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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
好敵手の章

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第9話 敵傭兵隊長の挑戦③




 「嘘だろ・・・・俺達が運んだブロンズ像が新しい敵だったなんて・・・・」


星川勇騎と新井陸は神社の社務所のTVの報道に愕然とする。


「しかし、10億もの大金を1時間でしかもこの小さな町で用意できると本当に奴らは思っているんでしょうかね?」


ヴィダリオンによって召集された従機士の1人、カローニンが口にした疑問を解決して繰れる者はその場には居なかった。


「周辺の町の銀行とかから持ってくれば・・・」


勇騎に意見はホットスパーこと従機士パールウェイカーに否定される。


「だがよ、人質を取っている場所の1つはその銀行だぜ?金目当てなら銀行だけをいくつも襲撃してそこからふんだくれるだけふんだくった方が早い」


「そうですね。戦力を分散したら各個撃破される可能性もあるのに・・・・目的はそもそも金ではないのか、もしくは10億奪うつもりは最初からない?」


従機士マリニエールもホットスパーの推理に賛同しつつも腑に落ちないものを感じていた。


緊迫した空気の中TVの報道が新たな事実を告げる


『ただいま入りました情報によりますと、10億円の受け渡しですが5つに分けてそれぞれの5つの指定する場所に持ってこいとの事です』


「俺達も5人。連中の指定した金の受け渡し場所も5か所か。作為的なものを感じるな」


「そうか、奴ら俺達が出張ってくるのを見越して俺達に金を持ってこさせてその上で人質がいるから抵抗させずにボコすってか!?なるほど破剣兵団らしいやり方だぜ」


「そう言えば皆はアイツらの事を知っているのか?」


「そりゃあ」


「彼ら破剣兵団は我々聖戒機士団を脱走したり追放処分を受けた面々が結成した傭兵団です。団長含め幹部連中はあらゆる面で実力者揃いですよ。あの像、魔銅兵タロスは連中がこちらの技術を悪用して作った雑兵ですね」


ホットスパーを遮りマリニエールが勇騎に説明する。勇騎はマリニエールの口調は冷静だが腕が震えているのを見逃さなかったがあえてそれを指摘しなかった。


「もし、ホットスパーの推理が正しいとしたら完全に敵の思う壺よ。人質を助けるにはどうしたら・・・・」


「どっかから侵入してってのも難しいか。俺達じゃあいつらに敵わないし、騎士様はその装備じゃ身動きが難しそうだ」


陸の言葉は金雀枝杏樹の頭にある考えを閃かせた。


「身動き・・・・・そうよ!ヴィダリオン、まだあなた私の学校の校章に慣れるわよね?」


「勿論です」


「他の皆は?ヴィダリオンの力で紋章の姿になれない?それもなるべく小さく」


「可能です。彼らは建前上私の従者つまり契約しているという事になっていますから」


杏樹はヴィダリオンの返事を聞いて頬を紅潮させて息を吸うと今度は祖母に向かってとんでもない提案をする。


「おばあ様、お金を運ぶ役は私達3人がすると言ってくれませんか?この町の長老であるおばあ様なら色々と顔が利くでしょう?」


「それはね。だが孫を危険な目に合わせる祖母がいると思うかい?」


「それでも行きます。一番危険なのは彼ら機士達です。町の一員としてその中の1人の主として逃げる訳にはいきません」


「その目は言っても聞かない目だね。全く誰に似たんだか・・・・ついておいで。あすこの交番は知り合いが多いから何とか話をしてみよう」


孫娘の一歩も引かない意思を認めて渋々ながら諦めたリエは子供達を伴って事件本部の設置された剣王町の交番へと向かうのだった。



同時刻


剣王町旧市街・廃屋


「本気で人間共が10億払うとでも?」


バットハイクレスタ―=ザパトは新たな指揮官『鉄腕』ゲッグの考えている事が全く読めない。彼からすればそんな大金をこんな小さな町が用意するには相当の時間がかかると踏んでいた。名うての傭兵を自称するこの男はそんな事も知らないのか


「出来る限りの金をかき集めるだろう。それもごく短時間でな。そうせざるを得ない様にしてやる」


ゲッグの耳と目は部下である魔銅兵タロスを通じて外の様子を知る事が出来る。人質を解放するよう要求する警官のメガホン越しの甲高い声と明らかに戦いに向かなそうな体格に苛立っていた。


『今から我々の流儀で女子供を解放してやる。だがそれが終わって1時間後金を持ってこない場合は人質は全員死ぬものと思え』


ゲッグは各地のタロス越しに返答する。感謝する、という警官の言葉が終わるや否やゲッグの合図と共に剣王町各地の建物を占拠したタロス像は一斉に女性や子供を外に放り投げた。


「わああああ!」


「きゃああああ!」


窓ガラスを破り、地面やパトカー、野次馬に叩きつけられる人質達。それも質の悪い事にゲッグは2階以上がある建物にいるこれらの人質たちを上階から投げ落とすように命令していた。当然当たり所が悪かった者は即死だった。


「き、貴様ら・・・!」


『解放しただろう?五体満足だの命がある状態でとは一言も言っていない。まだまだ弾はある。まだ続けるか?それとも早く金を持ってくるか、どうする?』


「分かった。今用意している。何分額が額だから時間がかかる」


『1時間以内といった。俺達が約束を守るのはよく分かったはずだ』


ゲッグはタロスとの『繋がり』を切ると愉快そうにゲラゲラ笑うとハイクレスタ―達にそれぞれ指示した場所へ行くように命令した。


「いいか、必ず金の入った袋なり箱なりを回収する事だけやれ。欲目を出そうとするなよ。破れば処刑する」


右手の巨大な義手を大きく振りかざす。それは部下に自分の機動鋼馬ガイオスを曳いてこさせる合図である。ゲッグは危険という物が具現化したような額に1本の角が生えた黒馬であるガイオスに跨ると供も連れずに駆けだした。



「酷いな」


ゲッグの引き起こしたタロスらの同時立てこもり事件の捜査本部に協力者という事で乗り込んだヴィダリオン一行は警官達の噂の騎士達の実在に歓喜と驚きに迎えられながら、TVで中継される『人質解放』の惨状に愕然とする。


「このやり方は『鉄腕ゲッグ』ですね。勇者ヴィダリオン卿に右腕を切り落とされた・・・」


「流石に俺と家長を間違えないだろうが対決したがるだろうな・・・・前哨戦として」


隣の部屋では杏樹達が作戦の話し合いをしている。機士達は指定されたポイントに誰が行くかを決めなければならなかった。


「まだ肝心のゲッグは姿を見せていない。だが必ず現れるはずだ。俺達が出てくるとすればこの場面でしかないからな。問題はどこに現れるかだが・・・・」


「まずシヤクショじゃないか?ここは大きさの割に配置されたタロスはたったの3体だ。それに町全体の管理をしてるっていうじゃないか」


「その裏をかいてくることもあり得るのがな。ホットスパー、シヤクショに一番近いこのシースデパートに行ってくれないか?ここは5体もタロスが配置されている」


「よし来た」


「なら私は図書館に。よくお世話になっていますから」


「任せたぞ。カローニン」


「俺は美術館に行く。ここが今回の火元だと聞く。なら奴が現れる可能性も高い」


「そうだな。だがメガイロ、奴が現れたらすぐに連絡してくれ。奴は従機士ではとても相手にならないほど強い。脱走前はゴッドフロスト卿の旗機士だった男だからな」


「では私は最期に残った銀行に」


「マリニエール、気を付けろよ。金を運び出す為の増援を繰りだすだろうからな」


「承知。その時は連絡しますよ」



「そりゃ無茶だ!杏樹ちゃん、君の言う通り確かにそのカラクリなら奴らの隙を付けるだろう。だけどあれを見ちまった以上残った人質を無事に助けられる保証はないし、何より君達が狙われたらどうするんだ!あのブロンズ像は最低3体は配置されていると聞く。それに残りの2か所は誰が行くんだい?」


対策本部で身代金の資金調達の相談を受けていた島田宝石店の店長は突然やってきた杏樹らに驚き、更に彼女の提案した人質救出作戦に呆れつつ計画の穴と言うべき点を指摘する。


「1つが私が行こうかね。もう一つはゲンさん、あんたやってくれるかい?」


「リエさん!?正気か?いや私が行くのは・・・・それにあんたと私じゃ立場が違う。あんたはこの町のまとめ役だ。そんな人間がいなくなったら・・・・」


「だからだよ。人生これからっていう若い奴が命張るっていうのにジジババがのうのうとしていいわけないさね。それに纏め役なんてのは自然と出てくるもんだ。だが勇気ってのは早々出てくる奴はいない。ゲンさん、あんたはこの町で一番男気があって町の事を考えている。あたしはそう思っているんだがねえ」


「ハア・・・・いいともやりますとも。そうまで言われちゃいかない訳にはいかない」


「人々は我々が必ず助け出します。ですのでご安心を」


別室からヴィダリオンら5人の機士が整列すると中央のヴィダリオンは力強く宣言した。

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