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狐、生きる  作者: nite
狐、思う

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船旅の終わり

 三人が、流石に魚料理に飽きを感じ始めた頃、船はとうとう目的地の目の前に来ていた。既に、船の前方に到着予定の港が見えており、あと一時間もしないうちに港に着くことだろう。


「空飛んだ楽かも」

「あっはっは、そう言うてやるな。空を飛べる種族は少ないんだろう?」


 船旅により疲労が溜まったファネがベッドに寝転がりながら呟き、ハクがそれに笑いながら返答をする。


 ファネにとって旅とは自分の足で行くものであり、急いで移動するときは空を飛ぶかハクの背中に乗って旅をする。そのため、こうして同じ乗り物に長い時間拘束されることの疲労感を予想していなかったのだ。

 ハクも、数日程度ならば問題ないが、これが一ヵ月くらいの旅であれば途中で逃げ出したくなることだろう。残念ながら、周囲が海なので逃げる術などないのだが。


 豪華客船にプールやカジノなどが併設されている理由がいまいち理解できていなかったハクだが、こうして長い時間船旅をすることになり、あれはちゃんと意味があったのだと納得する。少なくとも、数か月の豪華客船の旅で景色を眺めて時間を過ごすのは、ハクには無理そうであった。


「これから到着する港はジングという街です。やはり中央都市に最も近い港だからか、結構発展しているみたいですよ」

「ふむ、まあいつも通り少し観光したあとに中央都市に行くことにしよう。中央都市まではどれくらいだ?」

「徒歩でも七日ほどで到着するようです。いくつか定期便があるようですけど……」

「乗り物もういや!」

「ファネがこうなので、歩きで行きましょうか」


 ファネ的には、乗り物による移動はもうこりごりらしい。乗船当日のテンションの高さは一体どこに行ってしまったのだろうか。


 とはいえ、ファネには他の人よりもストレスがかかっていると言ってもいい。なんせ、常に近いところに知らない人が生活をしているのだ。宿屋と似たような形態とはいえ、種族を知られること自体が禁忌なファネが落ち着かないのも無理はないだろう。


 今後の移動で乗り物に乗ることはないだろうとハクは思った。勿論、ハクが車を引くという狐車なんてものをすればファネも喜んで乗るだろうが。


「街についたら海鮮以外が食べたいな」

「そうですねぇ。パンドライアさんが色々と分けてくれたのはよかったんですけど」

「謝礼になりそうなものを持ち合わせていない」


 ハクに何かと絡んでいたパンドライアは、ハクたちが海鮮に飽きていることに気づくと、手荷物の中から干し肉などを分けてくれたのだ。本人曰く、自分が持っていても食べきれないから折角だしということだったが……

 特にハクは種族の影響のせいか魚よりも肉派になってしまったので、干し肉を食べたときは喜んだものだが、そんなお金持ちに返せるものは何もない。ハクたちが持っているお金など、彼からすれば比喩でもなく、はした金なのだ。


 結局、彼は特にお礼を受け取ることもなく別れることになりそうだった。施されたままなのは落ち着かないハクであったが、現状どうしようもない問題なので諦めることにしている。


「次会ったときは何か渡せればいいんですけどね」

「貴重品を持ち歩くか」


 そうして時は過ぎ、船は港へと到着した。人々が船を降り、ハクたちもそれに続く。不思議なことに、パンドライアが下船しているところを見なかった。


 ジングの街は、今までで最も色んな種族が入り乱れていた。王都でも、ここまでの種族が一堂に会することはないだろうと思えるほどだ。


 ドワーフ、蜥蜴、獣人、人族……ヘビのような種族もいるし、見たことのない種族もちらほら。森からほぼ出ないとされているエルフの一団すらも見受けられる。

 この街は中央都市まではいかずともよい案件を、他種族と行う際によく使われるのだ。瞬間最大種族数は、中央都市のそれを上回っていると言われているほどに。


「もしかしてファネと同族もいるのかなぁ」

「流石に……だが、ファネがこうして交じっているならあり得ない話でもないか」


 人種のごった煮とも言えてしまうこの街では、種族間の問題が発生しないように身体検査などはほとんど行われていない。他種族に体を触れることを嫌がる人は多く、各種族から職員を雇うのは現実的ではない。

 そのため、街中を平然と歩いていてもそう簡単に目につくことはない。そのせいで、この街では非合法は取引も多く行われているが……国も対策は立てているものの、現状その件数は減少の兆しが見えない。


 ファネのような吸血鬼が歩いていたとしても、平然と生活することができるだろう。もしかしたら、定住していてもバレないかもしれない。

 そう思えるほどに、この街は様々な種族が生活し、互いに不干渉を貫いている。


「少なくとも、変なことをしなければ種族がバレることはないだろうねぇ」

「じゃあフードを外してもっ」

「それはだめ」

「冗談だよ、お父様!」


 船旅から解放された影響か、ファネのテンションは高い。ハクとしては、そこまでストレスを溜めさせてしまったかと少し悩みの種となってしまっているが。


 ひとまず、この街でしばらく生活するための宿を取る……が、やはり人の出入りが激しい街。一泊の料金が極めて高く、三人で一夜しか過ごすことができなかった。

 いつも通り仕事をすることで宿料金を稼いでもいいのだが、わざわざここで過ごす理由もなく、結局一晩だけ過ごして中央王都に向かうことになった。


 この街は過ごしやすい場所ではあるものの、旅が好きなハクたちには少しばかり騒がしすぎるようにも思える。


「なら観光は今日だけですかね」

「まあ急いで出る理由もないだろうが……しばらく他の人が旅路に多いだろうしね」


 砂漠の街から港まで行く道中と同様に、今回の旅路でも同じ道を進む旅人が多くなることが予想できる。いつ出たとしても、魔物が集まらない安全な旅路となるだろう。


 ということで、今回もまた途中で少しだけ寄り道をすることを決めつつ、ハクたちは街へと繰り出した。

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