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狐、生きる  作者: nite
狐、思う

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罪と罰

 ハクは蜥蜴獣人に連れ去られるギリギリで、ギルド職員に伝言を頼むことに成功した。

 赤の髪の少女と白い髪の少女の二人が来た場合、「少し急用ができて時間がかかるから宿で待っていてほしい」と伝えてくれ、と押しつぶされた男性職員に言うと、彼は深く頷いてくれた。見えないところで殴られたのか、顔には痣ができていたが、そこまでさせてしまったことを申し訳なく思うハク。


 ハクはそのまま、全方向を固められるようにして連行され、詰所のような場所までやってきた。入り口の門番も、警備員も、職員も、そのすべてが蜥蜴獣人で構成されたこの建物に、ハクの助けになってくれるような者はいない。


「さて、盗んだ鉱石はどこにやった」

「犯人は私ではないと言っているだろう。魔道具も今は見せれないというだけで全く関係のないものだ」


 高圧的に始まった尋問で、ハクは腕を縛られて床に座らせられていた。椅子すら用意しないあたり、この場所では容疑者、要は蜥蜴獣人ではない種族にはほとんどの権利が与えられていないらしい。


 ハク一人に対して三人も尋問官が部屋に入り、圧迫面接も真っ青な気迫で尋問が行われていく。


「なら盗んだ鉱石の分働いてもらわねえとなぁ」

「決めつけで話を進めるのはいかがなものか」

「他の種族は信用できねえよ。真犯人とやらが見つかったら解放してやる」


 ニタニタしながら言う蜥蜴獣人。どうやら、蜥蜴獣人からすると他種族というのは信用できない人々であるという他に、見下す種族でもあるらしい。あまり感情が揺れないハクでも、多少なりとも不快感を覚えるその笑みに、ハクは従うしかない。


 結局、尋問が終わるまでの間にハクが無罪となることはなく、そのまま建物内にあった牢屋に連行されてしまった。窓すらもなく、扉だけがある濁った空気が滞留している牢屋は、これまで牢屋に入れられてきた人々の汚れなどがそのままにされていた。

 ハクが思うに、蜥蜴獣人が捕まった場合はこの部屋とは別の牢屋を使われるのだろうと考えられた。ここまで徹底的に見下されていると、もしかしたら蜥蜴獣人を逮捕するということ自体がないのかもしれないとも。


「さて、どうしたものか」


 狐の鼻では耐えられないレベルの不快な匂いがする部屋で、これからのことを考えるハク。

 密室とはいえ、この部屋自体には魔力が流れていないので、王都でもやった床や天井を直接変化させて穴をぶち抜く方法を使えば、この部屋から脱出することは容易だ。腕は縛られたままだが、頑丈なだけで普通のロープなので、これも変化魔法でどうにかできる。


 エスノアやファネに心配をさせたくないし、こうして単独行動をすることで問題があったばかりなので、あまり一人にはなりたくない。

 とはいえ、この建物から脱出すれば、すぐに周囲にいる蜥蜴獣人にバレてしまうだろうし、ハクが確認した限りでは外まで距離がある。逃げ出してさらに問題を複雑化してしまうくらいならば、しばらくの労働くらいは甘んじなければいけないだろう。


 エスノアとファネの二人もここにいたならば無理やりにでも脱出したかもしれないが、自分一人で済む問題の場合は我慢を選択するハクである。


 ハクのお腹が空腹を訴える音を出す。窓もないこの部屋ではどれくらいの時間が経過したのか分からないが、既に何時間もここにいるような錯覚に陥る。既にファネとエスノアの二人は行動を開始していそうな気がするが……この街では、できる限り大人しくしてほしいと思うハクであった。


………


 無理であった。


 エスノアとファネの二人は、ハクが戻ってこないことに胸騒ぎを覚えギルドへ移動。すると、ギルド職員から蜥蜴獣人に冤罪で連れていかれたことを知らされる。

 伝言では気にしないでほしいと言われていたが、現在、この二人は蜥蜴獣人に対してどう攻撃を仕掛けるかを考えていた。


「蜥蜴獣人は空が飛べない。どのみち敵対するなら、ファネが空から攻撃しちゃう」

「他の人たちから吸血鬼だってバレちゃうから危ないかも。私が遠くから魔法を撃ってハクさんのいそうな建物を爆撃してみるってのはどう?」

「お父様が巻き込まれちゃうから危ない!それなら乗り込んだ方が安全」


 ギルドから宿屋へと戻ってきて作戦会議をする二人。この街ではどこから聞かれているか分からないので、宿屋くらいしか安全に話し合える場所がない。本当はハクがどこに連れていかれたのか探したいが、あまり不審な行動をすると蜥蜴獣人に捕まるからと戻ってきたのだ。

 特に、ファネは着ているローブを脱がされることになれば非常に危険だ。今はまだ冒険者だからと無理に脱がされることもないが、捕まれば無理に脱がされるだろうから吸血鬼であることが露呈してしまう。


「……でも、お父様は待っててって言ってたんだよね」

「ハクさんはまだ病み上がりだから」

「ファネは待てるよ。何も言わずにいなくなったら悲しいけど、伝言を残したのならファネは待てる」


 毅然とした態度で、エスノアを見つめるファネ。


「……ファネって、どんどん大人になるね。私が子供みたい」

「んふふー、お姉様よりもファネの方が年上なんだよ!」


 実年齢百歳を超えている少女である。まだ十六歳のエスノアの何倍も生きている少女なのだ。吸血鬼基準だと子供なうえ、箱入り娘だったせいで精神的成長が追い付いていないものの、この旅の中で少しずつ大人になっていく。


「うん、じゃあ信じて待とうか」

「うん!お姉様もスラちゃんと遊ぶ?」

「ちょっと見せてもらおうかな」


 そうして二人は、攻撃に転じる前に止まることができた。ハクの願いは、すんでのところで届いたのだった。

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