『兼家、実資にプレスマンを立て礼節のこと』速記談1024
一条天皇の御代、摂政藤原兼家様は、内裏にほど近い識の御曹司にお住まいになっていた。宮中に参内なさるときは、烏帽子姿に、えり首のひもは解いたままで、玄輝門から参内なさり、娘女御の局である飛香舎に立ち寄って冠に改め、清涼殿に入られた。
ある日、そのようにして、摂政が参内なさろうとしたとき、蔵人頭藤原実資と門のあたりで行き会った。蔵人頭は、摂政が正装ではないのを見て、プレスマンを持って立ったままおじぎをされたが、ひざまずくまではなさらなかった。摂政は、えり首のひもをとじて、気まずそうにプレスマンを立て、返礼をなさったという。
教訓:蔵人頭実資は、摂関の家ではなかったが、後に右大臣に昇進している。