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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
最終章 聖杯の章

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78/90

第18話 魔の巨人③




 「ガルウを殺した忌々しい女機士め!串刺しにしてくれる!」


奇怪巨人ゴリアテのコクピット内でナイトクレスター・ザパトが吠える。右の操縦桿代わりの重力剣ガナドールの力を解放し、重力加速させた短槍をナイトハダリー目掛けて突き出す。


「う・・・」


『落ち着けハダリー!後ろへ下がれ』


ハダリーは突如頭の中に響く声を頼りに後ろへ下がる。数瞬遅れて自分の居た場所に槍が突き刺さり、アスファルトと土砂を巻き上げる。


「誰!?知っている声に似ている?だから声に従っても良いと思った・・・・」


『詮索は後だ。2機が合流する前にヴィダリオン達と目の前のゴリアテを倒すのだ。アーキバスランチャーの準備だ!』


声の指示に従いハダリーはアーキバスランチャーを取り出すと発射準備にかかる。


「ハダリー、無事ですか!?」


「はい!同時攻撃を!」


「よし、四方から同時に攻撃だ!」


「「「ヴォ―セアン!」」」


ヴィダリオンの合図に機士団の(とき)の声が響く。カローニンに掴まっていたヴィダリオンとホットスパーは3方に分かれると攻撃準備にかかる。


「聖骸布による新技のお披露目だ!レイブルフレアー!」


ヴィダリオンは修復の完了したブースターレイブルの2つの噴射孔をゴリアテへ向け、銀色に縁どられた赤い炎を発射。


「フェザーブレイド!」


「バイブレイション・ウェイブ!」


「アーキバスランチャー発射!」


同時に愛馬ベオタスに跨ったホットスパー、カローニン、ハダリーもそれぞれの武器を発射した。


「させるものか!」


だがその四方からの攻撃は後方からやって来てゴリアテを押しのけた、もう一体の奇怪巨人エンキドゥへ直撃する。


「プレハ!?私を庇ったのか?」


「伊達にエンキドゥがこの体をしていない事を今教えてくれる!ゴリアテは伏せていろ!」


プレハは同僚どころか自身の主にさえ隠していたエンキドゥの『隠し玉』を発動。


両脇腹と背中そして胸に直撃した敵の攻撃は猿の体毛を模したエンキドゥの装甲を貫く事をせず、体毛をなぞるように光となって全身を駆け巡ると全身の毛先から光を放射、光を受けた機士達は糸の切れた操り人形の様に声も無く次々に落下し、昏倒した。


「なんだ!?どうなったんだ!?」

「ハダリー、皆!?おい、杏樹!?今出て行くのは危険だ!」


「ヴィダリオン!?あれは、もしかしたら?」


物陰で戦いを見ていた星川勇騎達男子組が予想だにしない出来事に困惑する中、金雀枝杏樹(えにしだあんじゅ)は幼馴染の静止を振り切って戦いの場へと飛び出していった。


「今のは・・・・!?」


「見たか!これがエンキドゥの隠し玉だ!!連中の聖骸布のエネルギーを受け流し、跳ね返す!今の機士共はいわば過充電とも言うべき状況で自らの力で倒れたのだ!」


「なるほど。ならば連中を葬る栄誉は君のものだな、プレハ」


自分にさえ隠していたエンキドゥの能力にザパトは純粋な賞賛の言葉をプレハに送らざるを得ない。


「ではお言葉に甘えて・・・・ン!?フフフフフッ・・・!」


プレハはエンキドゥの正面モニターに映った人影を訝しんだが直ぐにその正体を知って哄笑でコクピットを満たす。


「何のつもりだ、小娘!?この期に及んで従者の命乞いか?」


「違います。ヴィダリオンを、機士達を殺すのならその前に主である私を殺しなさい」


「血迷ったか!いや事実上の降伏か・・・・良かろう、目が覚めたら主共々地獄にいた、とは我らが仇敵ヴィダリオンには相応しい最期かもしれんな」


エンキドゥの右手が杏樹の体を握りしめる刹那、彼女の細腕を上に挙げると自分を握り潰そうとする巨人の親指の関節にその両手を添えた。その手から聖骸布のエネルギーがエンキドゥの機体各所に瞬く間に流れてゆく。


「ム・・・・!?どうした事だ!?これは!?」


右手がまず動かなくなった。


『どうしたプレハ!?早くその小娘を潰してしまえ!』


コクピット内に備えられたスピーカーからザパトの叱責が飛ぶがその声も徐々に雑音にかき消されていく。理解不能の異常は遂に致命的な形でエンキドゥを襲う。


「ば・・・馬鹿な!?エンキドゥの装甲が!?こんな事が?奴らと同じ事がエンキドゥにも起こっているというのか?」


エンキドゥの全身の装甲がまるで動物の体毛が抜け落ちるかのようにボロボロと剥がれ落ちてゆく。コクピット内の計器類は正常を示している事が却って事態の異常さに拍車をかけていた。


遂に部品の詰まった骨組みだけとなったエンキドゥはその自重を支えられず糸の切れた操り人形の如く力なく両膝をつくとそのままうつ伏せにギギギ、と関節を軋ませて倒れ伏した。


「聖杯の巫女め!一体何をしたのだ!?だが!」


我に返ったザパトはゴリアテの槍を投げつける。しかし、内心の動揺から手元が狂いあらぬ所へ槍は突き刺さった。その衝撃で気絶していたヴィダリオンら機士が次々に目を覚ますと武器を手に立ち上がる。


「グ・・・しまった!?連中が息を吹き返したか!?プレハ脱出しろ!私は巫女をこの手で殺す!」


プレハがエンキドゥのコクピットから飛び出すのを見たザパトはゴリアテで杏樹を叩き潰すべく物を放り投げるような体勢で右手を振り上げた。


「杏樹逃げろ!ハダリー!」


杏樹を助けるべく駆けだした勇騎は自分の従者にロボの牽制をさせるべく大声を出すが喉がカラカラに乾いて次の言葉が出て来ない。


「主お下がりください!」


ヴィダリオンが盾を構えて杏樹の前に立つ。


『ハダリー、奴の額を狙え。そこが運動機能の制御をしているのだ』


「はい!」


主の意図を察しながらもより有効な手立てを告げる内なる声に従い、ハダリーは自分のメイスをハンマー投げの要領でゴリアテの額目掛けて投げつけた。


ガアン、という大音響と青白い火花が飛ぶとゴリアテは後ろにつんのめり、地響きを上げて仰向けに倒れる。


「ゴリアテ!?どうした!?何故動かない!?う?」


コクピット内の照明が明滅後、全てのモニターが真っ暗になった事で危険を悟りコクピットハッチを開けたザパトが見たのは、ヴィダリオンの剣は天を貫く巨大な白熱光を発して振り下ろされる瞬間だった。


「いかん!?あれは、海を斬った剣技!?」


「紋章聖剣奥義・一道の太刀!ヴォ―セアン!!」


振り下ろされた巨大な白熱剣はその刃で奇怪巨人2体を爆発炎上させ、発生した衝撃波は逃走する邪神官2人を闇の力を奪い、暴風に舞う木の葉の如く吹き飛ばす。彼らが顔を上げた時、デウスウルト城まで1本の道がその名の通り、アスファルトに深々と刻み込まれていた。


「グッ動けん・・・やはりこの技は俺の力の全てと引きかえの技か・・・・」


「ヴィダリオン、邪神官共への止めは任せろ!連中には俺達も借りがあるからな!」


「そういう事です!邪神官プレハ、ザパト覚悟!」


「粋がるな!貴様らに易々渡す首ではないわ!」


ザパトが青白い3つの光球をホットスパーとカローニンへ投げつける。光球は2騎を通り越し背後から速度を上げて迫る。


「死ね!」


プレハもまた両手から光る糸を束ねて2本の螺旋状の牙へと変化・高速回転させて機士達の左右から襲いかかった。


「一緒に突っ込みましょう!」


「応よ!突撃こそ機士の華だぜ!」


カローニンは巨大な鳥へと変形するとホットスパーの背中に乗ると自身の翼をベオタスの翼に接続、周囲を高周波で覆う。


次いでホットスパーがスターシールドの5つの星を形成するパーツ先端から銀の光が迸ると1種のビームシールドを形成すると槍へと変形させると篭手から聖炎のエネルギーを流し込む。


2騎と1頭は巨大な渦巻く炎の槍となりプレハの邪糸の牙を炎上消失させ、追ってきた光球さえも取り込んでさらに力を増してプレハの体に風穴を開けて数m先で崩れ落ちる様に着地した。


「グ・・・おのれ・・・・ザパト、後を・・・たの・・・・ム・・・主よ、世界に永遠の闇を・・・!!」


邪神官プレハは風穴から吹き出した炎に包まれて消失した。


「その願い聞き届けよう」


空間全体に声が響く。


「マレフィクスの声・・・だと!?」


「主よ何故!?」


ザパトの頭上から翼の羽ばたく音と共に黒竜鎧神マレフィクスがその姿を現した。

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