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狐、生きる  作者: nite
狐、思う

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海の街へ

 ヘリルから逃げ出したハクたちは、しばらくはハクの狐姿の全力疾走をしていたが、空気が段々と涼しくなってきたあたりでゆったりとした歩きへと戻った。


「まったく、蜥蜴獣人は酷いですね!ハクさん、いっぱいご飯を食べてください」

「食事が少ないのは慣れてるから気にしなくていい」


 そうして、次の日の昼、野営で食事中にハクは二人に何があったのかを話した。案の定、二人の蜥蜴獣人への印象は最低へと落ちたのであった。


「ファネあの街嫌い!」

「私もです」

「まあ、今後行くことはないだろうなぁ」


 あの街に寄ったのは、あくまで魔石集めの寄り道の途中にあったからだ。あわよくばファネの盾を用意できればよかったが……と、そこでハクは自分がずっと持っていたバッグを思い出す。


「そういえば鉱石を持って帰ってきたんだった」

「……もしかして、盗んできました?」

「冤罪の慰謝料だと思えばいい」


 発見を遅らせるために、その場にあった手押し車の中身を、手押し車ごとすべて変化させたのだ。実際、変化を解除すると大量の岩と鉱石が山積みとなって現れた。


 どれも魔力が流れていないものでよかったとハクは思う。そうでなければ、もう少し早く逃亡がバレてしまっていただろう。

 そうしていくつかの鉱石を合わせて、ファネの盾を変化で用意してあげた。


「ふむ、前に使っていたものよりも軽いが、鉱石だから頑丈だろう。ファネ、好きに使うといい」

「ありがとうお父様!」


 ファネは盾を受け取り、右手で持って軽く振り回してみた。

 元より吸血鬼の腕力で扱うため重量というのはそこまで問題ではなく、試しに余っている岩をぶつけてみたが破損する様子はない。どれくらいの威力に耐えられるかは不明だが、戦闘に使っても問題ないはずだ。


「スラちゃん、これがファネたちの武器だよー」


 ファネが魔道具からスラちゃんを出して盾に乗せる。スラちゃんは何に乗っているのか分かっているのか、盾の表面に広がるように伸びていく。


 結局、スラちゃんの自衛手段は用意されなかった。ハクが連行されたこともあって、ファネがこれ以上望まなかったというのが理由である。

 ファネが肌見放さず魔道具を持ち歩くというのが、三人で話し合った結果の結論である。今のところ、ファネが魔道具を手放す用事というのは思いつかないので、暫定的ながら確実な処置だ。


「さて、次の目的地についてですが……」

「海辺にある港街だったな」

「はい。イントという、これもまた多種族の街です」


 砂漠の交易路をまっすぐ抜けると、小さな町や村を越えた先に港町は現れる。

 砂漠への交易路の始発点という重要な場所であると同時に、客船や漁船なども多く集まる、まさに大規模な港街である。そのため冒険者も多く、砂漠を超えることができないような旅人たちは、この港町に集まろうとする。


「なぜわざわざ砂漠で商業都市を作ったんだろうな」

「商品価値を高めるため……あとは、元々そこに街があって利用したとかそんな理由じゃないですかね」


 流石にエスノアも、街の成り立ちまでは把握していない。そもそも、エスノアの知識は今まで寄ってきた街などで収集できる程度の情報でしかないのだ。わかりやすくいうなら、観光パンフレットの最初の一ページを読んでいる程度の情報量である。


 とはいえ、多種族の街と聞いて安心するハク。今のところ、種族によって固められた街においていい思い出がない。この国、バンガロンドでは一種族による街の方が多いので、ハクの苦悩はまだまだ続く……やもしれない。


「客船!乗ってみたい!」

「えっと、客船は街の検問以上に持ち物検査とかされるみたいだから、ファネは乗れないかも……」

「ううー……」


 不満そうに頬を膨らませるファネ。その反応を見て、ハクは一つの疑問が浮かんだ。


「ファネはどうやってこの大陸に来たんだ?確か、吸血鬼の居住地は島なんだろう?」

「普通に飛んできたんだー。吸血鬼のお父様に引っ張られながらだったから、ファネはあまり疲れなかったけど」


 日光にも強いこの世界の吸血鬼は、海の上を飛んで移動するらしい。ハクはてっきり、吸血鬼専用の移動手段があるのかと思っていたが、飛べる種族には無用の長物ということだろう。


「だから船は乗ったことないの!」

「私も乗ったことありませんね……ハクさんも、森生まれなら乗ったことないですよね」

「……そうだな」


 前世なら、何度か乗ったことがあるが、それをわざわざ口に出す理由はなかった。魔法が主なエネルギーであるこの世界の船が、ハクのよく知る船であるとも限らなかったので、ここは二人に同意しておく。


 食事を終わらせ、器を石ころに戻す。ファネは大切そうに盾を背負い、スラちゃんの魔道具をローブの内側に隠す。エスノアはワンドを持ち直し、バッグを背負う。ハクは変化できない物物を入れたバッグだけが荷物だ。


 そうして三人が野営を終わらせたあと数日、丘の向こう側に大きな船が見えた。初めて見る建造物に、ファネのテンションが上がる。

 集積と滞積の街、イントが現れた。

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