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個人企画に参加してみた ①と②それと③ +バンダナコミック01作品

華と散る

作者: モモル24号


 私──菊池 華(きくち はな)は孫の瑠珠華るみかが生まれてまもなく、眠りについた。


 これから可愛いらしい孫ちゃんとのキャッキャウフフなムーブを楽しめると思った矢先なのに……。


 息子夫婦には申し訳なく思った。一番大変で楽しい時期なのに、苦労を重ねさせてしまったから。


 でもね‥‥安心してほしいのよ。菊池家のご先祖さまが、不憫(ふびん)に思い私を菊の花の妖精へと変えてくれたの。


 誰かしら? 「菊池の精」じゃないの? なんて言ったのは。


 「菊池の精」だと菊池が悪さして「菊池のせいだ!」 って言われた感じでしょ。


 何を言っているのかわからないわよね。大丈夫よ、私もわからないから。


 なぜかしらね、身体が小さく軽くなったからもね。心も弾むように軽いの。


 それにしても泣きじゃくるあなた達を見ていたと思っていたのに────気付いた時には、私は私を見ていたのよ。


 しわくちゃな自分の顔を、小さな手で触れるという不思議な体験。


 泣かないで、私はここにいるから‥‥なんて思ったわ。


 二人にはこれから大変だと思うけれど、先に亡くなった旦那のついでで良いからお供えの菊の花を絶やさないようにお願いしますね。


 そのかわり瑠珠華るみかは私に任せてちょうだい。あなた達が夜もぐっすり眠れるように、私が子守を引き受けるわ。


「────キャァァァァァ……放して、ルミちゃん放してぇ〜」


 どうやらこの孫の瑠珠華るみかには、私の姿が見えているようね。


 ルミちゃんの身体から発する甘い香りに眠気を誘われて、ウトウトしていたら捕まった。


 この子の手のひらと同じくらいしかない私の身体では、赤ちゃんの力でも逃げられないみたい。


「キャッキャッ♪」


 思っていたキャッキャッウフフと違って、キャッキャッ‥‥モグモグされた。まだ歯が生えてなくて助かったわ。


 このままでは身体が持たない。嫁っ子のおっぱいしか飲んでいないのに、体力あり過ぎるわ。


 息子夫婦に「私に任せて!」 と言った手前、後に引けない。まあ、聞こえてないので引いてもいいのよね。


 でも、それでは菊池華の名が廃る。それに私、気づいちゃったの。いまの私は瑠珠華るみかを守るご先祖さまの守護霊(しゅごれい)の一種だって。


 守護霊の赤ちゃんみたいなもの……それが菊の花の妖精、菊池華なのよ。そういうわけで偉大なる菊池のご先祖さま方‥‥新たなる菊池の末裔(まつえい)のために、お力をお貸しくださいな。


 …………他力本願(たりきほんがん)な私。無言の怒りと圧力を天井の染みと、ルミちゃんから感じる。だって妖精さんだもの、仕方ない。


「‥‥あれっ、ルミちゃんあなたまさか言葉もわかるの?!」


 私が問うと、不自然に目をそらした我が孫ちゃん。この子‥‥私を認識(にんしき)していながら、お口の中で私をよだれまみれにしたのね。


「アババ♪」


 ごまかしても遅いわよ、瑠珠華るみか。でも可愛いは正義ね。私も立派な孫バカだわ。


 私が泣いて頼むので、ご先祖さまは夜の眠りから覚めている時間だけルミちゃんを私と同じ菊の花の妖精の姿に変われるようにしてくれた。


「やったぁ、これでおばあちゃんと一緒に遊べるね♪」 


 私の手を握り、踊り出すルミちゃんは楽しそうだ。楽しそうなんだけどね、もう少し溜めというかフリをしようよ。


「何を呑気な事言ってるの、ハナちゃん。今時タイパは必須なのよ♪」


 今時も何もあなたは生まれて間もない赤ちゃんでしょうに。これも時代の流れというのね。


 妖精になったせいか、考え方はポジティブよ。どのみち物心つく頃までの、いつか消えてなくなる真夜中の夢物語。


 菊の花の妖精となった、私と瑠珠華るみかの冒険の話はいずれまた話す事にしましょう。


 これはとある菊池一家の不思議なお話。赤ちゃんが誰かに向かって一人で笑っている時、何かを握って離さない時があると思います。


 ひょっとしたら赤ちゃんは、妖精さんとお話したり遊んだりしているのかもしれませんね。

 お読みいただきありがとうございます。菊池祭り参加作品となっております。


 

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菊池祭りとは何ぞや? ↓菊池を読む 菊池祭り バナー作成/菊池(幻邏様) i873335  コロン様作成・菊池祭り公式ポスター
― 新着の感想 ―
[良い点]  可愛いは正義! まさしくですね!  孫ということも加わって。何をされても許せてしまいそうです。  菊の花の精。とても高貴というか徳の高そうな感じなのですが……。おばあちゃんはどこまでい…
[良い点] いいですね。 菊の花の妖精。ほっこりしました( ´∀`) [気になる点] 実は私、一歳の時の記憶があるんですよ。 だからね、子どもとはいえ大人と同じ世界が見えている事を知っています。 …
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