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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
最終章 聖杯の章

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第15話 復活!?暗黒の支配者②




 「ひさしぶりだな。俺をおぼえているか?ヴィダリオン!」


「ゲッグ!?いや違う?その声はいつぞや粛清されたあのクレスターか?」


屈辱の怒りに燃えるナイトクレスター・ガルウは先日戦った傭兵隊長ゲッグを取り込んでいる為色こそ違え、その鎧の形状は似ている。似ているだけにその声の違いに戸惑うヴィダリオンへ怒りを爆発させたガルウは両手の爪をこすり合わせ火花を散らすと同時に低く遠吠えすると瓦礫を山を飛び降りる。


「ム…ぐッ!?」


他の従機士など目もくれず、ガルウは着地と同時に文字通り一条の稲妻となってヴィダリオンへ突っ込んだ。盾を構えたヴィダリオンは盾表面に突き立った爪から流れる電流に痺れながら土煙と火花を上げて後方の瓦礫の山へと敵諸共激突した。


「ヴィダリオン!?勇騎君、ハダリー、私達は避難誘導を!」


「よし来た!」


「はい!」


「聞いたな!あの怪物を避難民に近づけるんじゃねえぞ!」


「「「応!」」」


ホットスパーを始めとした従機士4人の声を背に金雀枝杏樹(えにしだあんじゅ)と星川勇騎そしてハダリーはヴィダリオンとガルウが突っ込んだ山の左側、まだ混乱のただ中にある避難者でごった返している中へと向かっていく。


「落ち着いて!こちらに」


声を張り上げ、右手で伸ばして避難先を示す杏樹の肩を若い女性が掴んで懇願する。


「まだ、まだあの子が中に・・・!」


「ええっ!?どこに!?」


「あそこに・・・!」


母親の示した先は今にも崩れそうな団地の一棟だった。


「ハダリー、行くぞ!杏樹はそのまま誘導を!」


勇騎はハダリーと杏樹の返事を待たず、その建物へ走る。その目と鼻の先で弾丸が炸裂して地面と入り口のコンクリートが爆ぜ、落下したコンクリートが彼の頭を直撃する直前カチャカチャとハダリーの駆ける音と背中に衝撃を感じて勇騎はハダリーと共に団地の階段に倒れ込んだ。


「いてて・・・助かったよハダリー」


「無茶し過ぎです」


「うぇ・・・急ごう。いつ崩れてもおかしくないぞ」


天井からパラパラと落ちてくるコンクリートの破片に冷や汗をかきながら主従は階段を上る。



「これ以上はさせませんよ!」


合体図像獣キマイラは背中のコウモリのような羽を広げると目の前の従機士ではなくその後ろ、つまり勇騎達が向かった建物へ腹部のサソリの口から弾丸を連射。1拍遅れてマリニエールが蛇腹剣を振り回してその一部を弾いたが、残りは建物近辺を吹き飛ばした。


キマイラは攻撃を邪魔されない高度を取ろうとさらに上昇するが、それを阻止せんとマリニエールが右足に蛇腹剣を巻き付け引き寄せる。だがキマイラは自身を邪魔するマリニエールではなくあくまでも破壊活動を優先し、周囲の建物へ三つの頭から火炎と熱線、弾丸を発射するのをやめない。


「ベオタス、フェザーブレイド!奴の攻撃を防げ!」


ホットスパーは機動鋼馬ベオタスの翼から羽の剣を射出しそれらの攻撃への盾とする。同時に愛馬に拍車を当て、急上昇。コートオブアームズ・スターシールドを槍へと変形させフェザーブレイドが火花を散らして散っていく中を突撃する。


キマイラが右手のハルバードを振り下ろす。ベオタスは急停止、斧槍を左手の槍で受けたホットスパーの真後ろから一直線に並んでいたコートオブアームズ・チェンジマートレットで飛行形態となったカローニンが飛び上り、キマイラの背後へ回り、羽をもぎ取るべくその爪を振り下ろす。それと同時にベオタスが急降下、彼らの後ろでメガイロがコートオブアームズ・アニューレットカノンを砲撃。


だが


「何ッ!?グワッ!」


キマイラは右のコウモリ状の羽をサソリの鋏に変形させ逆にカローニンを捕らえ締め上げる。一瞬後大砲の直撃を受けたが、かすり傷一つ負うどころか全く動じることなく滞空していた。


「いかん!?コートオブアームズ・クレッセントカッター!」


カローニンを救う為マリニエールが4つのブーメランを飛ばす。だが3つがビームか火炎に阻まれ、最後の1つもハルバードで撃ち落とされた。


「まだだ!」


残された1つを蛇腹剣の先で引っかけ軌道を変更、キマイラの後ろから垂直に上昇したブーメランは見事右羽を付け根から切断した。


「ホットスパー、あの付け根を狙いましょう!」


「よっしゃ!」


脱出したカローニンは再度急降下、ベオタスを敵の背後に回したホットスパーと共に落下するキマイラの傷口を攻撃すべく上下から襲い掛かった。が、キマイラは1mも落ちない内に自身の羽を再生すると鋏に変じ、逆に2騎に向かって振り上げた。


「いけねえ!?」


「再生が早すぎる!」


2騎は急展開して距離を置かざるを得なかった。



一方キマイラと4従機士が死闘を繰り広げている最中残ったナイトクレスター・ガルウは瓦礫の山を貫きながら仇敵ヴィダリオンを押し込むと盾に刺さった右手の爪を切り離すと再度稲妻の如く急上昇と急下降を繰り返してヴィダリオンを電撃と斬撃を見舞う。


「グウっ!?早すぎる!」


ヴィダリオンの目にはガルウの通過した事を示す電光が周囲に見えるだけである。


(何とかして奴を捉えねば・・・・だがどうする?)


闇雲に剣を振り回して当たる相手ではないのだ。考えている間に瓦礫が舞い上がり、電光と同時に胸に鋭い痛みと衝撃が走り、ヴィダリオンは電熱で熱された大気に炙られながら瓦礫の中を転がった。ヴィダリオンは気がつかなかったがその後ろは偶然にも勇騎とハダリーが入って行ったあの団地の近くだった。


「これだ!」


「なにが?」


ヴィダリオンは。回転しながら何度も剣を大きく下に円を描くように振り下ろし、逆袈裟に切り上げる


「紋章剣奥義!疾風竜巻返し!!そこか!!」


ヴィダリオンの周囲にいくつもの巨大な熱い竜巻が巻き起こる。その1つに見事ガルウを捕らえる事に成功した。


「ゲッ?なぜわかった!?」


「分からなかったさ。だが瓦礫の中を歩けば足跡が出来る。狙いは俺である以上そう遠くはないはず。そしてその歩幅からお前の攻撃の間隔を予想したのだ!」


「ヴィダリオン様!これを!!」


階段の踊り場から顔を出したハダリーはアーキバスランチャーを投げ渡す。


「助かる!」


ヴィダリオンは装填と発射準備を素早く終えるとガルウを狙う。


「アーキバスランチャー、発射!!」


圧縮されたエネルギーの光弾が放たれる。竜巻の結界を打ち破り飛び出したガルウでもこのアーキバスランチャーの弾丸を完全に躱すには無理があった。左脇腹の装甲を吹き飛ばされながらガルウは呻きながら瓦礫の中を転がる。


「やるな!だがおれもキマイラもげんきだ・・・・!」


ガルウは左後方の羽を再生させたキマイラを見やると、健在をアピールするかのようにパンパンと脇腹を叩く。


「躱されるとは・・・・む?あの船は!?」


突如聖戒機士団の紋章と3つの盾が並んだ紋章を付けた2つの旗を付けた帆船が1隻、剣王町の空に突如出現した。


「きたか・・・かえるぞキマイラ!」


ガルウは突然の事態に驚くヴィダリオンを尻目にキマイラと共にその場を去って行く。




「よしよし、もう大丈夫だからな。もうはぐれるんじゃないぞ」


「ありがとうお兄ちゃん!」


「本当にありがとうございました」


取り残された女の子を母親の元へと救出した勇騎とハダリー、杏樹は改めて空に浮かんだ帆船を見上げる。


「あの旗は誰のなんだ?」


「あれは・・・・ヴィダリオン卿の旗です。当代一の勇者と名高い最強の機士である・・・」


「その人って確かホットスパーの主でヴィダリオンの親戚だっていう?」


「そうです。すみません、私はこれで」


ハダリーは2人に一礼すると既に1列に並んでいるヴィダリオンら5騎の許へと小走りに向かった。


船の舳先から人影が見え、影は音も無く瓦礫の山へと舞い降りるとこちらに近づいて来た。


黒のヴィダリオンと同型の、白銀に輝く鎧は圧倒的な存在感と威風を放っている。彼が目の前で足を止めた瞬間6騎の機士は一斉に跪いた。


「皆、立つがいい。いくつか伝えねばならぬ事もあるからな」


勇者ヴィダリオン卿のその地位に違わぬ威厳に満ちた声が響き渡った。

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