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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
好敵手の章

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第12話 命を懸けたトーナメント⑦




  ライオンクレスタ―をヴィダリオン・ホットスパー・カローニンの3機士が囲んだ。だがカローニンは槍を上げてヴィダリオンとホットスパーを制すると2騎は頷いて囲みを解いて後方へと下がった。


「素直に助力を得ればいいものをッ!」


彼の行動を侮辱と捉えたライオンクレスターは熊手状の槍を脇に抱えてケンタウロスを突撃させる。


「1対1の勝負こそ礼儀」


カローニンも機動鋼馬ヴァレルに拍車を入れて突進


一瞬後には双方の槍がぶつかり合い火花を散らして弾け飛び、ケンタウロスは棹立ちになってライオンクレスターを振り落とす。一方のヴァレルはカローニンの手綱さばきもあって持ち直し、主人は馬を鎮めるとひらりと降り立った。


「まだ勝負はついていない!秩序ある世界を乱させはしない!」


ライオンクレスターは新たに槍を形成するとカローニン目掛けて投擲。カローニンは盾を体の前に構えて衝撃に備えるが槍は穂先が分離し、後端から火を噴きながら爪を大きく広げ、盾をガッシリと掴んだ。


「いかん!?」


そう思った時には残った槍の柄で仰向けに転がされていた。


「盾ごと貫いてやる」


ライオンクレスターは穂先と柄を合体させ力を込める。ミシミシと細かいヒビが盾に入り砕ける直前


「ヴァレル、盾を!」


ヴァレルの胴に接続されたアームから盾が一枚射出され、槍とカローニンの間に滑り込んだ。


「味なマネを!」


再び槍を突き出すが今度は盾に跳ね上げられた衝撃で後退する。そこに電光石火の早業でカローニンに引き倒され、喉に短剣を突きつけられる。


「さあ、今度こそお仕舞いにしましょう。その力を捨て、皆を解放すれば貴女の望んでいた秩序が回復しますよ」


「秩序・・・・・私の望んだ秩序はちがあああう!?私の定めた事に皆黙って従っていればいいのよ!それが正しいのだから!?」


ライオンクレスターの絶叫と共に会場全てのタスキが光る。


「グ!?失礼!」


体を軋ませながらカローニンはライオンクレスターの鬣に短剣を突き立て削ぎ落しながら説得の言葉を紡ぐ。


「真の秩・・・・序は皆で作っ・・・ていく・・・・もの・・・乱れている・・・・のではなく守・・・・・れないので・・・・は」


魔力を発する鬣を切り落とすとライオンクレスターはバッタリと動かなくなりカローニンもその場で崩れ落ちた。同時に会場の全員を縛り付けていたタスキが次々と切れて青白い炎を上げて燃え尽きていった。


「会長!」


「俺達もちゃんと話聞けば良かったかな・・・」


金雀枝杏樹と星川勇騎はグラウンドへ降りようと席を立つ。


「待て!まだ終わっていない!ヴィダリオン、カローニンを!」


「魔力の暴走!?ユウキ様!」


「ハダリー!頼む。会長を救ってくれ」


「はい!」


ハダリーは柵を超えてグラウンドへ飛び下りようとした瞬間、ライオンクレスタ―は10mほどに巨大化し体のあちこちからピューマや虎、ジャガーといった様々な猫型動物の頭を生やした奇怪な姿へ変わる。そのうちの1つが首を伸ばして大口を開ける。ハダリーが後方へ下がった直後、足元の柵が壁面ごとかみ砕かれる。


「どうなってんだ!?」


「恐らく、取り込まれた人々の生命エネルギーまで利用されているんです!」


「それで・・・ハダリー、皆を助けるんだ!」


「はい!」


無数の頭は我先にと観客席の人々を食おうと首を伸ばす。そのいくつかはまるで獲物が逃げる様を面白がるように逃げ道を塞ぐように通路を壊したりその頭で進路を塞ぐなど明らかに狩りを楽しんでいる。金雀枝杏樹と星川勇騎へ迫る首もその1つで逃げる先に頭を横たえて妨害し、反転して逃げる彼らの頭上に超えてまたその行く手を遮った。


「クソ、遊ばれてるな」


「後ろに逃げてもきっと同じよね」


「だったら、こうするしかねえ!」


「きゃ!?ちょっと勇騎君!?」


勇騎は杏樹をお姫様抱っこすると客席に飛び乗り出口目指して上の段の客席へ飛び移っていく。


「道なき道を進むってね」


「でもそういうの会長は一番嫌うんじゃ・・・」


「あ」


彼らの頭上に影が差し、見上げるとジャガーの首が2人目掛けて振り下ろされる。


勇騎は飛び上って上の席に足を掛けるがその席も崩壊に巻き込まれて落下。


「「うわああああ・・・・あ!?」」


2人の体に蛇腹剣が巻き付き、マリニエールが無造作に引き上げる。隣ではメガイロがコートオブアームズ・アニューレットカノンで怪物をけん制していた。


「ありがとう、2人とも」


「死なれると困るからな。ハダリー、お前の主は無事だ。奴の獅子の四つの牙が魔力核だ。それを破壊しろ」


「分かりました、マリニエール様!」


避難誘導をしていたハダリーは即座に近くの頭を足場に「本命」の首へ向かっていく。

阻止しようとする他の首にアニューレットカノンがクレッセントカッターが、フレイムボンバーが直撃し、彼女を援護する。


「でもどうするつもりなんだ?」


「まあ、見ていろ。あいつがギスカル師の技を受け継いでいるならできる」


勇騎の心配をよそにマリニエールの声は確信と期待に満ちていた。そのハダリー目掛けてライオンの口が迫った。


「ハダリー!」


一瞬彼女の体が光って見えた。光に弾かれた様にライオンの首が跳ね上がり、口から2つの牙がこぼれ落ちた。


月輪奥義・流転剣上弦の型


艤装合体したナイトハダリーは刀の刃を東から西へ沈む上弦の月の弦に見立てて上方へ弧描いて上の牙を切り落とすと怪物の口の中で演舞の様な流れる動きで切り上げる。


月輪奥義・流転剣下弦の型


巣くいあげるような動きで下顎の牙2つも切り落とすとハダリーは苦しむ怪物を横目に飛び降りる。4つの牙は光となって礼徳律子(あやのりりつこ)の姿へと変わっていく。

「すげえ」


「月輪の奥義2つを辺境の地で見られるとはな。分からないものだ」


マリニエールに文句を言おうとした勇騎だが本人はメガイロと共にグラウンドへさっさと飛び降りてしまった。


「ねえ、あれ!?」


杏樹の声に目を上げると怪物の全身に生えていた首が押し出されるように次々に抜け落ちて人間の姿へと変わっていく。その全身の空洞を塞ぐように包帯が巻かれていく。

「ライオンのミイラだな」



「お二人ともこちらへ!ここは危ないです」


ナイトハダリーが律子を担いで登って来た。彼女の誘導で2人は場外へと退避する。


「よし、ハダリーは主達を無事に逃がしたな。全騎合体だ!仕上げに入るぞ!!」


「ヴォ―セアン!」


それぞれの紋章剣を掲げ円の中心で切っ先を合わせると合体シークエンスにはいる。

頭部と両肩そして二の腕がヴィダリオン、両前腕がホットスパー、胸部が伸長し頭部が胸の中央に配置されたメガイロ、両足がマリニエール、背部はコートオブアームズ・チェンジマートレットとなったカローニンがレイブルブースターと合体し装着された重装合体ヴィダリオンが暴走するライオンクレスタ―の前に降り立つ。


ライオンクレスタ―は互角の背丈となった機士へ遮二無二突っ込んでくる。がっぷり4つに組んだ重装ヴィダリオンは組打ちに持ち込もうとして両足に違和感を覚える。


「何!?」

両脚に包帯が絡んでいた。いつの間にか両腕にも包帯が巻かれていて四肢を拘束されていた。大の字にされた重装ヴィダリオンへライオンの牙が迫る。重装ヴィダリオンは背中の翼を広げ飛び上って回避。続けてクレッセントカッターで両足の包帯を引きちぎって相手を転倒させると両腕の包帯を掴んでさらに上昇する。


『散々やってくれた礼だ!』


ホットスパーの気合と共に空中でジャイアントスイングをかけて振り回し地上へ投げ落とすと同時に右肩にアニューレットカノンを装着し砲撃。立ちあろうとしたライオンクレスタ―を爆発で吹き飛ばし体勢を持ち直す隙を与えない。


『クレスト核を突き止めた。口の奥だ』


「よし、紋章槍起動!」


カローニン以外の4騎の紋章剣がメガイロの大剣を中心に連結、最後にカローニンの短剣が切っ先に装着され巨大な騎槍を形成する。

マリニエールの指示した場所目掛けて槍を構えて突撃する。


「スパークダッシュ!」


ヴィダリオンはカローニンの翼を大きく広げ、ホットスパーの拍車状のローラーダッシュを展開し更なる加速をかける。

「紋章槍奥義・疾風怒濤・迅雷!!ヴォ―セアン!!」


紋章槍はライオンクレスタ―の口を貫く。


重装ヴィダリオンが穢れを払うように斜め下に槍を払うのとけたたましい叫び声を上げておぞましい影が消失するのは同時だった。



「会長、俺達これからはもっと真面目に学生やるよ」


「いいの。私が間違っていたんだわ。もっと皆の意見に耳を傾けていれば」


担架に乗せられた律子会長はそう嘆息すると目を閉じて救急車に乗せられていった。夕焼けに光る救急車のサイレンが見えなくなるまで勇騎達はジッと見つめているのだった。

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