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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
最終章 聖杯の章

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第16話 不滅の絆③




 デウスウルト城内ではナイトクレスター・ヘカトンケイルの誕生に嘲りを含んだ笑いが木霊していた。


「みたかよ、あのマリニエールとメガイロのかお?じぶんたちはだいじょうぶだとおもってたかおだぜ」


「ククク。しかし考えたなザパト?センチピードクレスターの精製クレストを10分割して連中の部隊員全員に埋め込んでおくとは」


「図像獣の新たな可能性の(いしずえ)の為だ。やはり我々が頼るのは図像獣であるべきだ。それはそうとプレハ、お前の創ったナイトクレスター・ハーピィはどうした?」


「心配ない。奴らの遥か頭上で情報収集中だ。あの位置ならディバインウェイブの効果範囲外だ」


「よし、全ては順調だ。後は現地民共が聖骸布(せいがいふ)の情報さえ見つければ良い」



ナイトクレスター・ヘカトンケイルは20本の腕と身の丈5m近い巨体を棒立ちで立ったままだった。


「う・・・・仕掛けて来ないつもりか?なら!」


その異様な雰囲気に吞まれかけたヴィダリオンは剣を抜くと下段に構えて突進し相手の右足目掛けて横薙ぎに払った。


ガアンという反響音と共に剣が弾かれる。


「流石に10体分の装甲があるという訳か!?」


「ヴィダリオン様、危ない!?」


ハダリーの声と自分を覆う影に気が付いたヴィダリオンは後ろに飛び退く。ヘカトンケイルの腕の1つがヴィダリオンを掴もうと伸びてきたのだ。


「甘いな」


くぐもった声と共に空振りした腕は恐るべき速さで振り上げられ、危険を感じたヴィダリオンとハダリーは左右に飛んだ。その直後2騎の背後の金雀枝家の塀が轟音を立てて砕け散った。破壊された塀があった地面には剣が突き刺さっていた。

「う・・・!?いつの間に?」


「なんて威力・・・!」


「こんな物ではありませんよ!来い、ヴィダリオン、ハダリー!正義の名の下に私達を斬ってみるがいい!」


「その声はマリニエールだな!?洗脳を今解いてやる。別の場所でな!ディバインウェイブ!」

ヴィダリオンのマントから放たれる光がヘカトンケイルとハダリーを包んで異空間へと飛ばす。


異空間は起伏の多い荒れ地だった。


「フン、遮蔽物に身を隠して接近するつもりですか?そんな小細工は通用しない!」


ヘカトンケイルは体組織の金属を消費する事で武器を精製する能力を持つ。今怪物は左腕10本に剣や投げ槍を、右手側に銃弾装填済みのアーキバスランチャー9丁と蛇腹剣。そして右肩にコートオブアームズ・アニューレットカノンを出現させると一斉射撃と同時に左腕を振り下ろした。


巨人の周囲の崖や丘が爆発し、切り裂かれ大量の土砂を巻き上げる。吹き飛んだ丘の影からヴィダリオンとハダリーを乗せた機動鋼馬マスルガが飛び出した。


「突っ込むぞ!武器を使い切った今こそ好機だ!」


「これを忘れていますよ!」


マリニエールは右腕の1つを振り上げる。その拳には蛇腹剣が握られている。地面に刀身を埋め込まれていた蛇腹剣が鞭状となって地中で蛇の様にのたうつと後脚のブースターを吹かして一直線に駆けてくるマスルガの前後の地面が割れ、大地の裂け目ノコギリのような蛇腹剣の刃が飛び出してくる。


「くっ、ハダリー、伏せていろ!」


ヴィダリオンは手綱を操りヘカトンケイルの右腕に合わせて上と下さらには右側から土砂を巻き上げて迫る刃の行列を紙一重で躱していく。


「!ヴィダリオン様、また武器が!?」


ふと顔を上げたハダリーは巻き上げられた土砂の間から9本の腕が再びアーキバスランチャーや剣や投げ槍を構えているのに気が付いた。


「この短時間でどこから持ってきた!?」


「冥途の土産に教えてあげましょう。このヘカトンケイルは自分の体の金属を消費する事でいくらでも武器を作り出すことが出来るのです!さあ、この絶望的な情報をホットスパーに伝えられぬまま死んでいくがいい!」


「マスルガ、全速前進!コートオブアームズ・ブースターレイブル最大出力!」


巨人の放つ射撃と投擲武器の嵐をマスルガは火の玉となって突っ込んでいく。


「確かに強力で隙が無い。だが、ここには攻撃できまい!!ハダリー頼むぞ!」


「は・・い!」


ヘカトンケイルの股下の飛び込むとヴィダリオンは手綱を離して剣を構えて急上昇。眼下でマスルガの手綱を握ったハダリーが駆け抜けていく。


「チィ!蛇腹剣の巻き戻しも間に合わん!」


「戦友よ!悪の躯から今解き放ってやるぞ!紋章剣一つの太刀!」


ヴィダリオンは剣を振り上げ刃がヘカトンケイルの腰に触れる直前、その巨体は赤黒い光となって霧散すると10騎の機士となってヴィダリオンとハダリーを取り囲む形となった。


「しまった!いつの間に!?」


ヴィダリオンは急下降すべくブースターを動かそうとしたが体に衝撃が走り、空中に固定されてしまった。

4枚のコートオブアームズ・クレッセントカッターが火花を上げてブースタレイブルの動きを封じていたのだ。


10騎の内8人はアーキバスランチャーを構え、メガイロは愛用の大砲を向けている。


「これで終わりとは・・・・案外あっけないものですね。やはり鞍替えは正しかったようです」


「何を言っている!?」


ヴィダリオンはマリニエールの言葉の意味が分からない。


「機士団の存続理由は正義にあるのは疑いがないでしょう?それもこの力を振るうに足る強力な悪があって初めて成立するものです。ところが悪は正義がなくとも存在理由がある。正義はそうではないにも関わらず、です。ならば」


「だから生きる理由の為に悪になるというのか」


「しかし、貴方もそうでしょう?普段グータラしているのは本気で戦ったらすぐに悪を滅ぼして役目が無くなるから。尤もあなたの性格の問題も大いにあり得ますがね」


「否定はしない。だが俺が今戦っているのは機士団の掟の為だけじゃない。この胸に自然と湧き上がる感情によってだ!それはどんな掟や法が無くなろうとも守らねばならん機士の道そのものだ!!」


「現地民に毒され過ぎたようですね。消して差し上げましょう」


マリニエールは右手を上げる。


「俺を消しても俺の意志を継ぐ者はいる・・・」


「そうですか。では全員始末するまで」


マリニエールは右手を振り下ろすと9門の砲口が一斉に火を噴く。


(ここだ!)


ヴィダリオンはブースタレイブルを格納し、拘束から逃れると再度ブースタレイブルを展開、ランチャーの再装填にかかる隊員の1騎を蹴り飛ばすとランチャーを奪い銃床で近くの別の隊員を殴り飛ばした。


残りの隊員達はその攻防中に装填が終わり、ヴィダリオンを撃つべく包囲の為に移動し照準を付けていた。


「主人を救えマスルガ、フレイムボンバー投射!」


ハダリーの勇ましい声と同時に数発の燃えるボルトが飛来しいくつかは彼らの足元に、残りのいくつかはランチャーの銃口に刺さって爆発する。


「おのれ・・・まさかここまで動きを鈍らせるものとは・・・お前達再合体だ!」


部下達の回避や突然の事態への対処への遅さにマリニエールは歯噛みする。彼は爆発に巻き込まれ手足を失った部下を両腕で抱えると号令によって10騎の機士達は再び巨人・ヘカトンケイルとなる。


『流石にこちらの弱点を知られたのじゃないか?』


「フ・・・だがメガイロよ、まだ天運はこちらにある!見ろ!現実世界に戻って来たぞ」


「ここで奴に暴れられたら大変な事になる。ハダリー、こちらもアーキバスランチャーだ。俺が時間を稼ぐ」


「お気をつけて・・・」


「なあに、奴はどうもさっきより動きが鈍い。武器の展開も間に合っていない今のうちに懐に飛び込む。恐らくこれが最後の一撃になるだろう。後は頼むぞ」


だがヴィダリオンはマスルガに飛び乗るのと同時に家の方から悲鳴が上がる。


「いかん!伏兵か!?」


主の危機にヴィダリオンは馬首を巡らす。既にヘカトンケイルの全ての腕は剣や槍を握っておりその刃は金雀枝家を含めた近隣の住宅に向けられている。


(どうする!この一帯がバラバラになるのを避けるか、主を守るか!?)


ヴィダリオンの逡巡(しゅんじゅん)の間にヘカトンケイルの腕が降り上がる。


「家の中は俺に任せろ!!」


後方から機動鋼馬ベオタスに跨ったホットスパーが大音声と共に巨人の周りを複雑な軌道で1周りすると金雀枝家へと降下していく。


「頼むぞホットスパー!行くぞ、マリニエール、メガイロ!今度こそお前達の目を覚まさせてやる!」


ヴィダリオンは剣を振り上げ猛然と巨人へ向かっていった。

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