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狐、生きる  作者: nite
狐、渡る

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65/104

狐、渡る。新天地は逃げるように、追いかけるように

 森の中を走ること数日。

 地図で見るよりも明らかに広いその森を、ハクは疾走し続けた。方向さえ分かれば、あとは森がなくなるまで走り続けるだけだ。


「もうすぐのはずです!」


 背中にしがみつく二人は、ハクに置いて行かれないようにがっしりと毛を掴んでいた。というのも、エスノアたちは探知避けの技術を持っていないので、襲われない速度で走るしかなかったのだ。

 エスノアの好奇心的にはあのエルフたちに探知避けの技術を教わりたかったが、エルフに教わるという行為に対する恐怖心だとか警戒心が勝り、ほとんど何もせずにキャンプ地を出たのが走らないといけなくなった原因だ。


 ほとんど休息もなしに走り続けているため、三人とも疲労が蓄積しているものの、森を抜ければ魔物から頻繁に襲われることはなくなると言われたので耐えることにした。

 そうして走れば、わずかに感じる風の流れ。森の中では色んな方向から吹いていた風が、段々と指向性を持って三人の体を抜けていく。


 森が開け、大きな草原が広がる。森の近くにいると危ないが、それでも少し足を止めてしまうハク。それを背中の二人は言及しない。

 ハクが地面に伏せると、背中の二人は落ち着いて地面に降りる。誰も乗っていないことを確認すると、ハクは狼の姿から人間の姿に変化した。


「ここがバンガロンド、だね?」

「はい!森を抜ければ違う国です!」

「地面の色が違うねー」


 森を抜けた草原は、アルクリアよりも濃い緑をした草が生えており、その丈もハクの膝下くらいまで伸びている。スカートを履いているファネは少しくすぐったそうだ。


 背後から魔物の気配を感じて、三人は速足で草原を移動していく。途中、案の定後ろからムカデのような体で頭が触手だらけの魔物が追ってきたが、ファネが一撃で消し飛ばしてしまった。

 そうして草原に出れば、魔物やモンスターは認識しやすくなるし、何より移動しているという実感を得られる。いつか終わると分かっていても、永遠と木々が続く光景というのは精神的によくないのだ。


「んー、途中で少しブレたようですが、少し歩けば街に続く道が出てくるはずです」

「ファネの服、結構汚れちゃったから洗いたい」

「森の中じゃ洗濯する暇がなかったもんね。街に行けば洗濯できるはずだよ」


 森の中での連日に及ぶ旅路は、三人を薄汚れさせるには十分な時間だったようだ。エスノアとファネの服は土で汚れ、ハクは尻尾のほとんど全体が茶色くなっている。ハクの尻尾がお気に入りなファネは、ごわごわな尻尾に対して敵対心を抱いている。


 あと数日の辛抱だからと草原を歩く。この草原から出てくる魔物も、キメラのような、原型を留めていないような見た目をしている。装甲が柔らかいのも相変わらずで、ファネやエスノアの一撃で大体の魔物が朽ちていく。

 森の中ほど高頻度で襲われないので、森での連戦に耐えた三人からすると、拍子抜けなほどに楽な道のりであった。どう考えてもファネの凝魔術の威力は過剰だという認識を改めてすることになる。


「凝魔術って私にも使えないかな……」

「ファネも感覚で使ってるから教えられない。ごめんお姉様……」

「いいよいいよ、気にしないで」


 物質を武器に変化させるという性質はハクの変化と似たようなものだが、凝縮という過程に加えて魔力を固めているせいか、元になった武器よりも威力が高く再現されているのが理由であるが、何をどうすればハクやファネのようなことができるのか皆目見当もつかないエスノアからすれば、二人はまさにアーティファクトのようなものである。

 いつか絶対にその技術をものにしてみせるぞと心の中で決意するエスノアを横目に、ハクはチラリと背後を確認した。


 森の向こう側では、三人はお尋ね者として指名手配されている状態だ。もしかしたら、一緒に王都脱出をしたプイやスフィンも同じように指名手配されているかもしれない。

 今のところアルクリアに戻る予定はないものの……目的地のない旅をしている関係上、いつかは戻ることになるかもしれない。その時、ハクは改めて指名手配の立場と向き合うことになる。ほぼ冤罪から始まった指名手配は、最終的には騎士に実際に攻撃したことにより事実となった。ならばハクが次にするべきは……


「お父様、どうしたの?」

「気にしないでくれ。詮無き事だ」


 そう、気にすることはない。自らの命すらも危うい土地にわざわざ戻る理由などないのだから。


「それよりも次だ。バンガロンドの旅で見どころとかあるのか?」

「やはり他種族国家ですから、色んな街を見ると楽しいと思いますよ。ほとんどの種族がこの国にはいるという噂ですから」

「ファネが来たから、吸血鬼もいるよ!」

「あはは、そうだね」


 この国でも、吸血鬼は迫害の対象……というか、吸血鬼を受け入れている国というのは存在していない。過去にはあったらしいが、吸血鬼の被害報告が後を絶たず、最終的には全世界共通認識で吸血鬼はモンスターであるということになった。

 ファネの父親を探す旅、というわけではないが、ここまで過ごしてきてファネを見捨てることなどしないし、静かに過ごすことができる場所を探すと言う意味でも冒険はまだまだ終わりそうにない。


「新天地ではあるけれど……気張らずに頑張ろうか」

「はーい」

「頑張ります!」


 三人は草原を行く。新天地は、静かに旅人を見つめていた。

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