にも応えてやらんとな」


マレフィクスはクレストの破片を体内に吸収すると主だった部隊長を呼び出すと迎撃の配置を各部隊に通達した。

自分がこれからやろうとしていることを伏せたまま、であったが。



同時刻


「動力炉と衝角だけ修復出来ればいい。マストの破れは聖骸布を使って覆え」


ヴィダリオン達は最後の決戦へ向けてティレニア号の修復を全員で行っていた。


修復の指揮を執っているのはティレニア号の『船長』であるはずのハダリーではなくマリニエールだった。それに誰も異を唱えないのは単に彼が適任だからという事を承知しているからである。


「作戦がうまくいけばいいけど・・・・」


「作戦?ただ最高速出した船で城に突っ込むだけだろうが?」


悲観的な分限博人に新井陸が陽気に返す。


そこから先は城内に躍り込み、円卓の間を遮二無二目指す。それだけだ。単純極まりなかった。


「だから対策されたらどうするのさ?」


(から)め手は却って連中に気付かれる。連中に守りの時間を与えない為にも直ぐに実行できる作戦が良い」


ヴィダリオンがマスルガと共に建材を運びながら2人の会話に割って入る


「すまないな。降りてもらうのに手伝って貰って」


「ここは俺達の世界だ。俺達がやれることやらないでどうするよ」


「そうだったな。命を懸けた戦いは俺達に任せろ。必ずこの世界に平和を取り戻す」


「頼むよ、ヴィダリオン」


「おい、ヴィダリオンお前サボってんじゃねえ!そいつがねえと衝角が強化出来ねえだろうが!」


ホットスパーの怒声に首をすくめてヴィダリオンは船の方へ行ってしまった。


「・・・・・あの2人は行くんだよな・・・・」


「そうだね。出来る限り頑丈にしとかなくちゃ」


顔を見合わせると陸と博人は真剣な表情で作業に戻るのだった。


修理と改装作業終了後、艦橋内にて作戦会議が設けられた。テーブル上には目標であるデウスウルト城を模した模型が置いてある。


「作戦内容を確認するぞ。まず、メガイロのアニューレットカノンで城の砲台を破壊しつつティレニア号の衝角で城門を破砕する」


ヴィダリオンがティレニア号を示すピンで城門を表す模型を倒す。


「城の砲台の射程はメガイロの強化されたアニューレットカノンに及びません。この点はマレフィクス側の怠慢ですね」


「もし今新型を配備していたら?それに空飛んでんなら門無視した方が早くないか?」


「可能性はあります。しかしユウキ殿、メガイロ以上の砲手は機士団内には居ませんし、新型が仮に配備されているとしてもその練度の差は明白です。それに城門はそれ自体が砦となっているのでこれを無視すると挟み撃ちを受ける事になる。それは避けたい」


カローニンが星川勇騎の懸念に答える。彼自身一抹の不安はあるがそれは戦場の常と言える物で、結局彼は戦友の技量を信じていたのだった。


「・・・・話を戻すぞ。次元転移の影響で城門を突破したらすぐに中庭になっている。向かってくる同胞を相手にせず各員は騎乗して内部に突入する。総数は機士とタロス含めても200前後しかいない。そうだな?」


ヴィダリオンはマリニエールに確認する。


「ええ、連中はあの巨人ゴリアテだのナイトクレスターの制作で多くの同胞やタロスを鋳潰(いつぶ)してしまいましたからね。残っているのはその程度かと」


「城の本丸の入り口は狭くなっている。これを利用し入口で2人残って足止めする。その役目はホットスパーとメガイロだ。異論は無いな?」


「勿論だ」


「任せろ」


2人の気合の籠った返事に頷くとヴィダリオンは続ける


「残りの6名は主とユウキを含めた4騎。マリニエールとカローニンで内部の敵の位置を割り出ししつつ円卓の間へ向かう。その後は・・・・」


「決戦だな」


「そうだ。これが最後の戦いだ。皆、力の限りを尽くしてマレフィクスを永遠の闇を全次元に齎す者を撃ち滅ぼそうぞ!!」


応、という気合と共に各員は持ち場に付き、ティレニア号は最後の戦いの空へと出帆する。


陸と博人はその姿が見えなくなるまでジッと空を見上げていた。



ティレニア号の舳先(へさき)でコートオブアームズ・アニューレットカノンを構えて前方を睨んでいたメガイロは城門周辺の異常に気が付き、伝声管で伝える。


「何!?形が変わっている?砲台は!?数や種別は変わっていますか?」


艦橋には総舵輪を操るハダリーと分析兼軍師役のマリニエールがいた。


『いやそこまでは変化していない。変わっているのは門の形だけだ』


「どうしますか、マリニエール様?敵の罠かも・・・・」


『報告がもう一つできた。城全体が黒い(もや)、いや闇に包まれ始めた』


「メガイロ、作戦に変更はありません。後1分したら砲撃開始です。ハダリーも良いですね。もう時間の余裕はありません。恐らくマレフィクスはこの世界を闇へと変えるつもりでしょう。それを止められるのは最短で奴を止めるこの作戦だけです」


1分後


「ティレニア号全速前進!!メガイロ砲撃を!」


返事の代わりに舳先から猛烈な火線が火を噴く。急加速の衝撃にメガイロは微塵も動じずガトリングカノンが1回転する間に上体を振って城門左右に備えられた砲台を吹き飛ばすと直ぐに再装填を行う。突入後の事もあるが、新たな城門の中程の高さに備えられた6つの半円状の胸壁に何か胸騒ぎを感じるのだ。


「む!?」


メガイロが伝声管の方へ後退するのと6つの胸壁が展開し、中から3門づつ計18門の砲台が姿を見せたのは同時だった。


『砲台だ!あの胸壁は!?』


「潰せますか!?」


『やる!』


メガイロの声と同時に船体が大きく揺れる。


「船に直撃は!?」


「していません!でも、掠っただけでこれとは・・・・」


『俺も出る。レイブルフレアーの射程内に城門が入るはずだ』


艦橋の伝声管にヴィダリオンの声が響く。


「私も行きます。お二人の砲撃を守る役が必要ですからね。カローニンを艦橋へ。ハダリー、彼なら的確な指示を出してくれるでしょう」


マリニエールは指示を出すと船の舳先へと降りて行った。


「どうだ?」


舳先に出てきたヴィダリオンは砲撃準備を完了させ、前方を睨むメガイロに声を掛ける。砲撃のエキスパートたる彼の見立てを聞いておきたかったのだ。


「あれの威力はアニューレットカノンと同等と見た。全弾命中したら船はひとたまりもない」


「・・・・こっちがあれを潰すのが先か船が沈むのが先か・・・!」


「そうはなりませんよ」


後ろからマリニエールが声を掛ける。その周囲にはコートオブアームズ・クレッセントカッターが回転していた。


「カッターで砲撃を弾きます。安心して撃ってください」


「確実に潰す為に砲が露出した瞬間を狙う。合図は任せてくれ」


「頼む」


ヴィダリオンはコートオブアームズ・ブースターレイブルを前方に向けて短く返事をする。


「撃て!」


砲撃は船側が早かった。練度の差である。城門側からの火線は明らかに舳先の機士達を狙った物と船を狙うものとに分かれていた。それらをカッターが猛烈な回転で弾き返す。船周辺と城門前で凄まじい火花と轟音が弾ける。


「何!?あれはバリアーか?」


「ヴィダリオン、出力を上げろ。それで落とせる」


「了解!」


斜め前のメガイロの見立ては完璧で出力を上げたレイブルフレアーとアニューレットカノンはバリアーを貫き砲台4つを吹き飛ばす。城門の一連の動きを分析していたマリニエールは後方へ走り伝声管に手を掛けて指示を出そうした瞬間船が急加速すると同時に管からカローニンの声が響く。


『事後承諾ですみませんが、船の衝角で城門の中央上を貫きます』


「こちらマリニエール。今同じ事を伝えようとしていましたよ。やはり見抜いていましたか、カローニン。あの位置が・・・」


『バリアー発生装置にして指揮所です』


「加えて急造品なのかエネルギーが逆流する欠陥がある。破壊できれば城門ごと吹き飛びますよ」


『そこまでは知りませんでした。舳先の3人によろしく』


「3?ああ、来ました。ではまた後で」


3人目、ホットスパーがふらつきながら甲板へ上がって来たのを認めてマリニエールは通信を切った。


「伏せていた方が良いですよ。衝突の際に大爆発が起こりますからね」


「マジか!あいつらにも伝えねえと」


珍しく素直に他人の言う事を聞き入れたホットスパーは匍匐前進(ほふくぜんしん)で甲板を進んでいく。だが彼が舳先にたどり着く前に船が舳先を上げ上昇した事で甲板にいる全員が体を伏せなければならなかった。


『全員衝撃に備えて下さい!』


『突撃します!!』


カローニンとハダリーの声が伝声管を通して船内に響き渡った1秒後


城門中央やや上にある指揮所兼バリアー発生装置に突撃したティレニア号に閃光と激震が走る。指揮所の壁を、船の衝角先端は突き破ったがバリアーは未だ健在だった。


「しまった!?加速が足りなかったか!?あっ、パールウェイカー様!?」


顔を上げたハダリーが歯噛みしながら失敗を悟ると同時に目の端にホットスパーことパールウェイカーが割れたバリアーの穴から指揮所に突入していくのが見えた彼女は伝声管で危険だと叫ぶ。


「んな事は承知の上だよ!!」


槍に変化させたスターシールドを戦士の本能で敵兵が集まっている場所の色とりどりの光を放つ壁面に叩き込む。


指揮所内が爆発し、逆流したエネルギーが城門を駆け巡ると砲台に引火。いくつもの爆炎を上げながら城門は轟音と共に真っ二つに裂けて崩壊した。

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