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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
1章 機士の章
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第2話 宝石は図像獣のはじまり①




  剣王町旧市街の空き家


異世界から来た黒機士ヴィダリオンがブルクレスタ―を倒してはや2週間が過ぎていた。


剣王町旧市街の表向きは有名な化け物屋敷として知られる空き家の2階で黒い影が2つ、話し込んでいた。


「プレハよう、あたらしいクレスト作る方法みつかったか?」


黒づくめマントを頭からすっぽりかぶった邪教武僧団マレフィクスの神官ガルウが同じ神官で技術者でもあるプレハに尋ねる。


「この世界と我らの世界では根本的に地質が違うようだ。この世界は魔力が無い。故にこちらの魔力に拒否反応を示すのだ。多量の魔力を込めれば現状でも可能ではあるがそうなるとこちらが力尽きる方が早いだろう」


「つまりどうする?」


じれったそうに神官ガルウが急かす。彼は今はいない3人目にしてリーダー格の神官ザパトやプレハと違い頭の回転は鈍い。それだけに教団の教えに純粋かつ好戦的でもあった。


「この世界のクレストの材料つまり宝石類を加工し、この世界に合った形質のクレストを造り出す。変化を見たいから原石と加工品どちらも欲しいな」


「どうやってそんなこと?」


「出来る」

紺色の背広姿に眼鏡をかけた男が階段を上がってくるなり断言した。その男の発する魔力から2人はその男がザパトの変身した姿だと知る。


「出来るのか?」


「ああ。話は聞かせてもらった。その件に最適な図像獣を創る場所を見つけたのでな」


ついてこいと手で合図してザパトは玄関へ降りていく。2人も続いた。


「外をうろつくときはこの世界の人間とかいう、知的生命体に擬態した方が良い」


「そうだな」


ザパトの提案に頷くとプレハは銀髪の大学生風の美女に、ガルウは小太りで丸坊主のヤンキー風の男にそれぞれ変身する。異世界の彼らにとってはただの擬態であるがこの世界の住人達からすれば異様な組み合わせの3名はザパトの案内に従って旧市街の一角にある工事現場へと向かった。

ザパトは取り出した青い石に魔力を込める。


「そんなに魔力つかったらきけん」


「グウッ・・!今回限りだ。その為にも失敗できんのでな」


急激な魔力消費は変身魔法を維持できないほどであり、ザパトの体が一瞬巨大なコウモリのような姿に変わる。黒いマントに全身を覆われた神官姿に戻ったザパトはその鋭い爪で通行人に注意喚起を促す立て看板からヘルメットを被ったモグラの絵を切り取るとそこに石を入れると絵は一瞬にして青い楔型の宝石に変わる。そしてその楔型の宝石を1人の作業員の使う電動ドリル目掛けて投げつけた。


「君達、何のイタズラを・・・う、うわっ!?」


電動ドリルは青い光に包まれ、ツルハシ状の両手足に先の尖った帽子を被ったラテン系の民族衣装を着たモグラ型図像獣モールクレスタ―へと変化した。


「行け、モールクレスター。お前の使命は既に我が魔力にて伝えてあるはず」


「モルッ!!」


モールクレスターは先端の帽子をドリルに変形させたモグラ型ドリルタンクというべき姿に変形し、けたたましい音を響かせて地中へと消えていった。


「さて、この連中はどうする?」


「死んでもらう」


「それおれやる」


プレハの問いに当然と言わんばかりのザパトの答えに嬉々としてガルウが舌なめずりをしながら作業員達へと襲い掛かった。




同時刻


剣王町・住宅街・星川勇騎の家


2階にある彼の部屋で勇騎とその幼馴染の金雀枝杏樹は休みの日は互いに調べたクレスタ―探索の報告会を開いていた。


「ここも異常なし、っと。やっぱり旧市街の奥の方まで行かないとダメかな?」


「でもなあ。あの辺崩れる危険のある家もあるからって工事中のとこも多いし」


床に広げた剣王町の地図に印を付けていく。


「なあ、ヴィダリオン。あいつらの目的って何なんだ?単に町を破壊したいだけなら魔法でドカーンでいいじゃんか。それをわざわざあんな繭の中から怪物を出して暴れさせるってのはなんかこう、非効率な気がするんだよな」


勇騎は壁のハンガーにかけられた杏樹の制服の上着、厳密にはその胸にある校章に向かって呼びかける。これらの作業もこの杏樹の校章とヴィダリオンなる騎士(彼らはそう思っている)が融合した事がそもそものきっかけなのだ。


「俺もそう思う。だが何故そんな事をするかと聞かれても俺にも分からん。興味もないしな。神官共を捕まえれば判るのではないか?」


「じゃあ、あなたの興味のある事って?それに何でここに来たの?クレスタ―が現れない日は今日もそうだけど今の今までずっと寝ているみたいだけど?」


「それは主、来るべき時の為に英気を養っておく必要があるからです。ユウキからも聞いたと思いますが戦闘は殊のほか気力体力共に消耗するのです。ここに来た理由は・・・・そうですね。関係者なぞいないからいいでしょう。どういう訳かある人物と間違えられて送り込まれたのです」


「訂正しなかったのかよ。てかその人って?」


『私と同じ名でヴィダリオン、我が一族の長で勇者と讃えられる御仁だ』


「そんな大役、あなたの性格なら引き受けなさそうだけど。ここに来たい理由が何かあったの?」


『流石は主、慧眼です。実の所興味関心は特に無かったのですが上からの小言や嫌味を言われなくて好き勝手振る舞えると思い、取るものもとらずその命令に従ってこの次元にやってきたのです』


「あはは・・・・まあ正直でいいんじゃないかな」


「なんじゃそら。駄目だろこんな奴じゃ。早くその勇者を連れてきてくれよ」


ヴィダリオンのカミングアウトに呆れる2人。


『残念だがユウキ、次元の扉はそう簡単には開かん。最低でもあと1か月は先だ』


「マジかよっておおおお!?」


「きゃあ地震!?」


突如として凄まじい振動が一帯を襲う。勇騎は杏樹を机の下に隠れさせ自分は蹲って頭を両手で覆う。振動は10秒ほどで収まった。


「ふう、収まったか。まさかこれ余震か?」


「ねえ、この振動何かおかしくない?ほら外」


窓の外を見る杏樹の視線を勇騎も追う。確かに彼女の言う通りだった。揺れているのは近所のごく一部の場所でしかもその揺れはどんどん遠ざかっていく。


「もしかしてクレスタ―の仕業?勇騎君、この先って確か」


2人は顔を見合わせた後ハッとなって床に広げた地図を見る。


「「狙いはもしかして繁華街!?」」


「行こうぜ。具体的に何の目的か、そもそもなんで繫華街を狙ってんのかもわかんないけど」


勇騎は立ち上がる。


「うん」


杏樹も制服の上着を羽織って共に外へと出る。外に出ると彼らの見える範囲では既に振動は収まっておりいつもの住宅街ののどかな光景が広がっていた。



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