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異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
1章 機士の章

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第6話 侵略の花②




  星川勇騎の連絡を受けて金雀枝杏樹、従機士ヴィダリオン、従機士カローニンらが商店街に駆け付けた時はすでに辺りは途方もない数のシダークレスターに埋め尽くされていた。


「凄い数ですね。一体どこに潜んでいたのやら?」


カローニンは敵の発する超音波攻撃を盾で防ぎながら短刀をふるってシダークレスターの頭部を刈り取っていく。


「わからねえ。知らない間にバックの中にいたんだ」


勇騎もバックを振り回して怪物を近寄らせないようにする。シダークレスターはものの15分ほどで3歳児くらいの大きさになるとのっぺらぼうの顔からギザギザの歯をむき出しにして目につくもの全てに噛みついてくるのだった。


「主、後ろに。大したことはないが数が多すぎる!」


彼らの歯は機士の鎧には文字通り歯が立たず、噛みつくたびに歯がボロボロと割れていた。ヴィダリオンは面倒とばかり体に纏わりつくシダークレスターを振り回して地面にたたきつける。それだけで彼らは手足や首はちぎれて動かなくなる。


「うわあああ!また出た!?」


悲鳴に振り返ってみると商店の中から新手のシダークレスターが大挙して押し寄せてくる。


「奴ら、いつの間に中に?」


「これではキリがない」


怪植物達はヴィダリオンらをじりじりと包囲していく。すでに3重の輪が出来上がっており勇騎と杏樹を守りながら

ではその突破は難しい、とヴィダリオンが感じたのと同時に


空から鋭い羽根矢が降り注ぐ。


「ホットスパー!助かったぞ」


羽根矢の正体は従機士パールウェイカーことホットスパーの愛馬機動鋼馬ベオタスのフェザーブレードである。


「少し離れていろ。こいつらを丸焼きにしてやるぜ」


ホットスパーはベオタスに命じてブレード先端をカッカッと空中でこすり合わせる。金属同士の触れ合う擦過傷でいくつもの火花が起きるとあっという間に植物の特性を持つシダークレスターの身体に燃え移り、火炎地獄へと彼らを突き落とす。


あちこちから聞こえる断末魔の金切り声に顔をしかめる杏樹達。だがそれは彼らを憐れんでの物ではなく純粋に不愉快な音だったからにすぎない。


「うん?」


バチバチと燃える炎が怪物だけでなく、空中にも燃え広がるのを見て、カローニンはその手をさっとスナップさせ燃えている「何か」を掴む。


「こいつは粉・・・・か?」


燃え残ったザラザラした黄土色の粉をすりつぶすように眺めるカローニンの指から数粒こぼれ落ちる粉。


「お、おい見ろ!」


そのこぼれた粉が道端の雑草に付着した瞬間その雑草はあの忌まわしい怪物へと姿を変えていた。


「なんて生命力をしていやがる」


ホットスパーが忌々し気にその生物を踏み殺す。


「だが、これで奴らがどうやって生まれたのかは分かった」


「わかっただけだ。どこからあの粉を大量に生産し、ばらまいているのかを突き止めないと今に地球の植物はあの怪物草に乗っ取られてしまうぞ」


「でもなあ。あんなもん大量にばらまいたらどう考えても誰かが気が付きそうだけど、そんな怪しい情報、あったか?」


勇騎の疑問はもっともだ。全員が下を向いて考えこんでしまう。


「とりあえず、神社に戻って少し休憩しましょう。何かいい考えが浮かぶかもしれないし」


「そうですね。気になる反応もあるので」


「気になる反応って、又仲間が増えるのか?よかった、少しは人手不足が解消されるぞ」


明るい勇騎とは裏腹に3騎の反応は芳しくない。


「仲間ねえ。この反応知っているか?」


「いや、覚えていない」


「フィッツガルトのスパイか。俺たちを今度こそお役御免にするつもりか?」


「カローニン、となれば出世街道から外れたわけだ。ようこそこちら側へ」


からかうホットスパーを相手にせずカローニンはヴィダリオンのマスルガへ馬を寄せる。


「こちらの不利になるようなことは書いていない。となると純粋に増援とみるべきだが、誰をよこしたのやら」


「そいつが使える奴かと気に入る奴かは別問題だからな」


「で、でもみんなで仲良くできれば・・・」


「主、来たのは私達と同じ従機士です。上の連中はこの次元を軽く見すぎているという事です。その気になれば連中を纏めて叩き潰せるのにそれをしないのは明らかに怠慢です」


「じゃあもしかして・・・」


「そう。厄介者を押し付けてきたという可能性は十分にあります」


杏樹の疑念にカローニンが答える。


「でもまだ確定ってわけじゃないだろ」


「そうだがな、しかし」


緊張と警戒感のなか3騎は馬を進めた。



「新たな個体たちはそのまま待機せよ。次の兄弟達ができるのを待つのだ」



剣王町の旧市街の廃屋で邪神官プレハは念話で生き残ったシダークレスターに指示を出し、計画の修正を頭の中に練り上げる。


「能力はすごいが見境が無さすぎなのではないか?」


「これでいい。問題は成長速度だ。今のままでは親株になるのに1日半はかかる。少し改良の余地があるな」


邪神官ザパトの指摘をぞんざいに受け流しつつ、プレハは顕微鏡のような機械を覗き込みそこにある花粉にな何かの液体を垂らす。青緑色のそれは瞬く間に花粉の内部に入ると急激に細胞を増殖させる。


「ウーム。これは早すぎるな」


「早いのとおそいのあわせたらちょうどいいな」


「それだよ、ガルウ。薬品ではなく交配だ。よし早速取り掛かろう」


先程作った促成栽培のシダークレスタを抱えてプレハは外へ出る。その護衛にガルウも付いていく。2人は美女とチンピラに変身して神社へと歩き出した。



その頃次元を超えて2騎の従機士が神社の神木付近に降り立った。


1人は3mを優に超える大男で灰一色の鎧に異様に鉢の長い兜を被っている。もう一人は小柄で150cmくらいしかない。緑がかった灰色の鎧に鳥のような形状の兜を被っている。この兜は偵察隊出身であることを示していた。


「さて、ここが例の地球次元か。腕がなるねメガイロ」


「・・・・俺達の敵今はいない。マリニエール早速団長から言われた事やるのか?」



「それよりも先に挨拶する人達がいるようだ。こっちがやりやすく動くためにはまずは友好的に振る舞う必要があるからね」


マリニエールは不敵な笑みを湛えてヴィダリオンらに歩み寄った。

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