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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
1章 機士の章

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第8話 ヴィダリオン正機士叙任②




  従機士マリニエールは気を失っているホットスパーこと従機士パールウェイカーの兜の側面に自分の兜の右側面から取り出した黒いケーブルの短剣状の先端を突き刺して一心に集中していた。これで相手の記憶を読み取るのである。


「一体何を?何かが見えるの?」


「これで今奴の記憶を探っているのです。靄の纏わりついた赤いランプを乗せた車・・・か?それに不信を感じて追ったがそこから図像獣とホットスパーは戦った。黄色い単眼の犬。ハウンドクレスタ―とでもいうのか?・・・・・・ここで意識が途絶えているな。そこから先は私達が見た通りか。これでは碌に手掛かりがないな」


金雀枝杏樹の問いに独り言のように頭に浮かぶ映像を分析するマリニエール。


「どうしたんだ?その映像って俺達にも見える様に出来るか?」


「・・・・そうですね。現地の方ならわかるかも。今映像として出します」


星川勇騎の言う事も尤もだと思ったマリニエールは自身の両目から光を出す。その光は途中で像を結び映像を映し出す。映像の中のホットスパーは赤いランプを追って横合いから飛び出して来た黄色い単眼の大型の黒犬のような魔獣を前にして手足を硬直させた様に固まっていた。


「図像獣の出す黄色い光に怯えている様に見えるな。あのホットスパーが?」


勇騎と杏樹が驚いているとあっというまにホットスパーは喉笛を噛みつかれて気を失い、そこで映像が途切れてしまった。映像が回復した時彼はどこかの暗い路地で目を覚ますとベオタスを呼び、空へと行ってしまった。


「そうです、家主殿。これは考えられない事です。あのホットスパーが敵に一太刀も浴びせないばかりか、ヴィダリオンも出て来ない事もね」


「でもなあ。昨日の夜は一緒に家にいただろ。メガイロもカローニンとマリニエール、3人もいて何も異変を感じられないとは思えないんだよな」


「そう、したがってその異常は日常に潜んでいる、この世界ではごく当たり前の気にもされないような行動にあると言ってもいいでしょう。例えばあの赤いランプの車とか?そこに薄い靄のような物が見えましたか?それを怪しいと思って追跡したらしいのですが」


「これ、パトロール中のパトカーかしら?あの棒が発見されてから神社周りを結構回っているのよね。でもそれとヴィダリオンが出て来ないのと何の関係があるのかしら?」


「それはまだ」

そこに突如黄色い悲鳴が響き渡る。


「ひったくりよー!誰か捕まえて!」


「逃がすかよ!」

ひったくりの前に躍り出た勇騎は両手を広げて立ち塞がる。だがひったくりは方向を変えようともしないどころか勇騎の行動に動揺も見せずにむしろ新しい獲物が来たとでもいうように彼に突っ込むと鞄やズボンのポケットをまさぐり始めた。


「コイツなんてやつだ。片っ端から人の物盗もうってのか!?」


勇騎はひったくりの足を跳ね上げると同時にその体を地面に叩きつけるとその体を抑え込む。


「杏樹、警察を・・・・・コイツ大人しくしろっての!」


杏樹の呼んだ警官が来る間もひったくりは逃げるよりも勇騎の持ち物を取ろうともがき続けており、それが一層の不気味さを感じさせた。連行される時警官はこの男が前科4犯のひったくり犯だと伝えて去って行った。


「あの男にとって盗みは日常という訳だな。まるでこれが無いと生きていられないという目だった」

メガイロが呆れたように呟くのをマリニエールは聞き逃さなかった。


「メガイロ、もしかするとそれは重要な手掛かりかもしれませんよ」


「どういうことだよ?」


「ユウキ、あなたが盗みに成功した強盗ならどうします?何が何でも逃げて暫くは身を隠すでしょう?どんなに実入りが少なったとしてもね。それが何かに憑かれたように盗みを行うのは、ホットスパーやヴィダリオンの異常と関連があると思いますがね」


マリニエールの推理に触発されたように杏樹は顎に手を当てて下を向き、勇騎は頭をかきがら上を向いて知恵を絞る。


「ヴィダリオンが行動の中断。ホットスパーが勇猛さの抑制?中断?そしてひったくりがその行動に歯止めがかからないのは・・・・逆に抑制が効かないから?ある行動に無制限の許可を与えるとしたら?赤と黄色の光があるとしたまさか・・・・!?」


「何か気が付いたのか、杏樹?」


「ねえ、勇騎君、新聞取っていたわよね?昨日の新聞に変な記事があったような・・・・」


「ヘンな記事?あったか?」


「再生してみますか?」


マリニエールは昨日の新聞の記事を映しだす。

「あった!これよ!この信号機が消えたっていう記事」


「信号機の図像獣・・・・?そうか、赤と黄色があるとしたら青も」


あるとも。


どこからか声がした。


「何処だ?」


「あの屋根の上だ」


メガイロが大剣を実体化させて指し示した先に青い単眼の2mほどの黒犬がいた。笑っているように口を歪ませて赤い舌をだらりと垂らしている。


「その声は邪神官の声だな。遠隔操作しているのか?」


『フ・・・それを聞いて何になる?今から死ぬ者が!?』


ハウンドクレスタ―はクルリと前に回転し、庭に飛び降りると恐るべき俊敏さで塀を飛び越え、マリニエールの目と鼻の先まで鋭い牙を持った口を開けて跳躍していた。着地点を予想したメガイロがコートオブアームズ・アニューレットカノンを右肩に装着するがマリニエールは盾で噛みつきを防ぎながらそれを止める。


「まだですよ、今は奴の能力を探るのが先です」


「しかし・・・」


「そんなに撃ちたければ撃たせてやろう。仲間をな!!」


盾を足場に跳躍したハウンドクレスタ―は単眼から青い光を放つ。


「メガイロ、避けなさい!」


マリニエールの助言はしかし巨漢のメガイロには酷な話である。光を浴びたメガイロは一瞬糸の切れた操り人形の様に崩れ落ちると立膝をついて大砲アニューレットカノンを構える。


「狙いは・・・現地人?逃げなさい!2人とも!!」


勇騎と杏樹はメガイロと逆方向に駆けだす。しかし


『にがさない』


赤い単眼のハウンドクレスタ―が立ちはだかるとその目から赤い光を発した。

2人は向きを変える暇もなくその光を浴びるとへなへなと座り込み、メガイロの時と違い動く様子が無かった。


「な…なんだ?体が動かねえ!?」


「動かそうとしているのに、足が言う事を聞かない!?どうして?」


『ほう・・・あの光を受けて意識があるのか。流石は選ばれし者という事か』


「何のことだ!?くっ、コートオブアームズ・クレッセントカッター!」


マリニエールは新たに現れた赤眼の魔犬にも注意を払いつつも青眼に向けて4つに分裂させた三日月型ブーメランを投げつける。だがその軌道を見切った青眼の魔犬は易々と全てを躱すと仲間とタイミングを合わせて飛び掛かる。


「チッ、この剣を抜くことになろうとは・・・」


「見事・・・と言いたいがあの2人は助けられなかったな!」


一瞬の内にマリニエール赤眼の爪の攻撃を盾で、反対側の青眼の噛みつきを胸に書かれた剣の紋章から実体化させたロングソードで防いだ。


「く、貴重な協力者が・・・・」


だがそこまでだった。青眼の言う通りマリニエールは2体の魔犬を防ぐのに手一杯で勇騎らを庇う余裕などなく、火を噴く大砲が目標を粉砕した爆発の炎を見ているしかなかった。


「ム・・・!?あれは!?」


『なぜだ?やつはうごけないはず!?』


黒煙が晴れた中、2人を庇うように立ち上がる黒い偉丈夫、ヴィダリオンの姿がそこにあった。


『しまった!行動の停止を命じた者にもう一度停止命令をかければ動き出してしまう。奴の待機する紋章も巻き込んでしまったか!メガイロ、奴を撃ち続けろ!ガルウここは引きますよ』


『だけど』


『あの光を浴びた者は元には戻らん。ある条件を達成しない限りは。放っておいても同士討ちで自滅する様を楽しみましょう』


「その条件とやらを教えてもらおうか!!」


ヴィダリオンはメガイロからの砲撃に構わず剣を振り上げ赤眼に切りかかる。だが2匹は黒い靄と化し不気味な笑い声を残して何処かへと消えてしまった。その笑い声を吹き飛ばす轟音と爆音が続けざまに響く。


「ヴィダリオン、そのままメガイロを引き付けて下さい。その隙に無力化します」


「わかった。なるべく早く頼む。主達も下がっていて下さい」

とり憑かれたように一心に大砲を撃ち続けていたメガイロに近づくのは難しい事ではなかった。マリニエールは頭部のコードを引き出すと素早く飛び上がりメガイロの頭にコードを押し当てる。瞬間バチっと音がしてメガイロが前のめりに崩れ落ちる。


「これで暫くは大丈夫でしょう。まだ伸びているホットスパーにも処置しておきましょうか」


「ヴィダリオン、ありがとう。でもなんで急に?」


「分かりません。しかし、このままでは駄目です。それだけは言えます」


「なあ、杏樹の推理だともう1匹いるんだよな?そいつはどこに・・・」


そう言った勇騎はハッとして駆けだす。


「まさか、カローニンも!?」


「かもしれねえ!1人じゃあいつらの相手は無理だ。今家にはカローニンが留守番してるだろうから,急ごう」

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