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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
1章 機士の章

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第7話 天敵!電磁を纏う毒蛇①




 4月。新たな出会いの季節であるが、ここ剣王町旧市街の邪神官らのアジトとなる廃屋には外の天気同様のどす黒い空気が漂っていた。


「・・・・・おのれ機士共め。まさかあんな連中が加わるとは」


前回の「侵略の花」作戦を指揮した邪神官プレハは苛立ちを隠せない。作戦は途中までうまくいっていたのだ。だが肝心のマザーを倒された事で剣王町だけでなく関東一円にまで広がっていた、マザーからの超音波による生命維持をしていたシダークレスタ―達は親株の死と共に全滅してしまったのだった。結果的には樹木や草木を失った禿げ山やいくつかの植物園を閉鎖に追いやるという一部の人間を危機に追いやる程度で終わってしまったあっけない幕切れに


プレハは呆然としてこのところ何も手につかないほどのショックを受けていた。


邪神官ザパトは1言だけ慰めの言葉を言った後は別の作戦に取り掛かりはじめて留守がちで、残る邪神官ガルウだけが何とか彼女を立ち直らせようと必死だったが効果はなかった。


「プレハ、これたべてげんきだせ」


「いらない」


「じゃあ、どこかでかけよう」


「何処に?」


「・・・・・・・・」


そこまで考えていなかったガルウは突如家の玄関のドアをノックする音にギョッとする。あれは仲間を示す合図の叩き方ではない。では一体誰だ?


「にんげんをぶっ殺してくる。それできぶんをなおせ、プレハ」玄関のドアの覗き穴からは何も見えない。


ドアを開けると同時にすぐドアの開く方と反対側、つまり左側に飛び出したガルウは見た事のない機士に自分の喉元に剣を突きつけられる形となった。


「なるほど、これでは駄目だな」


「おまえ、だれだ!?」


「その必要は・・・・っ!」


突如訪ねてきた従機士マリニエールは後ろから気配を感じてコートオブアームズ・クレッセントカッターを投げる。


「この程度で我らと戦おうなどと、思い上がりも甚だしい」


三日月型のブーメランを叩き落とした、ザパトが警戒と怒りを滲ませた唸り声を立てる。


「別にそのつもりは無い。だがようやく話の分かりそうな奴に出会えてよかった」


「話?」


「単刀直入に言おう。お前達の探している物をやってもいい」


「馬鹿な?背信行為をする機士がいるとは世も末だな。仮にそうだとしてもそんな話を信じるとでも?」


「取り返せばいいだけだからな。要はお前達が弱くては困るんだよ」


「なにっ!」


「ほう。理由を聞かせてもらおうか」


ガルウを制してザパトはマリニエールの言葉に興味をそそられ、続きを促す。


「我ら聖械機士団はいまやあらゆる次元に進出し、その次元の悪と戦い滅ぼしてきた。その中でもお前達マレフィクスは因縁の敵だ。だがそれも最近は各次元で我らの勝利が続いている。このままでは我らの敵がいなくなる。それは困る」


「なぜだ?」


「分からないか?機士団は敵が、それも強大な敵がいてこそ初めて存在意義が許される組織なんだよ。戦わぬ機士団が何をやりだすかと思うと私はぞっとするね」


「ならば我らの行動を妨害しないで貰いたいな。尤も後2週間ほどで最強の図像獣が完成する。それを倒す手段は現状存在しないと言っておこう」


「遅いな。今すぐできないか?」


「おれやる。おれが最強の図像獣をつくってきさまらをめちゃくちゃにしてやる!」


「フ・・・・では楽しみにするとしよう。ちなみに探している物は神社の奥の塔の内部だ」


マリニエールはそう言うと踵を返すと同時にその姿を消す。消音の魔法も使っているのか物音一つ立てず、門の扉を

開けて何処へと去って行った。


「・・・・・ザパト、最強の力ってなんだ?」


「そうだな・・・・・」


ザパトは遠くの遠雷の音を聞き中へ入りながらさて、どう説明するかと思案する。


「やっぱりほのおか?」


ガルウの言葉を否定するかのように稲妻が轟音を立てて付近に落ちる。雷は同時に停電を引き起こして家々の電気が次々に消えていく。


「これだ!!」


新しいおもちゃを買ってもらった子供の様にはしゃぎながらガルウは赤いバイオクレストを振り回しながら出て行った。




剣王町全域は原因不明の停電がもう3日も続いていた。この停電は最初こそ短時間かつ狭い範囲だったものの徐々にその間隔と場所が長く、広くなり今では剣王町の全ての場所で1日中電気が使えない状態だった。そして明日は始業式である。それなのに教室の電灯もマイクも使えないとあっては始業式の延期もあり得る、とするお知らせが星川勇騎や金雀枝杏樹の通う剣ヶ峰学園高等学校側から来た。


「へえ、それじゃクラス分けだけして解散ってことか?ラッキー!」


新市街の杏樹の家でそのプリントを幼馴染から見せられた勇騎は思わず快哉を上げる。


「何呑気な事言ってるのよ。もう3日もこんな状況よ。電気が使えないからPCやTVが使えない家だってあるんだから。勇騎君の家はどうなの?」


「まあ、俺はTV見ないし。俺生れて始めてニュースを家のラジオで聞いたんだぜ。あ、スマホの充電ができないのは困るけど、それくらいかな。ガスや水道はきちんと出るし」


「そうなのよね。なぜ電気だけなのかしら?」


「そういや、この前、雷落ちて旧市街は停電したって聞いたけど、神社の方は大丈夫だったのか?」


「うん。それにいざとなったら発電機があるしね」


「もしこれがあんまり続くようなら」


「もしかしなくても図像獣の仕業だと思う」


杏樹は窓からひっきりなしに無しに通る電力会社の車を見ながら、心配そうな表情で言った。


その時、杏樹のスマホが振動する。画面には祖母の名が表示されている。嫌な予感がして杏樹は通話ボタンを押した。


「もしもし、おばあ様?」


「杏樹や、今度家に来た新参の大男共がこぞって変なんだよ。皆してウンウン唸ったり立ち上がる事さえできないんだ。そっちは何か変な事は無いかい?」


「本当に?でもここはそうでもないよ」


「そうかい。早めに帰ってくるんだよ。こんな事が無くても年頃の男と女が一緒にいるのはあまり感心しないからねえ」


最後は努めてからかうような口調でリエは電話を切る。だが杏樹はそんな祖母の気遣いに気がつかず、ヴィダリオンがいつも校章の状態でグースカ寝ているので全く気に留めていなかったことに不安を覚えて声を掛ける。


「ヴィダリオン、ヴィダリオン大丈夫?」


「・・・・・う・・・・すみません今朝から頭が痛くて。時間をおくごとに酷くなるようです」


「昨日はそんな事なかったわよね?今朝から急に?」


「はい」


その時地表付近で物凄い光と轟音が轟き何かが爆発した。


「おい、あの燃えているの、電力会社の車じゃないか!?」



勇騎の言う通りだった。その顛末はこうである。


「どうだ?」


「ダメだ。いくらやっても復旧しない。一体どうなっているんだ?配線も電気盤も異常はどこにも無いんだ。なのに停電する。おかしすぎるぜ」


復旧作業に忙殺される職員は首を傾げる。と同時に車がガクンと跳ね上がり何かに乗り上げる。


「おい、どうした?」


「分からん。そもそもこの道はこんな勾配なんぞないはずだが?」

職員2人は車を降りると地下を何かが通った後のような半円状の盛り上がりが9本、均等な感覚で道を横切っていた。


「一体なんだ?さっき通った時はこんな物無かったぞ!?ン?」


「どうした?」


「・・・・おい、あそこ動いてないか?」


職員の1人が振り向いた先に前の9本とは別の盛り上がりから掘り返された土に交じった石ころが左右にパラパラと落ちるとそこから巨大なクネクネした何かが2人の職員に襲い掛かる。慌てて車に戻り、エンジンを掛けようとしたが次の瞬間猛烈な電流が車を駆け抜け車は爆発、焼死するよりも先に2人は感電死してしまった。そのクネクネした物は爆発に紛れて再び地中へと姿を消してしまった。



「なんてこった・・・・おい、こんな物どうやってできたんだ?」


「モグラじゃないわよね。大きすぎるし・・・・でも」


現場にやってきた勇騎と杏樹は爆発周辺の不自然な道の盛り上がりに陰謀の匂いを感じ取る。以前モグラの図像獣が出た事を思い出すがここまで大がかりではなかったはずだ。


「9匹同時に何をやるんだ?それにこのさっきの爆発は・・・・」


直後大地が揺れ始める。


「勇騎君、あれ!?」


「ゲッ!」


目の前の9戸の家がにヒビが入ると同時にバラバラと崩れ去る。



「ウッソだろ、おい」


「ひい、ふう、みいやっぱり9つ!」


「9体の図像獣が相手かよ!」


勇騎の言葉に応えるように瓦礫を押しのけて巨大な首が現れる。


「蛇!?9つの蛇の図像獣!?」


「コイツが犯人か」


図像獣コブラクレスタ―は口から稲光を吐き散らしながら2人をカッと睨みつけた。

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