魔法の基礎と実践
中級である、他属性の魔法の発動まではうまくいっていた。地球での体験をイメージに落とし込むと、火や雷を生み出すこともできたのだ。威力は低いけれど、違う技ができることにハクは喜んだ。
しかし、上級で詰まることとなる。エンチャントができないのだ。
エンチャントとは、漢字で書くと付与魔法のことである。ある物体に対して、魔法でコーティングをすることにより、属性を付与することができるのである。スフィンが使っていた雷の剣も、このエンチャントにより生み出された武器である。
ハクには、このイメージが欠けていた。メッキ加工というのが地球にあったのは知っているけれど、その過程とかをハクは知らなかったのである。そのため、何かにコーティングをするというイメージが難しかったのだ。
包み込むという事象に関して、身近なものであれば、チョコレートフォンデュをイメージするかもしれない。しかし、そのイメージでは固定ができていないのだ。
エンチャントは簡単に外れるようなものでは意味がない。何度振っても解除されないような、強いエンチャントが必要なのだ。チョコレートでは、溶けてしまう。
「頑張ってぇ。これを超えればすぐよぉ」
チベ曰く、体に魔力をコーティングすれば、全身に対して魔法を使うのも楽になるだろうとのこと。
人間に化けるのは、体全体に魔法をかけるようなものなので、ハクからしても理にかなっていると感じた。そのため、諦めることなくエンチャントのイメージをしているのである。
しかし、やはりうまくいかない。目の前に置いてある枝にエンチャントをしようとしても、霧散してしまうか、枝を壊してしまうかのどちらかであり、ちょうどいい塩梅というのがとても難しいのである。
「キューン……」
ハクが半ば死んだ目になり始めた頃、プイが片づけを終えて合流した。
「ハクー!できたー?」
「……」
ハクの 目は 死んでいる
「あちゃー。チベ姉、今何をしてるの?」
「エンチャントの練習よぉ」
ハクの様子を見て、嘆くような表情をしたプイは、チベの話を聞いて、見るからに驚いていた。
実はエンチャントとは、魔法の中でも高等なものなのであり、生まれてまだ一年も経っていないような者ができるような魔法ではないのだ。
「チベ姉、魔法の練習するなら私がした方が……」
「……それもそうねぇ」
チベは狐の獣人であるというだけで、魔法の使い手としてはプイの方が何倍も優秀だ。化けるための練習をするからとプイはチベに任せたわけであり、ただの魔法の練習であればプイがした方がいい。
プイは死んだ目をしているハクを揺さぶって現実に引き戻す。
「ハクー!起きてー!」
「っ!キュン」
「おはよー。大丈夫?」
大丈夫ではない、とハクは首を振る。エンチャントについて、何の進歩もないのでハクは心が折れていたのだ。たしかに大丈夫ではない。
「チベ姉、そもそもなんでエンチャントを?」
「体にエンチャントしたら化けれるかなぁって」
「適当だよチベ姉……」
若干プイに呆れの感情が見える。プイ的に、チベはもう少ししっかりした大人であるイメージだったのだ。
しかし、呆れていてもどうしようもないので、プイはハクに向き直った。
「よし、ハク任せて!私が魔法の修行をしてあげる!」
そして、プイの魔法理論の指導と共に、魔法の練習が始まった。
プイは天真爛漫であり、見るからに少女といった年齢である。しかし、その知識は大人も顔負けするほどであり、頭の回転も速い。なぜこの辺境の村にいるのかすらも分からないような少女だ。
そんな少女に教わりながら、様々な魔法を順番に練習。途中で魔法理論による概念理解も挟みつつ、ハクは魔法をどんどんと使えるようになっていった。ついでに、傍で聞いていたチベも少し魔法が使えるようになった。
そんなわけで、一通り終わったあとには、ハクは中級魔法使いほどの実力になっていたのだった。
「よくやったよハクー!優秀ー!」
「魔法って面白いわねぇ」
そうして喜び合って、一拍。
「あれ、主旨ずれてない?」
プイの一言により、ハクは化ける練習を再開するのだった。




