表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の機士 黒のヴィダリオン  作者: 紀之
1章 機士の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/90

第6話 侵略の花①





  ヴィダリオンらの故郷デウスウルト


ここにある聖械機士団本部はある問題に揺れていた。


「ザルツァフォン団長、お答え願いたい。なぜ地球次元の派兵がまた従騎士2名だけなのかを?」


最高幹部貴顕衆以外は許可なく入ってこれぬ円卓の間に今4騎の白銀の鎧を着た騎士が居た。疑義を呈したのは席次3位の『勇者』ヴィダリオン。出で立ちは黒のヴィダリオンの鎧を白銀にした姿だがその威厳は天地の差である。その威儀に気おされ気味なのが団長のザルツァフォンでその2人を静かに見守っているのは最年長で席次2位のゴッドフロスト卿と席次5位マイロビーク卿である。この席の場合無言であるという事は告発者に対して同調している事と同義だった。つまりザルツァフォンの弾劾裁判といっても過言ではない。


「それは貴殿も賛成してたはず。それを繰り返しただけで・・・・」


「無論ですとも。しかしそれは先月私自身が救援に行くつもりだったからです。しかし今我らが仇敵マレフィクスは押され気味との事。その好機を逃す真似とはどういう所存でございますか?これは戦闘集団としての存続に関わりますぞ」


「それを止められましたな、団長?それも子飼いの監督官とその部下をつけて。監督官はその日のうちに帰ってくる始末。一体何を監督してきたのやら!?」


鼻で笑うマイロビークの家は団内でも古い家系の一つで過去に騎士団長を輩出した事もある。ただし現当主はあまりパッとしない人物でヴィダリオン卿の様に個人的な武勇よりかは家系全体の力で今の地位を得たと言っていい。


(マイロビーク、こいつはどうでもいい。世が世なら貴顕衆の席次など与えられない男だ。大方こちらの失脚の機会を狙っているだけだからな。だがゴッドフロストとヴィダリオンこいつらを今敵に回すのはいかん。こちらの準備が整うまでは彼らを味方に引きいれておきたい)


ザルツァフォンの電子頭脳は真実を1分なりとも話しておくという選択を瞬時に行う。どの道彼自身全てを知ってはいないという開き直りと一種の安心感がそうさせたのだが。


「この中に聖杯について知っている者は?」


「聖杯?」


「そう。我らが創造主様が我らを作りし時に使ったとされる秘宝。その力は全ての次元を支配する事が出来るとか・・・・」


「それが地球にあると?」


「その通りです、ゴッドフロスト卿。問題なのはそれが具体的に何処にあって、扱いを間違えれば全ての次元を吹き飛ばしてしまいかねない危険性があるのです」


「それならばなおの事・・・・」


「ヴィダリオン卿。私も先代の団長から聞いたことがある。聖杯は眠っていてこそ価値があると。その時は何のことやらわからず聞き流していたがもし聖杯の力の1が我らの力で100を意味するとなれば、もはやこれは秘宝ではなく害毒と言っていい。強すぎる力はその身を滅ぼしかねないのだからな。もし強い力に聖杯が引き寄せられるとするならば・・・・」


「小戦力の逐次投入しかないと?」


風向きが変わったとザルツァフォンはほくそ笑む。ゴッドフロストなどは勝手な憶測で自身を納得させてしまっていた。知識のある長老さまさまである。


「いいでしょう。納得は致しませんが理解はしました。勝手な雑言をお許しください」


「いいや。最近団の結束が乱れていたのは事実。これを公表し、一丸となって敵と戦う好機としましょう」


(ひとまずはこれでいい。ヴィダリオンの懸念通り戦いを長引かせる必要があるのは事実だからな。後はあの連中を

引き込めるかだが・・・・)


弾劾を切り抜けたザルツァフォンは自分以外が去っていった円卓の間で次なる野望の一手を指すのだった。




地球・剣王町


「ハクション!うう~今年はまた花粉が多い・・・・」


剣王神社の境内で盛大なくしゃみをしたのは金雀枝杏樹である。


「どうしました主?体調不良ですか?上着を羽織った方が」


「ああ~この時期は花粉症でいつもこうなの。ありがとうヴィダリオン」


杏樹は本殿の鴨井に架けられた自分の上着の校章に宿るヴィダリオンに小さくガッツポーズして大丈夫だとアピールする。


「原因は大気中のこれか。裏手の山にもその木がありますね。切ったりしないのですか?」


「前にそれやろうとして原因不明の事故が続出してね。神様が怒っているんだって取りやめになったの」


本殿の雑巾がけをしていたカローニンにため息をついて説明する。


「人間の世界も中々厄介だな」


「私達の所はそういうのは聞いたことが無いですね」


「そうなの?他の次元のそれこそお姫さまとかと恋愛だったり、凄い武器とかを探しに行ったりとか」


「どうでしょうね。恋愛も手柄話も隊規でご法度ですからね。あったとしてもそいつの最期は碌な死に方をしませんでしたで終わりでしょうね」


「なんていうか色々超越しているっていうの?ヴィダリオンやホットスパーを見ていると勇騎君とかとあんまり変わらないメンタルしているって思っちゃって結構ギャップが・・・・」


「心外な」


「お前は当たっていると思うぞ。そう思うなら手伝え」


その時杏樹のスマホが震える。画面を見ると星川勇騎からの連絡だった。


「もしもし?」


「た、助けてくれ!今商店街でうわあああああ!とにかく野菜や果物が反乱してるんだ!」


「?どういうこと?」


「いいから来てくれ!ああっ!?」


「~!何この音!?」


耳を破壊するような超音波と爆発音と共に電話はそれっきり切れてしまった。


「また事件か」


「お願い2人とも」


「行きましょう」



その少し前

剣王町新市街に買い物に来ていた勇騎は母親から言われた品を買いそろえて家路についていた。

新市街のこの一角は旧市街から移ってきた商店が多く、昔ながらの店構えの八百屋や酒屋といった店が軒を連ねている。これらの店は少し先のスーパーマーケットに品ぞろえは負けるがその分品質と値段で勝負しているのだ。勇騎もそうだが大抵の剣王町の住人は物の味の違いが判る程の繊細な舌は持っていない。当然彼ら庶民はよほどの理由がない限りはここで食料品を買い求めていた。

「あれ?」

勇騎は右手に違和感を覚える。

エコバックの中が先ほどからモゾモゾ動いている気がした。

「・・・・気のせいだよな」

恐る恐る中を覗くが特に変わった事は無い。だが歩き出そうとしてすぐにおかしなことに気が付く。

「俺長ネギなんか買ってないぞ?おまけしてくれたわけでもないし」

もう一度エコバックを見る。長ネギの先を辿っていくとそこに居たのは不気味な植物だった。

「ゴラッ」

シュッとした一本の楕円形の緑の葉の奥には人型をしたのっぺらぼうの大根だが人参だかの生物が体育座りをしてこちらをジッと見ていた。

「なんじゃこりゃあ!?」

勇騎の悲鳴に対抗するように謎の植物は耳障りな怪音を発してピョンとエコバックから飛び降りる。それに呼応するようにあちこちのバックから同じ植物が買い物客の悲鳴を浴びて次々に飛び出してくる。

やがて悲鳴は商店街全域に広がっていった。いくつもの店の中にもこれと同じ生物が続々とその姿を現し、一塊の群れとなって町中を練り歩きだした。

この怪物は最初こそ無口だったものの数が増えていくごとに徐々におしゃべりになってきて耳をつんざくような音を出して会話をするまでになっていった。その会話の際に発生する超音波は2~3体程度ではただうるさいだけだが数が10体ほどになると破壊音波となって店のガラスやスマホさえ破壊するほどの威力へと倍増する性質を持っていた。

「まさかコイツら図像獣か?」

耳を塞ぐ勇騎の予想は当たっていた。そして幼馴染の杏樹へ連絡したのだがその超音波によって彼のスマホは破壊されてしまったのだった。



「よし、いいぞシダークレスタ―。作戦の第一段階はこれで終了だ。今は仲間を増やす事に注力せよ」


「数が多いな?」


「ウム。この時期に大量発生する杉花粉を参考に作ったのがシダークレスタ―だ。こいつらは人間や機械には無害だがあらゆる植物に寄生して仲間を増やす。その植物がどんな形態でもこの特殊花粉が付着すればその植物はシダークレスタ―へと変貌するのだ」


「すごい、そうなったら人間うえじに」


「その通りだ。シダークレスタ―は恐ろしい勢いで増殖する。機士共も彼らの根絶は不可能だ。数が足りな過ぎるからな」


「フ、機士共め。自分達の主共がやせ細っていくのを黙って見ていられるかな?」


「おれもたのしみ」


邪神官の笑いが旧市街に木霊する。ここに邪神官プレハの侵略の花作戦が開始されたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ