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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
最終章 聖杯の章

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第17話 聖骸布を探せ①




 剣王町・デウスウルト城内


城内最奥の円卓の間の椅子に腰かける黒竜鎧神マレフィクスの前にナイトクレスター・プレハが(ひざまづ)く。


「発言を許す」


「我が主よ、ナイトクレスター・ハーピィにより聖骸布の在処が判明致しました。この隣の町の海底洞窟の1つに沈められているとのことです」


暗黒の支配者は彼女の言葉を聞き、立ち上がる。


「遂にこの時が来た。直ちに見つけ出し、破壊せよ。さすれば我が体内の聖杯は汚らわしい曙光(しょこう)の輝きを永遠に失うであろう」


「ハッ!今ガルウの下、捜索隊と機士共を迎え撃つ守備隊を編成中でございます」


「待て。捜索隊の指揮はロベール破剣兵団総長に執らせるのだ。ガルウはその補佐に回せ」


「恐れながら・・・あの男が食いつくでしょうか?それ以上に反乱を起こす可能性が・・・!」


「奴を呼べ」


支配者は有無を言わせなかった。


かくて魔神機兵団の中でも特に宙ぶらりんな立ち位置にいる破剣兵団総長ロベールが呼ばれた。殺される可能性がないわけではない。だが機士でもなく図像獣でもないというどっちつかずの立場が今後有利となるか不利に働くかはこの呼び出し如何だ、と考えた彼は行く事にした。


(対等な同盟関係である以上無法な要求はあるまい)


こう高を括ってもいた。


「仕事の話か」


「そうだ。ある物を取って来てもらいたい。この町の先に海がある。そこにいくつかある洞窟の1つに安置されている」


「・・・・随分と簡単に聞こえるが、そうではないだろう?」


「そうだ。ヴィダリオン共も狙っている。争奪戦だ。兵を貸す。好きに使え。これが無事に終わればこの次元をそちらの自由にして良い」


「気前が良すぎるが、何を企んでいる?」


「何も。こちらの『実験』が予想以上にうまくいったのだ。つまり同盟に価値が無くなった。喧嘩別れでなく、互いの友好の証として、この次元の支配権をやるというのだ。不満か?」


「いや。願ったりだ。そいつを持ってくれば良いのか?」


「その場で破壊せよ。残骸を持って来てくれれば良い」


ロベールは鷹揚に頷いて部屋を出た。会見を見守っていたナイトクレスター・ザパトは懸念を口にする。


「傭兵が約束を守るでしょうか?例の事に確実とはいかないまでも感づいているやもしれません」


「しんぱいするな。そのために俺が付いて行く。へんなマネしたら殺す」


ザパトの後ろに控えていたナイトクレスター・ガルウが胸を叩く。


「頼むぞ。図像獣ではあの布に触れない事を気取られるな。その為に機士を取り込みナイトクレスターを生み出したものの、その耐性は未知数なのだからな」


「ガルウよ」


支配者の声に2人は跪く。


「これを授ける。ロベールに叛意(はんい)ありとみたらこれを使え」


マレフィクスは腹にある竜の口から赤黒い光を放つクレストをガルウへ下賜した。


その栄誉にガルウは額づいた。



同時刻


剣王神社・境内


「友よ、お前達の遺志は俺達が受け継ぐ。だから安らかに眠れ。今に城を取り戻し、城内の墓地に墓を移すからな。それまで辛抱してくれ」


土と石の小山の上にひび割れたエスカッシャン・ハートを乗せた簡素な墓を前にヴィダリオンらは右手を胸に添える、彼らの哀悼の意を表する姿勢で改めて決意を呟いた。


「さて行こうぜ。敵さんにも情報が筒抜けというからには、時間との勝負だ」


「すまん。私が到らぬばかりに」


「カローニン、別に責めてるわけじゃねえよ。こっちが先に動いたところで連中も後から来る。単に攻守が逆転したってだけさ」


「ですが、肝心の捜索はどうするのですか?私達の体は海の中での活動はかなり制限されます」


「そこは俺に任せてくれ」


ハダリーの意見に主である、星川勇騎が名乗り出る。


「まさかユウキ様が?」


「海の中じゃサビちまうだろ?ここは適材適所ってやつさ。その代わり敵の迎撃は頼む」


「お任せください」


「そいつに俺も一枚噛ませてくれ」


神社の入り口から新井陸と分限博人がやって来る。


「おい、お前らソカイしないのか?皆どこも町から逃げ出してるぞ!?」


「お前だってそうだろうが。いや、お前や金雀枝は特別かもしれねえが、だからこそ体張ってる友達見捨てて逃げるのは性に合わねえ」


「僕はこの町の名士だからね。町の危機を救うのが仕事さ」


「お前ら・・・」


友人の言葉に勇騎も彼の幼馴染の金雀枝杏樹(えにしだあんじゅ)も思わず目頭が熱くなる。


「新井君、分限君ありがとう。でも無茶はしないで。これは命を懸けた戦いだからこそこんな事で皆には死んでほしくないのよ。誰一人欠けることなくこの世界を救う。これが私達の戦いの目標よ」


「当然、こんな事で死ぬつもりはねえ。で、何をすればいいんだ?」


杏樹はこれからの計画を説明する。陸も博人も最初こそ怯えと驚きの入り混じった表情をしていたが話が終わる頃には聞く前と同様の決意を瞳に宿していた。


「無茶やろうとしてんなあ。人数はいくらあっても足りねえだろ」


「何だい、やめるのかい?僕は会社の人達に声かけてみるよ。ダイビングスーツとか融通できるだろうしね」


「やめるなんて誰が言った?俺もできる事は何でもやるつもりだ。だがよ勇騎」


陸は勇騎に向き直ると


「ここに残るんならオヤジさん達に挨拶しといたほうがいいんじゃねえか?俺の両親はばあさんのトコに逃げるみたいだが俺は断ってここに残ったからな」


「よく許して貰えたな」


「ま、俺の悪運を信じてくれてるってこった」


陸はそっぽを向いて鼻をこする。


「そう・・・だな。俺もちゃんと話をするよ」


勇騎はハダリーと共に家へ向かった。



星川家の前には2台のトラックが、その荷台に見慣れた家具や愛着の品を詰めた段ボールが所狭しと並べられていた。


「ユウキ様・・・」


「大丈夫だ」


勇騎はハダリーを紋章に戻すと庭で作業を見守っている両親の許へ歩いていく。


「勇騎!?よかった!心配したんだぞ!?」


「さあ、早く車に乗りなさい。母さんの実家に、九州へ行きましょう?そこならもう安全よ」


「俺、ここに残るよ」


息子の言葉に両親は目を見開く。


「お前、まさか・・・」


「確かに母さんの言う通りかもしれない。でもY市があんなになっちまった。ここで俺達が食い止めないと九州も日本も世界もあんな風になっちまうんだ」


「それなら・・・それをなぜあなたが」


「俺、主だからさ。それに杏樹を助けるって約束しちまったし。でも俺は死なない。無事にまたここで、剣王町で皆一緒に再会するんだ!だから、だから・・・」


「・・・・・わかった。だが1人で無茶しない事。これだけ約束してくれ」


「あなた!?」


母親の正美は夫の言葉に驚いて顔を見つめる。


「誰かがこれを止めなくてはならないんだ。私達の息子はそれに選ばれ、勇騎は選んだんだ。それを尊重してやろうじゃないか・・・!」


父、勇児の嗚咽(おえつ)交じりの声は言葉とは裏腹の意味であることを正美は悟って何も言えなくなってしまった。


「ユウちゃん、約束は必ず守るのよ」


「分かってる。行ってきます」


勇騎は生まれて初めて両親にお辞儀をすると振り返らずに神社へと戻って行った。



「お待たせ!」


「よっしゃ!出発するか!」


ホットスパーを先頭に勇騎達はティレニア号へ乗り込む。


「ボート会社に連絡してモーターボート1台とダイバースーツを借りてきた。問題は敵が探している中をどうやって掻い潜っていくかだけど」


空中を進むティレニア号内部の船室の1つで分限博人が難しい顔で唸る。同時にガクンと船体が揺れ、嫌な浮遊感と共に勇騎達は室内を転がった。


「何だ!?敵か!?」


「落ちてないか、これ?ハダリー、外はどうなっているんだ!?」


勇騎は部屋に備えられた伝声管でハダリーがいるであろう操舵室に呼びかける。


『敵襲です!対処していますが落下に備えて下さい!』


「備えろったって・・・」

対策を思いつく者はいない。ふと分限が窓の方を見て悲鳴を上げた。窓の外からフクロウの怪物がこちらをのぞき込んで、ニヤニヤ笑いながら窓を(くちばし)で叩いていたからだ。


「お、おい、こっちにクレスターが!」


勇騎が目だけ窓の方へ向けたまま伝声管に叫ぶ。怪物が窓を粉々に砕く最後の一撃を見舞うべく頭を後ろに逸らした瞬間、怪物は巨大な爪で上方へと連れ去られていった。羽や嘴の残骸が落下する上をカローニンが飛ぶ。彼は襲撃してきた図像獣セイレーンを空を複雑な軌道で飛び回って翻弄し、1体を両脚の爪で引き裂き、1体はヴィダリオンのアーキバスランチャーの射線に誘導してその餌食にする。


(性能からして明らかに私の廉価版。今の私にはこれ以上ない相手という訳ですね)


ひとりごちるとカローニンは


「船はこのまま1km進んだら着水してください。ここは私が引き受けます」


「俺も行くぞ!」


「いえ、ホットスパーは水上の敵を叩いて下さい。どうも数が多い」


船の進路上にいくつもの航跡が見える。その主はアザラシの背中に騎士の上半身のついた量産型ナイトクレスター・ナックラヴィ―の編隊だった。

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