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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
最終章 聖杯の章

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第15話 復活!?暗黒の支配者④




  暗黒魔械竜マレフィクスの放った熱線の余波は剣王神社まで届き熱波と衝撃に建物が、いや山全体が激しく振動した。


「う・・・・どうなったんだ!?」


境内に腹ばいに伏せていた星川勇騎が顔を上げると風に乗って金属の焼ける匂いがムッと漂ってきた。


「これは!?」


「艦隊が・・・壊滅状態ではないか!?」


彼に倣って続々と体を起こした機士団の面々はマレフィクス討伐の為の大艦隊が既に半壊し、残った船も1つ残らず火炎と衝撃で損壊しているのを見て愕然とした声を漏らす。


「行きましょう!まだ生き残っている方がいるかもしれません」


「そう行きたいですが、お邪魔虫を片付ける必要がありますね」


看護兵としての矜持から神社から飛び出さんばかりのハダリーを制してカローニンが空を見上げる。

遠くへと去って行く黒竜とは反対に何か黒いモノが神社へと近づいてくる。合体図像獣キマイラだ。


「よほど俺達を行かせたくないらしいな」


「それだけ評価されている、という事でしょう」


「時間をかけられん。連携攻撃で速攻で落とすぞ!!」


「「「「「ヴォ―セアン!!」」」」」


ヴィダリオンの指示で各自それぞれのコートオブアームズを展開。ハダリーはティレニア号を呼び出し、艤装合体ナイトハダリーとなると図像獣の真正面に立って敵を見上げた。


「各員へ。敵の動きがさっきより動きが鈍い。何かまた企んでいるかもしれません」


マリニエールが注意を促すが他の5騎の目には3つの口から火炎・熱線・弾丸・左腕からの針を一斉に発射するキマイラに変化があるようには見えない。


「どこがだよ!?ハダリー逃げろ!」


「いいえ!逃げません!!月輪奥義・朔望(さくぼう)


それはただ刀を両手に握って前に突き出しただけに見えた。だが彼女を狙った緑の熱線はともかく建物や他の機士を狙う軌道にあった他の攻撃も見えない磁力に引き寄せられるようにハダリーの刀へと集まってくる。


月輪奥義・朔望


カウンター技の集大成である月輪の中で新月を意味するこの奥義は相手の攻撃を受け止めて跳ね返すという最大難度の技である。1つだけならばハダリーも完全に跳ね返せただろうが相手は合体図像獣、それもその遠距離攻撃全てを跳ね返すには彼女の膂力が足りなかった。



「くうっ!?カローニン様、お力添えを!」



「よし、紋章剣奥義・烈風波濤壁(れっぷうはとうへき)!」


よって彼女は仲間を頼る。同じく敵の遠距離攻撃を跳ね返す技を持つカローニンと力を合わせる事で相手の攻撃をそっくりそのまま食らわせる事に成功した。


これに合わせる形でメガイロもコートオブアームズ・スアニューレットカノンを発射。


だが自分の攻撃と相手の砲撃1発で死ぬほどキマイラもヤワに造られてはいない。例え無理な合成によって既に肉体崩壊が始まっていても爆発の中微動だにしない。


「いくぞ!!」


黒煙を切り裂いてコートオブアームズ・ブースターレイブルで飛翔したヴィダリオンが右から迫る。迎撃の為キマイラが右手のハルバードを振り上げた瞬間第二の影がヴィダリオンを遮った。


「貰ったァ!!」


影の正体はコートオブアームズ・スターシールドを槍に変形させたホットスパーだ。先程正機士叙任で6倍にパワーアップした彼はその強化された突撃能力と脚力でヴィダリオンの前に飛び出すと自身の加速と背中を押すヴィダリオンによって更に増した超スピードで背中の羽を付け根から抉り取った。その直下、すなわち背中にはヴィダリオンの剣によって大きな傷ができる。


だが落下より先にキマイラの体は再生を始めていた。そこにマリニエールの蛇腹剣が傷の再生を阻害するように巻き付く。


「今です!」


もがくキマイラを必死に抑えながらマリニエールが叫ぶ。


「応!紋章剣奥義・永久の太刀!!ヴォ―セアン!!!!」


急旋回したヴィダリオンが高速で回転し、キマイラを真っ二つに切り裂いた。


「やった!皆の力を合わせた勝利だ!!」


勇騎は快哉(かいさい)をあげる。だがキマイラは真っ二つになったままだった。


「あれ?爆発しない?」


「まさか!?皆さん下がって!!」


カローニンの危惧通り、切断されたキマイラの体は元通りにくっ付くとそのまま巨大化を始める。

その大きさは黒竜に全く及ばないものの人間や機士には十分すぎる程の脅威だ。


「ホットスパー、合体は・・・・」


「ヴィダリオン、さっき言ったろ。中身は変わらねえって。今まで通りいくぜ!」


「すまん。ハダリー、ティレニア号で町の人々の救護活動を。ドラゴンに気を付けるようにな」


「はい。皆様ご武運を」


「俺達も行こう」


「ええ」


ナイトハダリーはティレニア号と分離し、勇騎と金雀枝杏樹と共に船に乗って町へと降下していく。


同時に機士達は合体を開始。頭部と両肩そして二の腕がヴィダリオン、両前腕がホットスパー、胸部が伸長し頭部が胸の中央に配置されたメガイロ、両足がマリニエール、背部はコートオブアームズ・チェンジマートレットとなったカローニンがブースターレイブルと合体し装着された重装合体ヴィダリオンとなる。


船を撃墜すべく胸の山羊の目から熱線を放つ巨大キマイラの前に立ち塞がると5騎の盾を合体させた大盾で防ぐ。キマイラは熱線を照射したまま空を飛び、上空から獅子の口の火炎とサソリの口からの弾丸を敵の頭上から連射、重装ヴィダリオンも背中の翼とブースターで飛翔し、盾を構えて突進しつつ、右肩のアニューレットカノンを発射。

だが巨大化したキマイラの空中での運動性はヴィダリオンに勝っており大砲をひらりとかわすと背後を取り、背面へハルバードを振り下ろした。


『俺に任せろ!コートオブアームズ・スターシールド!』


ホットスパーは右腕に星型の盾を展開すると振り向きハルバードを受けるとそのまま盾から槍へとスターシールドを変形させる。当然、敵の武器に阻まれて完全には変形しない。だが5つの突起がハルバードをガッシリと固定し抜けなくしてしまった。


『やりますね。ならばコートオブアームズ・クレッセントカッター!』


マリニエールが4つのブーメランを飛ばし、キマイラの羽を切り飛ばす。キマイラは落下しつつも火炎や熱線をなおも撃ち続ける。


『アーキバスランチャー、セット!』


「紋章剣合体!!紋章騎槍!」


メガイロがアーキバスランチャーの発射準備をしつつヴィダリオンは5騎の紋章剣を合体させ1本の巨大な槍へと変えると銃口にねじ込んだ。


「アーキバスランサー発射!!ヴォ―セアン!!!」


射出された槍は敵の胸を貫き、巨大な穴を開ける。


断末魔の叫びも上げず、静かにキマイラはその体を爆炎と火花へと変えて消滅した。

「急ぐぞ!城が心配だ」



デウスウルト城


「ドラゴンへ注意しつつ周りの敵を攻撃せよ!!連中を中に入れるな!」


貴顕衆の1人マイロビーク卿が城壁に立ち、配下の機士達に矢継ぎ早へ指示を飛ばす。


戦場のあちこちから響く剣戟、怒声。それらを貫くように時折城壁に備え付けられたバリスタや大砲の発射音が響き、黒い塊を四散させた


機士達の本拠であるこの要塞の城門前では機士達がどこかから現れた大量の図像獣とそれを指揮する3神官達と激烈な戦闘を繰り広げていた。


「あいつらやるな。俺も加勢する」


「ガルウ、あまり深入りするなよ。あくまでこれは陽動。目くらましだという事を忘れるな」


「へへへ。ザパトよう、どっちが早いかしょうぶ、しょうぶ」


「フッ、我らが主の体の細胞1つ1つがクレストなのだ。つまり無限の軍団に勝てる存在などないわ」


「じゃあ、プレハ、俺手柄立ててくる!!」


図像獣軍団の背後にいたナイトクレスター・ガルウは文字通り稲妻となって一気に最前線へと躍り出ると機士達をあっという間に吹き飛ばし、電撃の爪で城門を紙の様に引き裂いてしまった。


「馬鹿な!?だがこのマイロビークが相手だ!」


「あ?」


剣を抜き城壁から飛び降りたマイロビーク卿は生きて異世界の土を踏むことは無かった。


落下する合間にガルウに超高速の雷撃の連撃を叩き込まれ、声を上げる間もなく感電死してしまったのだった。


前線の指揮官を失い浮足だつ機士達。勢いを得た悪魔の軍団が殺到するが撤退の命令が出ていない以上はここに踏みとどまり戦うより他はない。それが機士団の掟なのだ。


「まだ、ヴィダリオン卿がいる!!あの方がいる限り負けはない!!このまま何としても持ちこたえるのだ!!」


「ヴォ―セアン!!」


正機士の1人の檄が飛び、それに応える鬨の声。勇者ヴィダリオン卿の存在を唯一の拠り所にして機士達は決死の防戦を行う。


だが城門前の防戦は無意味だった。既にモールクレスターの手引きでバットハイクレスタ―=ザパトとスパイダーハイクレスタ―=プレハが要塞の深奥、ザルツァフォンのいる円卓の間に地下からトンネルを掘って直接やって来ていたのだ。


「健気な事だ。貴方の目論見を知れば全ての機士が何というか。しかもたった一人逃げ戻ってくるとはね」


せせら笑うプレハ


「私は組織の長だ。その権利がある。それよりも約束が違うぞ!!聖杯と引きかえに組織を解体し、どこか別の次元に去るという事ではなかったのか!?」


「勿論。組織は解体する。今この時を持って聖戒機士団と我がマレフィクスは1つとなるのだ」


ザパトはザルツァフォンに飛び掛かり青いクレストを彼の体に埋め込む。


「な・・・馬鹿なあああアアアアァ!?ま・・・・ま・・・さ・・か」


「そのまさかだよ、ザルツァフォン。もうじき勇者ヴィダリオンも同じ運命を辿る」


自身の体に取り込む総長に向けて最後の絶望を植え付けるザパト。その言葉に全てを諦めたザルツァフォンは全ての抵抗をやめた。


ザルツァフォンとザパトの体がクレストを中心に融合し、青白い炎に包まれた鎧兜を纏った幽霊機士ナイトクレスター・ザパトへと変化する。


同時に場内を激しい振動が襲う。


「!その時が来たようだ」


「では我らが主の計画の最終幕を見ようではないか」



炎上する艦隊を縫うように一隻の帆船が錨を上げて宙を舞う。ヴィダリオン卿の坐乗艦である。異変が顕れて直ぐに彼は艦隊へと戻った。だが黒竜の放つ威圧感に当てられて艦隊も彼自身も気圧され、立ち直る間に艦隊は半壊の憂き目に遭ってしまったのだった。



「このまま進路を真っ直ぐ取れ!」


「ヴィダリオン卿!?一体何を?」


「決まっている!あの黒竜を倒す。俺には分かる。あれが全ての元凶なのだ。あれを倒せば全ての図像獣も邪神官も滅ぶ」


もし表情があれば兜の下は顔面蒼白であろう部下を叱咤しつつ、希望を説くヴィダリオン卿。


「ハ・・・・ハッ!!」


「速力を最大にしたらお前達は船を降りろ。このまま私は船と共に特攻する。それに巻き込みたくない」


「そんな・・・自分も御供いたします!」


「あのな、俺1人なら奴を斬って助かる方法もあるが何人もとなると話は別だ。分かるな?」


「・・・・・分かりました。ご武運を!」


小舟で地上に降りる部下達が安全に地上に降りる様を見て、マレフィクスの意図を図りかねるヴィダリオン卿。


(そういえばあの一撃以降奴はただこちらに歩いているだけだ。何を企んでいる?)


だがチャンスでもあるのだ。これを逃す手はない。


「巨大図像獣よ!!暗黒の竜よ!!この私と一騎打ちだ!!」


剣を正眼に構え、船の舳先に立ち大音声で呼ばわるヴィダリオン卿に暗黒魔械竜マレフィクスも咆哮(ほうこう)で応える。その口が再び業火に彩られる。


「いくぞ!紋章剣・終の太刀!!!」


矢の様に空を飛ぶ帆船目掛けて熱線が迫る。


だが熱線はヴィダリオン卿の剣に真っ二つに『割られ』届かない。


それでも超高熱の嵐は帆船を炎に包むが勢いは止まらない。


完全に船が焼け落ちるのと同時にヴィダリオン卿の剣が黒竜の口内を貫いた。


「ヴォ―セアン!!!」


気合一閃。そのまま一気に切り下ろす。


「グオオオオオアアアア!!!?」


全身から火炎を吹き出し巨大な火柱となって暗黒魔械竜マレフィクスは爆炎と共に滅び去った。


その首を残して。


「何っ!?」


その首が笑ったように見えた。いや事実笑っていた。


宙を舞い落下した首は全力を絞りつくして脱力したヴィダリオン卿へ噛みつくと黒煙を噴き上げて自身と機士を覆う。


「この時を待っていた・・・・悠久の時の中で劣化した体に代わる、新たな強き肉体を・・・・それはお前だヴィダリオン卿!!当代一の勇者の肉体こそ我に相応しい!!」


「グ・・・・まさかそれが・・・・!?」


首は黒い粒子となり、その中にあった聖杯が赤黒い光を放つとヴィダリオン卿の体に入り込みその身を変容させる。


「ヴィダリオン卿!!」


その場に駆け付けた重装ヴィダリオンの叫びに魔竜に取り込まれた勇者の意識が表層に浮かぶ。


聖骸布(せいがいふ)を・・・・さ・・・が・・・せ・・・・」


その言葉が勇者の最期となった。


頭頂部と側面から後ろに伸びる3本のねじくれた角を持つ兜


胴体は竜の頭そのものであり、横に大きく張り出した肩パットを持つ腕。


二股に分かれた爪を持つ足


黒竜鎧神マレフィクスは背中の巨大な被膜を持つ1対の羽を広げ高々と宣言する。


「今こそ聖戒機士団は我らが教団と一つになり生まれ変わる!ザパトよ、総長の権能を持って全ての団員に号令せよ!!」


「ハッ!機士諸君!我らが新たな守り神にして全能の主マレフィクスに(こうべ)を垂れよ!」


「グ…合体が解ける!?」


重装ヴィダリオンの体に紫電が走り合体が解かれ5騎は縛り付けられたように地に伏した。


機士団長ザルツァフォンの肉体と精神を持つナイトクレスター・ザパトの命に主従関係という絶対の忠誠を持たされている機士達は邪神官らと共に一斉に(ひざま)くのだった。


ただ3騎を除いて。

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