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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
好敵手の章

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第14話 敵傭兵隊長最後の挑戦②



群青色の空の下見渡す限りの高原。


ヴィダリオンはディバインウェイブで作り出した異空間に着くと同時に機動鋼馬マスルガを呼び出し、跨ると眼前のゲッグとガイオスへ向けて走らせた。


「次会う時が貴様らの最期だと言っただろ?約束を果たしに来たぜ!」


ゲッグも愛馬ガイオスに拍車をくれるとガイオスは平原を疾駆(しっく)しつつ前脚の蹄と角からの電撃を迸らせる。


「ウっ・・・!マスルガ、フレイムボンバー投射!」


3方からの電撃をジグザグに躱しながらヴィダリオンもマスルガに尻尾のクロスボウを撃たせて迎撃する。


騎乗戦闘ではとにかく相手の機動力を削ぐ事と自身の攻撃に有意なポジションを取る事が肝要なのだ。すなわち相手のスピードを殺してしまえばその突撃力は半減してしまう。


お互い先のライオンクレスターの仕組んだ馬上槍試合でその実力の一端を知っているだけにこの点は慎重だった。


(だが遠距離での攻撃はこちらが不利だ。加えて向こうのハルバードの間合いはこちらの倍以上もあるのだ)


遠距離での駆け引きが長引けば長引くほど不利だと悟ったヴィダリオンはゲッグの真正面に位置取りマスルガの後脚のブースターを吹かして突進。


「その速度で俺は落とせん!」


火花を上げて地を這う蹄の雷撃を一足飛びしてヴィダリオンが剣を振り上げたタイミングでゲッグは左腕のランタンシールドを投げつける。ランタンシールドの外周に仕込まれたノコギリ状の刃が防御の為に突き出されたヴィダリオンの盾の表面を切り裂くと同時にガチッという何かが外れる金属音と共にランタンシールド内部に仕込まれたスパイクが飛び出して盾を貫通、ヴィダリオンの左肩を傷つけた。


「ク、グッ!まだだ!!」


盾を投げ捨てながら手綱を掴んで右に崩した体勢を立て直したヴィダリオンの眼前にハルバードを振り上げたゲッグが左から迫る。


「取った!!」


単純に戦闘での勝利を期すならゲッグはガイオスの電撃攻撃を続けるだけで良かった。だがそこは彼としても戦士としてのプライドから自らの手で相手に止めを刺す事にこだわったのだ。


この位置、この状態ではまともな反撃は出来まい。勝利の確信があった。


だがヴィダリオンはマスルガのブースターを切って急停止させると同時にマスルガの首を下げさせると反動で前に飛び出すと同時にコートオブアームズ・ブースターレイブルを背部に装着して急加速、ハルバードの間合いの内側に飛び込むと同時に剣を振り上げた。


「いかん!」


ゲッグは咄嗟に手綱を引き絞り、ガイオスを棹立ちさせた。剣はガイオスの腹部と首の表皮を切り裂いただけに終わったが完全に上を取ったヴィダリオンはガイオスの頭部を蹴り飛ばし乗り手諸共横転させた。


「ゲッグ、武人の情け!愛馬諸共に()かせてくれよう!」


ブースターレイブルを吹かせて急降下しつつ剣を振り下ろすヴィダリオン


「な、何っ!?」


眼前でゲッグとガイオスが合体し、左の肘から光の盾を形成し、ヴィダリオンの剣を防ぐとハエを払う様な手つきでヴィダリオンを()ね飛ばす。


「俺にこの姿を取らせた以上、もう貴様は死ぬしかないぞヴィダリオン!」


ゲッグの奥の手にして最大最後の武器でもある合体形態ゲッグ・ウィクト―ル。


4mを超えるその巨躯がヴィダリオンを見おろしていた。




現実世界


剣ヶ峰学園校庭


「これは・・・・!」


「ひでえ・・・!」


新井陸からの連絡で学校へと急ぐホットスパー・マリニエールそしてハダリーとその主である星川勇騎は穴だらけの校庭と滅茶苦茶踏み荒らされ焼け焦げた花壇、その奥の壁に大穴が空いている惨状を見て怒りで身を震わせる。


「皆は逃げたみたいだな」


「そのようです。しかしこの穴はどうやって?」


「分析してる暇はねえぞ。(やっこ)さんのお出ましだ」


校庭の穴に目を向けるマリニエールにホットスパーが注意を促す。


壁の奥すなわち1階の教室の中から血の様に赤い汗を流す毛むくじゃらの体に両肩からそれぞれ1mほどの角を生やしたケンタウロスのような合体図像獣エアレーが現れた。


「へっ、何かと思えばケンタウロスの改良型か!真正面から芋刺しにしてやらァ!」


「待て、ホットスパー!」


マリニエールの制止も聞かずコートオブアームズ・スターシールドを槍状に変形させ両足の拍車を接地させると、ローラーダッシュと共に突撃する。エアレーもその挑戦を受ける様に吠えると猛然と突っ込む。


「ゲッ!?」


エアレーの両肩の角はスターシールドより長い。その2本の角を鋏の様に使って槍を挟み込むとエアレーは角を後方へ回転させ投げ飛ばした。放り上げられたホットスパーは落下直後に爆発した。


「な・・・ホットスパー!?」


「アチチっ!なんじゃこりゃあ!?」


心配する勇騎に答える様にホットスパーはマントを焦がしながら煙と共に這い出して来た。


「やはり何かある。それを解明しない事にはッ!」


「ユウキ様、お下がりください!」


マリニエールと勇騎を庇ったハダリーは鼻息荒く突っ込んで来たエアレーを左右に避ける。2騎の着地と同時に周囲の地面が爆発し土煙と砂礫を飛ばす。


「見たぞ。奴の・・・・!伏せろ!」


「失礼します!」


「何をっておわっ!?」


ハダリーに強引に頭を下げさせられた勇騎。彼の頭の数cm上を鋭利な角が通り過ぎていく。


片膝をついて何かを調べていたマリニエールはその優秀な分析機能が怪物が煙越しに角を伸ばしてくるのを探知し、傍らの勇騎・ハダリーコンビに回避を促したのだ。


「広がれ!奴の体の赤い血・・・・!あれの1滴1滴が強力な爆薬なのだ」


3方に大きく間を取って広がる3騎と1人。エアレーはホットスパー目掛けて突進しながら手に弓を持ち連射しつつ、肩の角を横に広げて伸ばす。マリニエールとハダリーは降り注ぐ爆薬の雨を盾で防ぎ迫りくる角をしゃがんで躱す。だが角はぐるりと回転して2騎と1人を絡め取ると背中から飛び散った赤い汗目掛けて投げ飛ばす。


「おっとあぶねえ!」


ホットスパーは天馬型機動鋼馬ベオタスを駆り、空中で受け止めると高度を上げる。エアレーの持つ弓の射程から逃れる為だ。


「さっきの話だけどよ。マリニエール、俺達はそれほど痛手は受けてないぜ?」


「それは私達の体が頑丈なのと運が良いからです、ホットスパー。この世界の建物などは奴の汗数滴で吹き飛ぶ」


「それじゃ、1階の教室の惨状はその爆薬の汗のせいってことか!?なら容易に近づけないし攻撃できないぞ」


「近づけないなら離れて攻撃すればいいですけど爆発時の被害が・・・・」


「それは俺とマリニエールのディバインウェイブで爆発を防いでやる」


注意をこちらに向ける為にホットスパーは弓矢を躱しつつベオタスを降下させる。


「問題はあの暴れ山羊をどう大人しくさせるか、ですね」


ハダリーはベオタスにしがみ付きながらため息を漏らす。


方法は分かっている。だが彼女には自信が無かった。



同時刻


剣王町・旧市街参道


「くっ!?」


「ぬう」


従機士カローニンと従騎士メガイロは対峙する合体図像獣マンティコアを猛攻撃に曝され続けていた。


ライオンクレスターとスコーピオンクレスターの特性を兼ね備えたマンティコアは遠距離からは右手の獅子の口からの火炎弾とタロスの頭部の目からの光線、そして左腕の盾にもなるサソリの尾の先端部を飛ばしたりと矢継ぎ早に攻撃を繰り出し、敵に反撃はおろか息つく暇をも与えない。先日のスコーピオンクレスターの毒の一件もあり2騎は防御する事も躊躇われる以上はどうしても躱す以外に選択肢はない。


「メガイロ、危険ですが接近戦を挑みましょう。少しでも攻撃を分散させなければ」


「わかった。気を付けろ」


カローニンはチェンジマートレットで飛行形態となると上昇、次いで旋回しつつ急降下を掛け両足の爪と嘴で敵の右側面を集中攻撃する。大したダメージは無い物の、自身の周りを旋回する鬱陶しい存在を排除すべくマンティコアは頭部からのビームと右手の獅子の口を模したクローを振り回す。


(もっとだ・・・左手の針も使ってこい!)


カローニンはわざと大きく旋回し、左側に回り込んでコートオブアームズ・アニューレットカノンの射撃準備に入るメガイロの体を隠す。苛立ちの咆哮を上げてマンティコアは左腕の針を伸ばして後ろからカローニンを串刺しにしようとするがその攻撃を読んでいたカローニンは宙返りして回避。針が目いっぱいに伸び切ったと同時にアニューレットカノンが火を噴き、周囲に爆炎が上った。


「よし!」


「直撃だ」


敵を排除したと気の緩んだカローニンは黒煙が薄れると同時足を挟まれて地面に叩きつけられ、メガイロも同時に放たれたビームの直撃を受けて火花を散らして倒れた。


「な・・・無傷・・・・だと!?」


驚愕するカローニンは再び地面に自分の足を咥えた獅子の口に叩きつけられて跳ね上がり、火炎弾を至近距離から受けて燃え上がりながら吹き飛ばされた。


「!無事か?」


更なる火炎弾とビームの追撃は割って入ったメガイロの盾で阻まれた。


「ええ、ありがとうございます。しかしこれでは・・・・」


攻撃が通じない。


煙が晴れた後、自身の健在を誇示するように雄叫びを上げるとマンティコアは静かに、だが勝利を確信しつつ、ゆっくりと両腕を敵に向けて油断なく歩を進めるのだった。

 

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