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狐、生きる  作者: nite
狐、渡る

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金属製の武器

 ドラブと言う街についてもう少し詳しく話そう。

 この街の主産業は金属であることは間違いないが、それをただ輸出してお金を生み出しているわけではない。むしろ、それらの金属は街の中で消費されてしまうことの方がほとんどだ。

 この街の一番の強み、それは鍛冶師の多さと質の高さである。他の街では最も良質だと言われるような鍛冶ができる者がこの街にはたくさんいる。その結果、鍛冶師同士で腕を高め合い、さらに良質な鍛冶師が生まれる。それは何代も受け継がれ、弟子や子供を介しながらも何百年と高まり続けた。その結果、この街は他の土地でも類を見ないほどに良質な武器が多く生産されている。

 しかも、そんな武器が沢山あるものだから、それらひとつひとつの価格はそう高価ではない。冒険者たちにとっては、あるいは王都よりも人気の街であると言えるだろう。


「金属製の武器を使う者などいないがね」

「あはは、魔法使いパーティですからね」


 宿を確保したハクたちは街の中をゆっくりと歩いていた。買い物をするというよりも街の雰囲気と空気を感じるためという目的のために、三人は興味深そうに周囲を見ながら大通りを歩く。


 至る所から鍛冶師の振るう槌の音がする。工房から感じる熱気は際限なく高まり合い、街全体を熱していく。採掘されただろう鉱物を運ぶ人の列も途切れそうにない。

 この街が鉱山の街であり、金属の街であると納得できる光景がそこには広がっていた。


「魔力が含まれていない金属を持ち歩いて変化させるのはどうですか?」

「武器一つ分の金属ってそれなりに重いからなぁ。石を変化させた武器で足りないときは諦めて逃げるよ」


 尚、一般人は容易にはインゴット等は買えない。基本的には原石か、加工済みのものしか手に入らない。


 しばらく街を歩いていると、ファネが口と鼻を手で覆うようにしていることに気が付いた。


「なんかここいっぱい血の匂いするよぉ……」

「……ああ、鉄分」


 血の匂いというのは、実際のところは血中の鉄分が酸化したものだと言われている。ここまで鉄が加工されている街であれば、そこら中に酸化鉄などあるだろうし、そういった匂いに敏感なファネにとっては大変だろう。

 血の匂いで冷静になるファネでも、流石にこの量では悶絶してしまうようだ。


「どれ……これをつけてみるといい」

「わぁ、ありがとうお父様」


 ハクは手持ちの布を変化させてマスクを生み出した。匂いを完全に遮断することはできないが、手で覆うよりかは楽であろう。

 鉄の匂いだけでなく、その他の色々な匂いを、ハクの動物の嗅覚がとらえている。ハク以上の血の匂いへの感知能力があるファネの気持ちも、ハクは理解ができる。


 ファネが苦しそうにしているため、街の探索もほどほどにして、適当な料理屋に入る。

 今まで外という開けた位置であるというのに充満しているかのように感じた鉄の匂いが消え去り、代わりに食欲をこれでもかと刺激してくるいい肉の匂いがしてきた。

 今までの街の料理屋に比べると粗雑な内装で、いかにも職人というような風貌の男たちが好き勝手に酒を飲んだり食事を楽しんだりしている。


「むぅ……騒がしい」

「仕方ないさ。ある意味、これもこの街の特色だよ」

「どうやらこの街はあまり料理屋がないようです。ここを含めて数件、似たような構造の店のようですよ」


 テーブルに置かれているメニューを見れば、これでもかと思うほどに肉料理が並んでいた。この世界の食材の名前がわからないハクですら、確実に肉料理だと確信できるようなラインナップなのだ。

 ひとまず、ハクはファンタス鳥を頼んだ。


 エスノアは意外と言ってはなんだが、肉料理も普通に好んで食べる。少なくお腹を満たしてくれる点が優れているとエスノアは主張している。

 ファネも肉料理は好物の一つになっている。血抜きはされているはずだが、それでも肉からは多少吸血鬼の好みの匂いがするらしい。


「なんだかハクさんの作る料理に似ていますね」

「ああ、多分調味料をそこまでこだわっていないんだろう。いい意味で、粗雑な料理さ」


 料理人が作ったような、味の丁寧さは感じられない。料理屋として成り立つ程度にはちゃんと美味しいが、それ以上はない。

 この料理屋の中に広がる、酒を飲み肉を喰らう空気感が、最もなスパイスとなっているだろうことは、ハクの目からでもわかった。


「なんというか、イメージ通りの鉱山の街だね」

「期待通りかもしれません」

「過ごしにくそー」


 ファネの意見にはハクも同意見ではあるが、それでもこの街が長い間発展を続けているのは、この街に住む職人たちのこの気質のおかげだと言ってもいいだろう。

 

「そうだ、お父様、ちょっと欲しいものがあるかも」

「この街で欲しいものか?」

「うん!えっとね……」


 ハクはフードの上からファネの頭を撫でながら、ファネの要望を聞き入れる。


 そんなファネの様子を、エスノアは羨ましそうに眺めていた。

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